畜産物・酪農

たぶん日本で一番幸せな豚たちに会ってきた

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眼下に広がるのは、日差しをたっぷりと浴びて生長した稲の実り、そして特産のリンゴ畑。さらに正面には、その姿が富士山に似ていることから別名「高井富士(たかいふじ)」とも呼ばれる「高社山(こうしゃさん)[愛称たかやしろ]」が裾野を広げています。県北部は山ノ内町横倉地区。標高600〜700メートルにある集落から少し上流の、絶景のロケーションが見渡せるこの場所が、幸せそうな豚たちと出会える場所です。あるものは屋外の広い敷地内を力いっぱい走り回り、またあるものは全身泥まみれでピクリともせず、またあるものは飼料まみれで真っ白になっているなど、なんとも思い思いの自由な豚さんたちの姿がありました。けれどここで豚たちがこうしているのも、人間にある役目を託されてのことなのだとか。

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現在里山や中山間地を中心に起きているクマ、イノシシ、サルなどによる鳥獣被害、そして遊休荒廃農地。この横倉地区でも以前は田んぼや畑作が盛んに行われていたのです。しかしいつからか、収穫を直前に控えた稲や野菜がイノシシなどによって食べられる被害に見舞われるようになり、草刈りをして見晴らしを良くしたり、また猟友会による捕獲なども行ってはきましたが、事態は追いつかず、さらに農家の高齢化も進んだことで、年々農地の遊休荒廃は増加傾向にありました。そんな状況の救世主として目をつけたのが生後2ヶ月、体重30キロ程度の"豚"たちだったのです。

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ストレスのない豚の暮らし
豚がそこにいることで鳥獣被害や遊休荒廃農地の改善に役立つ理由は、豚の糞尿による強い臭い、そして豚の泣き声や群れで行動する習性がイノシシを恐れさせて遠ざけ、さらに豚は草を食べることで、手の入っていない草むらに豚を放せば見事なまでに草を食べ、また豚は土も掘ることで土壌は耕され、土を掘り根までも食べ尽くされた土地は再び草が生えてこず、3年もすれば耕作可能な土地への再生が期待されるのだそうです。一方豚はといえば、土を掘ることや泥にまみれるのがストレス解消になるのらしく、思い思いに泥まみれになっている、ストレス知らずな豚たちの目を細めたまま佇む気持ち良さげな表情といったら・・・

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地元・山ノ内町の農業委員をはじめ区長、農家組合、町会議員、猟友会、役場、JAがメンバーとなり結成された「横倉環境整備組合」。県農協直販の協力を得て3年前から始められたこの豚の放牧では、今年も6月中旬からおよそ50頭の子豚たちが、2箇所に分かれて計5反歩ほどの敷地で、11月の雪が降る前まで伸び伸び土と共に過ごし、運動量が多いため通常より遅いスピードで体重が増加していく豚も、その頃ともなれば豚はようやく70〜80キロ台の(出荷規格に合う)大きさまでに。そうして今ではすっかり草が無くなった以前の荒廃農地では、この場所から下へは、現在イノシシはまったく発見されてはおらず、さらにこの豚を見るために地元の子どもたちが度々ここを訪れることも、イノシシがこの周辺に寄り付かなくなっている要因のようです。

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秋になれば食べ放題のリンゴ
またリンゴが特産の山ノ内町で暮らす豚ですから、時期ともなれば地元のリンゴ農家が、生食としての販売にならない加工用などに用いるリンゴを豚の餌にと、直接豚の元へと持ち込んでくれるのだそうで、そんな時はリンゴに埋もれるように食べる豚の姿も見られます。なんと豚1頭あたり、年間5000個ものリンゴを食べるのだそうですからリンゴ好きにはたまりません。しかも、こうしてたくさんのリンゴを食べて育った豚肉の味はといえば、肉質がとても軟らかく、また甘味もあってとても美味しいという評判。豚肉の味は品種によるものではなく、食べたもので味が形成されるのです。

地元ではこの豚肉を、地元の特産として温泉街を訪れる観光客や学校給食に提供すること、さらに、学校給食から出る食品残渣を豚の飼料に作り変え、それを豚に与えるという循環型の取り組みも目指しています。

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山ノ内町横倉で行われている豚放牧の取り組み。しかしこれには糞尿の臭いが獣を寄せ付けないという利点がある一方、人間にとっては風が吹いた時、同時に運ばれて来るその臭いが不快となったり、さらに降雨などの際はこの傾斜地という場所柄、糞尿が下流へと流れ落ちることも課題で、今年は近隣住民への配慮から放牧場所の一部を北側へ3キロほど移動したといいます。

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いよいよ3年目を迎えた今年、豚が放牧されたこの場所もようやく耕作可能な土地として、果樹や畑などへの活用に夢が広がります。しかしいずれにしろ、地域で暮らす人々の協力と豚さんたちの参加を抜きにしては、この成功もないのです。

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