野菜

うちのアスパラにはラブが注入されています

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紫色のアスパラをご存知ですか? 当ブログマガジンを長く読んでいただいているみなさんにはうなづく方もおられるかもしれませんが、世間的にはあまり知られていないのです。多くの人はアスパラは「グリーン」か「ホワイト」という固定観念に未だにとらわれているようで、それを打ち壊そうと今年も最初のアスパラの話題はパープル・アスパラにしました。それも愛情が注入された紫のアスパラです。長野県北部でムラサキアスパラを生産する小林隅男(こばやしすみお)さんご夫妻を紹介しましょう。

ずっと一緒につくっています
中野市在住の小林さん夫妻は、ふたりで仲良くアスパラを生産しています。特に奥方のかつ子さんはアスパラを育てて40年という大ベテラン。ふたりは最近では露地栽培のグリーンアスパラを中心に栽培に取組んでいます。聞けば会社勤めをされていた夫の隅男さんが会社を退職してからは、もうかれこれ15年ほど夫婦でアスパラを生産されており、隅男さんは少し照れながら「ずっと一緒だよ」と言います。

そんな小林さんの畑では、グリーンアスパラのほかにホワイトアスパラも生産されているのですが、親戚や知人を喜ばせたいと、3色そろえるため3年前に5棟のハウスを建て、そこにムラサキアスパラを植えました。天候も影響して3色が揃う期間は短いようですが、3種類が揃うことを楽しみにされていました。

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今年の日本のアスパラ事情
もともと中野市はエノキタケなどのきのこの生産量が多く、ブドウやリンゴなどの果物にも力を入れているところ。生産者たちで構成されるアスパラ部会では、4月の需要に3色アスパラを生産拡大してブランド力を強化しようと決めており、今は地域を上げたアスパラの産地作りに力が入っています。スーパーマーケットの野菜コーナーをウオッチし続けている人は、ほぼ一年を通してアスパラガスが店頭に並べられていることにお気づきだと思います。これは産地間リレーと言って、群馬県を皮切りに長野県、福島県など東北地方、北海道の順に産地が移っていくからですが、この春先に東日本を襲った震災と原子力発電所の事故の影響で、いったい東日本という一大農産物の産地がどうなるのか、アスパラだけではありませんが、まったく見当がつかない状況にあり不安がつのります。

アスパラは新芽を食べている
アスパラはただしくはアスパラガスと言い、クサキカズラ科の多年草です。「たくさん分かれる」という意味のギリシャ語が語源で「新芽」を表すのだとか。アスパラを食べるのは、竹の新芽である「タケノコ」を食べるのと似ています。通常畑に植えてから3年目で収穫ができるようになり、ピークが4〜5年目で、10年目くらいまで収穫ができます。伸びるのが早く、朝と夕方の2回収穫するのです。多年草で、収穫が終わると肥料などを与えて来年の収穫の準備をします。この手間によって次年度の出来が変わるので、年間を通じた作業が必要になるのです。

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ムラサキのアスパラはここが違います
アスパラには、グリーン、ホワイト、パープル(ムラサキ)がありますが、違いはどこにあるのでしょうか。まず、グリーンアスパラとホワイトアスパラですが、これらの品種は同じですが、栽培方法が違います。太陽の光をあてて栽培される緑色のアスパラを、遮光して真っ暗なハウスの中で栽培するとホワイトアスパラになります。ムラサキアスパラとの違いは品種が異なるためです。ムラサキアスパラはアントシアニン色素の多い異なる品種のアスパラで、中には、穂先が少し緑色のものもありますが、穂先まで紫色のものが良品とされます。

グリーンアスパラは一日に5〜7センチ伸びますが、ムラサキアスパラだと3センチと、半分くらいしか成長しないそうですし、株から生える本数も少ないため収穫量もムラサキの方が少なくなります。「初めての収穫の年で、若干時期が早いため、グリーンの4分の1程度しか収穫できていない」と小林さんは言います。

しかしムラサキアスパラは、糖度がグリーンのものよりも1〜2度高く、甘みが強くなっていますので、味が一味違います。ワインなどにも含まれ、体内の活性化酸素を取り除く働きがあるとされるポリフェノールが多いのも特徴です。また、グルタチオンやビタミンCなどもグリーンアスパラより豊富に含まれます。鮮やかな紫色ですが、これが茹でると緑色になります。天ぷらなどにもおいしくいただけます。

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作物も人にも愛情を注ぐことが大切
「人も、作物も愛情が大切。おとうさんと同じように愛情を注いでいる」と話すかつ子さん。小林さんの家のアスパラの畑は、他の畑と比べると一段高くなっていますが、土作りが重要で新しい土でないと良い物が収穫できないからで、きのこの生産施設が建設される際に出た土を運び込み、堆肥や肥料・おがくずを混ぜて畑を作りあげています。

また、周辺の水路に沿って畑からパイプが3本延びていますが、これは暗渠排水(あんきょはいすい)で余分な水や地下水を排水するためです。アスパラガスは、水分に弱いため病気にならないようにこのような工夫が必要なのです。霜から守り安定した栽培をするためにハウス栽培をしていますが毎日の温度管理も重要。収穫が終わってからは通路を耕して肥料などを加え、また来年の収穫の準備をします。この手間が、他ならぬアスパラへの「愛情」なのです。

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作業の中でも一番気を使うのが温度管理で、寒い3月には温度が適温に上がるようにハウスの中で更にもう一枚シートを被せていますし、日中の温度が上がりすぎるときにはハウス内が30度を越してしまうので、ハウスを空けて外気が入るよう温度を下げます。赤ん坊を世話するのとよく似ています。

収穫作業は、それぞれがハウスの端から二手に分かれてすすめられ、ふたりが出会うまで行うそうです。アスパラを収穫するのに使っている道具が「アスパラ鎌」。柄には下から26センチのところに線が引いてあつて、それ以上だと出荷できるルールとなっているために長さを測るために使いいます。収穫した後に、色や長さ・形などで分けて110グラムほどの束にして出荷をしますが、出荷がはじまる季節には休みもなく収穫を続けることになります。

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楽しみはふたりで出かける温泉
収穫に追われるふたりの楽しみは、出荷が始まる前と出荷が終わった後に、一緒に温泉に出かけることだそうです。話をうかがうだけでお二人の仲の良さが伝わってきました。

農産物にはすべて生産者のいろいろな想いが込められています。今回の小林さんご夫婦のアスパラガスには、愛情がこもっていました。なかなかスーパーなどでは目にする機会が少ないムラサキアスパラですが、目にした時はぜひお試しを。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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