メタボリック症候群に効果が期待されるなど最近注目を浴びているトマト。
今回は、巷の流行とは関係なく、ただ単純に「ここのトマトが大好き」「ここのトマトなら食べられる」と子どもたちのファンも多いという噂のトマトを追って、その味を確かめるべく県中部の塩尻市へと向かいました。"ノムさんのトマト"と人々が親しみを込めて呼ぶそのトマトは、これからがもっとも美味しい時期を迎えるそうです。
見渡す限りのトマト並木
標高700メートル、青い空、目の前には広がる田んぼ、遠くには雄大な山々を望むことができて、清々しい気持ちになれる、そんな場所に「ノムさん」こと野村利彦(としひこ)さんが育てるトマトが育つ野村農場がありました。それはとても大きな2棟のハウス。その中には、まぁ見渡す限り延々と果てしなく続くトマト並木。そしてどの木にも、たくさんの実がびっしりと実り、なんとも重たそうな姿を見せています。
冬の寒さに育まれた格別の味
収穫もひと段落ついた頃、野村さんが差し出してくれたのが、待ってました! "ノムさんのトマト"。色付きはそれほど真っ赤ではないものの、ガブリとひと口かぶりついてみれば―― なんでしょう、このやわらかな酸味、そしてトマトの青臭さはほとんどなく、何より甘さが感じられます。しかも果肉はしっかりとしていて厚みがあり、じゅうぶんな食べ応え。
実はこのトマト、特別な品種ではなく全国的にもよく知られる"桃太郎ヨーク"なのです。寒さの中でやっと花を咲かせて実を付けた必死の結晶は、シワの寄った個性的な形をしているものも多いのですが、その味わいは冬の寒さに堪えてきたものだけに宿るという格別の美味しさなのでした。そして見つけました! 美味しさの目印とされるトマトの先から放射線状にすうっと伸びる白い線。
さらにノムさんのところでは、果肉が軟らかくならないよう少し早めに収穫し、追熟させることで、ほどよい果肉の硬さ、味、見た目を最高のバランスで味わえるよう手掛けているとのことです。
この時期にトマトは、なぜ?
でも、なぜ夏ではなく春にトマトでしょうか。
7月に定植したトマトの苗は日照時間が短く、寒い冬の間、自分の体を守ろうと必死に自ら糖分を出しながら、ゆっくりとしたスピードで生育していきます。さらに、花が咲いてから実が色付くまでに時間がかかる冬は、ゆっくりと少しずつ生長することで、美味しさをじゅうぶんに蓄えたトマトになるのだそうです。
それにしてもこの冬のいつまでも長引いた寒さには、加温が必要なハウスのトマトにとって燃料代がかなりの負担だったそうです。さらに4月上旬までの天候不順はトマトの色付きを遅らせていたようですが、現在では天候の回復によって実の色付きも良く、収穫量も増えているということでした。
ノムさん、第2の人生
実は、このトマトが野村さんを第2の人生へと導く引き金になったそうですが―― 。
人々から支持されるトマトを作るようになったのは、意外にも6年ほど前ということ。野村さんが第2の生き方について頭をよぎることが多くなったちょうどその頃、「偶然に巡り合っていた"冬でもつくれるおいしいトマト栽培"をこれからの人生で挑戦してみたい」と思ったことが、トマトの世界に入るきっかけだそうです。
トマトの気持ち
そんな美味しいトマトをつくるコツを伺えば「トマトの気持ちになることが大切です」と、さらりと微笑む野村さん。事実、野村さんは朝から晩まで1日のほとんどをハウスのなかでトマトと共に過ごし、トマトのその日1日を見つづけているのです。
そして、その美味しさを証明するかのように、子どもや地元の人々に支持され、またプロの料理人からの引き合いも多いなど、ファンが増え続けているのがノムさんのトマトなのです。
濃厚な味わいのトマト加工品もあります
ネット販売「僕らはおいしい応援団」でのノムさんのトマトの販売は4月末をもって終了となりますが、野村農場の直売所では6月中旬頃まで販売される予定です。またJA塩尻市ワイン農産物直売所(電話:0263−52−1965 )でも販売されています。
野村農場の直売所では、トマトケチャップや、トマトがたくさん穫れた時だけつくるというトマトジュースも販売されており、運がよければ手に入るかもしれません。このジュース、一瓶に1キロ(6個)ものトマトが絞り込まれており、美味しさがギュッと詰まった濃厚ジュースです。そんなトマト製品との出会いも楽しみに、ノムさんのトマト農場へ訪れてみるのもいかがでしょうか。
●野村農場直売所
営業時間:午後2時〜4時
定休日:土曜日
住所:塩尻市大字桟敷205ー9
アクセス:
塩尻市・・高出交差点から153号線へと向かい、ガソリンスタンド「サンリン」の横の道を入ったところ、2棟並ぶ大きなハウスを目印にお越しください。
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