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歓びの大きい山菜採りは簡単なことじゃない

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木々の若葉が爽やかな風を運んでくれる季節、それはまた山の中がたくさんの恵みでもたらされるときでもあり、ふと耳を澄ませばヒソヒソと山菜を採りに行く計画が漏れ聴こえてくるではありませんか。今年も信州人の血が騒ぐ、山菜狩りシーズンの幕開けです。

今年、春の訪れは例年より遅かったものの、GW以降の雨の影響で、山はいつの間にか山菜の宝庫になっていました。冬の間耐え忍び、貯まった力を一斉に解き放つかのように今、山にはコゴミにゼンマイ、ワラビにコシアブラ、タラの芽、山ウドにフキといった山菜たちが一斉に顔を出し、そんな話を小耳に挟めば、いと心ざわめき、地元の地理に詳しい知人に導かれて、長野県北部は上水内郡飯綱町の山林へと分け入りました。

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山菜採りは容易でない
新緑眩しい山道を歩くことしばし。この山の中にどれほどの山菜が眠っていることでしょう。夢はいやがうえにもふくらみ、精神は高揚します。しかし高まる興奮に反して「通常であれば、この辺りに・・・」という案内人の落胆の声は、のっけからそうそう山菜採りは容易でないことを教えてくれます。

山は時期がやってくると人が手を加えることなく、おのずと芽を出し恵みをもたらしてくれますが、けれど自然がもたらすその恵みには限りがありますから、ある意味山菜採りは早い者勝ち。しかも山に眠る山菜たちの生長具合を身近に確認することは出来ませんから、ベストな生長の頃合いをねらって山に入るのはある意味賭けで、また採取の時期を同じ頃に考える人は大勢いますから、数日前より日程を定めて「いざ!」と満を持して山に入ったとしても、ひと足違いで先を越され、行ってみたら既に採られた後、なんて残念な思いもよくします。

山菜の王さまとの出会い
しかし山里に下りてようやく、案内人が指を差したその先に、木々の間から高く突き出た枝の先にくっ付いた緑色の小さなものを見つけました。それはあの「山菜の王さま」とも言われる"タラの芽"だというではありませんか。

タラノキに生る芽であることから呼ばれるタラの芽、それはまるで「ここに居るよ」とでも教えてくれているかのように遠くからでもその姿は目に付き易いものですが、葉を付けることなしに飾り気なく、枝だけが長く伸びるその姿は、ちょっと近寄り難くも感じます。

ようやく見つけた小さな芽に近づいて見てみれば、それはまさにあのタラの芽で、やっとありつけた山の幸に少しホッとしたわけですが、しかしその芽が付いているのは1メートル近くも高い場所。

それでもまだ容易でない
人が手を伸ばそうにもそうそう簡単に採れるものではありません。またさらに、木に近づこうにも日なたを好む傾向のタラノキは陽のよく当たる斜面に生えていて、その斜面へと足を踏み入れることは容易ではありません。

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適切な道具の威力
途方に暮れそうになった矢先、知人が手に持っていた道具を振り上げました。それは今まで見たことの無い程に長い枝をした鎌で、この長い柄に鎌が取り付けられたものを使って枝を手繰り寄せようというのです。

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最後の難関は突き刺さるトゲ
けれど困難はまだ続き、ようやく枝を近くまで手繰り寄せたとしても、その枝は丈夫な刺でびっしりと覆われて、さらに芽の部分にも小さな刺がいくつも付いているのですから、今度はタラの芽に「そうそう簡単には採れないよ」とでも言われているかのよう。

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そんなわけで軍手は必需品、軽く刺に刺さりながらようやく芽を摘んだ歓びはひとしおで、高い木の先に生るこの小さな芽がとても貴重なものに感じられたのでした。

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わずかな収穫でもお裾分け
そして近くを見渡せば、先ほどとは反対にいつの間にか大きく生長し、食べ頃をとうに過ぎているものも見つかって、「もう少し早く来れば良かった」と悔しい思いをすることも。山に生える山菜の生長は気象の影響によってあっという間に生息する山菜の景色は変化していくようです。

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今回の収穫は少しばかりでしたが、自然がもたらしたこの貴重な恵みにありつけた嬉しさに、ありがたさもひとしお。この時期しか味わうことの出来ないその恵みに感謝して頂戴し、またご近所にも少しお裾分けをして山の恵みがもたらしてくれた喜びを一緒に分けあったのでした。

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信州に生まれた歓び
もちろんタラの芽は天ぷらに、塩をちょっと振って揚げたてをハフハフしながら頬張る喜び。山菜を口にする時、それは山国・信州に育った歓びを殊に実感する時ですが、実はこの山菜採りは、食べる歓び半分、そして収穫の喜び半分なのです。

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