信州の山は今、新芽が芽吹きはじめた薄い黄緑色と濃い緑とのまだらな様子がとても印象的です。直売所や道の駅では、タラの芽やコシアブラ、山ウドなどの山菜をたくさん見かけるようになりました。今回はこれらの山の幸(山菜)を求めて、新芽の香りがする大町市の山へ行ってきました。すこし肌寒く澄んだ空気の中で楽しんだ山菜採りの体験をお伝えします。
見えない人には見えないが、見える人には見える
山へ入る前に、まず山の持ち主でもある山菜採りの名人にアドバイスをいただきました。「山道の周辺に山菜が出ていたから、今行ってみるといいよ」との言葉をうけて、山菜の王様と呼ばれるタラの芽と最近は山菜の女王とも呼ばれているコシアブラを目当てに大町市内の山道を車で進みます。
教えてもらった目的地は大変な山の中で、いかにもたくさんの山菜に出会えそうな雰囲気です。土砂崩れ防止などのために伐採した木が、ところどころに敷かれ、しっかりと整備されているその様子に驚きました。
場所によってはまず山の上まで車でのぼり、山菜を採りながら下りてきて、後で車は別の人がふもとまで下ろす事もあるそうです。今回は天気が悪くなりそうだったので、車からあまり離れずに採ることにしました。
車を降りて早速入山。以前コシアブラ採りをお伝えした時と同様に、目が慣れるまで少し時間がかかります。タラの木もコシアブラの木もやぶの中では、しばらくの間なかなか目に入ってきません。
それでも森の中を進んでいくと、やっと少し遠くの方にやぶから顔を出しているタラの木を見つけました。その姿からは何か誇らしげな印象も受けました。雪深く寒い冬を越え、やっと芽吹きをむかえたというエネルギーに満ち溢れています。ここで早速一つ目を収穫。ほっとするとともに、いよいよ目が慣れてきたのか、あちらこちらにタラの木が見えるようになりました。タラの芽を目がけて歩く途中でコシアブラも見つけるなどしながら、1時間ほど山を歩きまわって道へ戻りました。
長くなった枝のてっぺんに芽があることが多いので、のこぎりで切ってしまう人もいるそうですが、タラもコシアブラもしなりが強いので引っ張れば折れずに収穫できるのです。また、タラの木はとげがたくさんついていますので皮でできた手袋は必須アイテムですよ。たった1時間ほどの間に、思いのほかたくさんの山菜を採ることができました。
山菜ばかりじゃない。珍しい動植物との出会いも楽しみ。
山菜採りをしていた時、なんとなく山の上の方に気配を感じて目をやると大きな動物が逃げていきました。熊が出たかと思って確認すると、一段上の方からカモシカがこちらの様子をうかがっているではありませんか。長野県の県獣でもあり天然記念物に指定されているカモシカと、こんな間近で出会えるとは得した気分です。しばらく見ていると、山の中への逃げていってしまいました。
採れたて! 揚げたて! サクサク! 信州の春の味覚
いよいよ、実食!タラの芽もコシアブラも下処理はそんなに必要ありません。はかまの部分を取って、水でさっと流すだけです。それを今回は天ぷらにして食べます。山菜は「アク」が強いと言われますが、採りたての揚げたては、サクサクとしていて、野菜を敬遠しがちな小さな子供でも食べてしまうほどです。タラの芽などは葉っぱよりも根元の太い茎の部分が甘くておいしいなんていう人もいます。直売所や道の駅で見かけた時は、絶対に買いですよー。 山を下りて来るとその他にこごみやわらびなども収穫できました。おひたしなどにして全部おいしくいただきました。自然に感謝です。
山は守られている
山は、必ず持ち主がいて国有林の場合もあります。どこでも勝手に入って山菜やきのこを採っていいとは限りません。今回私たちは知り合いの所有する山へ入ったのですが、聞くと最近はせっかく整備した山が他人に荒らされて困っているとのこと。山菜採りは必ず事前の確認をいたいたしましょう。山でもマナーは守りたいところです。
春の山の楽しみは山菜採りだけではありまあせん。景色を眺めながら歩くだけで自然の力をもらえる気がします。まだまだ寒くなる時もありますので、防寒の準備も怠りなく山歩きをしてみてください。清々しいという言葉が実感できますよ。