アスパラガスは春が来たことを真っ先に知らせてくれる野菜です。アスパラガスに春の訪れを感じるのは、まだ季節の野菜が少ない時期だからでしょうか。売り場に並ぶその姿は、ひときわ輝いて見えます。
県内では今の時期収穫される以外にも、"夏秋(かしゅう)どり"の栽培も行なっていますから、想像を超えてアスパラガスは長い期間食べることが出来る作物なのです。しかしこのアスパラの中には、今の時期だけしか食べることの出来ないアスパラもあるのですが、ご存知でしょうか?
それは全身が白い色をしてる"ホワイトアスパラガス"です。生のホワイトアスパラガスは、なんだか繊細な味を予感させます。
久しぶりに訪れたのはホワイトアスパラの産地のひとつである県北部の千曲市若宮の宮坂勝章(みやさかかつあき)さんのハウス。高さ30センチ程に真っ直ぐに伸びるアスパラですが、その栽培には高さ3メートル、長さ50メートル以上、幅27メートルもの大きなハウスが利用されていました。
アスパラガスが真っ白に育つ理由
ハウス内部は当日の天候の良さも関係して、まるで初夏のような暖かさです。千曲市よりもさらに北上した飯山市などでは、アスパラが露地栽培で外からでもたくましく育つ様子がいたるところで見られますから、ここ千曲市ではこのハウスという施設によって、自然のエネルギー効果で他の場所よりも早くから収穫を行うと共に、雨の影響による病害の発生の大きいアスパラガスを守る役割も行なっているのです。
お目当てのホワイトアスパラガスはそんなハウスの中、さらにシルバーの遮光フィルムに覆われた小さなトンネルのなかで栽培されており、この陽の光を通さない栽培こそが、アスパラが白くある由縁なのでした。しかしそうはいっても収穫時ばかりは遮光材をまくり上げることになるのですが、突然陽の光を浴びてなんだかとても眩しそうなホワイトアスパラ、でもスッくと元気な様子で生長をしているのがわかります。
ホワイトアスパラガスが収穫できるのは4月まで
さっそくアスパラガスというものが、どうしてグリーンとホワイトでは収穫期間が違うのかを宮坂さんに訊ねてみると、
「気温が高くなるとアスパラの穂先は広がってきてしまうため、覆っているシートを取リはずすことになり、それによってホワイトアスパラは光合成をはじめ、もはやアスパラは白から緑色へと変化を遂げる」
のだそうです。ということでホワイトアスパラガスが収穫できるのも4月いっぱいで、ちなみに宮坂さんが栽培されているグリーンアスパラもホワイトと同じ「ウエルカム」という品種なのです。
「昔はそれほどとは思わなかったけれど、この頃は生長をみるのが楽しくて、種を蒔いた、収穫できたなどの節々にとても楽しみを感じる」
宮坂さんは目を細めました。本格的に農業をはじめたのは7年前の定年退職後だそうですが、宮坂さんのハウスは平成18年から県のアスパラガス収量性向上モデル園にも指定され、現在は奥さまと2人でこのアスパラガスの栽培を中心に農業をおこなっています。
「昨年より今年と、年を追う毎に毎年様々なことが解明され、合わせて新しい技術がでてくるから、それを自分に合った方法を見つけて取り入れ、切磋琢磨していきたい。農業は日々変化ではなく、日々進歩しているんです」
宮坂さんはその言葉どおり、常に広く国内にアンテナを張り巡らせ、より高度な栽培を行っている人がいると聞きつけては栽培方法を電話で聞き、また視察に訪れたりと、アスパラ栽培への取り組みも人一倍熱心です。
「是非多くの人にここを訪れてほしい」と言葉を続けます。「初めて農業と向き合い不安を抱える人や、また現在不安を抱えながら農業に取り組んでいる人などの力に少しでもなりたい。そしてひとりでも多くの人に農業の魅力を伝えたい」
自らの経験を下敷きにして、宮坂さんは温かい笑顔で力強く話します。言葉どおり宮坂さんの元には様々な立場の人が訪れてきます。
白い生のアスパラガスをお試しあれ
グリーンのものより甘味を多く感じるホワイトアスパラ。その穂先ともなれば茎の糖度を上回る8〜9度になることもあります。また水分の多いみずみずしさにもビックリするかもしれません。
獲れたての生のホワイトアスパラは、今はまだホテルやレストランでの引き合い等が多く、スーパーではなかなかお目にかかることも少ないかと思いますが、もし出合いのチャンスが訪れたのであれば、目と舌で是非その味を確かめてみてください。
生のホワイトアスパラの美味しさにあなたも目覚めてしまうかもしれません。ただし、アスパラガスが白い姿でいられるのも、あとわずかの間だけなのですけれど。
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