雪の中からフキノトウ・・・じゃなくて、秋の味覚が出てきました!
なんとなんと、大きな雪の塊から姿を見せたのは、『りんご』ではありませんか。雪のなかで保存されたりんごの味は、どうなんでしょうか? りんごと言えば、秋の味覚の王様。リンゴの実がたわわに実っている姿は、『長野県の秋』を感じさせる風景のはずなのですが・・・
今回は、上田市の菅平高原にある、「JA信州うえだ菅平第一集荷場」を訪れています。目的は、「菅平雪中りんご」の掘り出し。りんごの掘り出しというのも、実に変わった表現ではあります。
りんごの掘り出しの実地検分
地元の生産者が昨年11月下旬に収穫したりんご「ふじ」などを、集荷場近くの雪のなかに埋めたのは今年の1月12日。この自然の冷蔵庫のなかで2ヵ月以上保存した選りすぐりのりんごたちを、本日3月31日に掘り出しているのです。
朝、集荷場に到着したら、いきなり重機で雪かきをしている職員の方を見かけて、雪の多い地区なんだとあらためて確認しましたが、その雪のなかにりんごが保存されていたことに驚きました。
長野県東北部にある上田市の菅平高原は、標高約1300mの高地で、冬には全国からスキーヤーやスノーボーダーが集まり、夏には冷涼な気候のため大学ラグビーやサッカーの合宿、マラソンのトレーニングに参加するアスリートたちで賑わいます。農業では気候を活かしたレタスの栽培などが盛んな土地です。
雪のなかのりんごはなぜおいしい
今回雪のなかからお目見えしたりんごたちは、「菅平雪中りんご」と呼ばれていますが、これは上田市長である母袋創一(もたいそういち)氏が命名したものです。JA信州うえだの理事である横沢正勝(よこさわまさかつ)さんや坂下隆行(さかしたたかゆき)さん〔写真〕が中心となって、「雪中りんごが、上田のおいしいリンゴのよいPRになれば」との思いを込めて、秋から冬にかけての収穫時期だけではなく、春になってからもおいしいとれたての味を体験してもらおうと、昨年からはじめました。
雪の中でりんごを保存するメリットは、温度と湿度が一定なことにつきます。凍ることがなく、一定の温度・湿度で保たれるため、良好な条件下での保存が可能なのです。通常の冷蔵庫保存では電気代などの経費もかかることから、昨年冬場には豊富にある雪を利用して保存することに成功し、今年雪の中に入れたリンゴは、昨年11月に収穫したりんごのふじ等で、特に色が良く蜜のあまり入っていないものを選びました。蜜が入りすぎていると、傷むリスクが高くなるからです。そのように選ばれたりんごが、全部で170コンテナ、約8500個、保存されていました。
りんご掘り出しの一部始終
りんごを雪の中から掘り起こす作業は、まるで宝探しでもしているように見えました。生産者やJA職員が一緒に掘り起こし作業に参加し、テレビ局や新聞社の記者など報道陣の見守るなかで、重機やスコップ、時にはつるはしまで使って雪をよけていくのです。
白い雪のなかからようやくコンテナの上にかけられた青いブルーシートが出てくると、作業している生産者やJA職員、報道陣が一斉に集まり、全員が見守るなか、ブルーシートが外されました。
するとそこには収穫時となんら変わらない、おいしそうなりんごたちが顔を見せました。その瞬間、雪の中から、周辺にりんごの良い香りがふわっと広がり、匂いをかいだだけでいやがうえにも期待が膨らみました。
わきあがる「おいし〜」の声
そこで、いよいよ、試食です。見た目は、秋に収穫されたときと変わっていません。生産者やJA職員の方々が苦労されて掘り起こしたりんごをその場でいただきます。食感はシャリシャリしています。ぼけてはいません。取材陣たちからも「おいし〜!」の歓声が湧きあがります。まさか、春になるこの時期まで、獲れたてと変わることのない、おいしいりんごが食べられるなんて、驚くのも当然です。坂下さんは、「とりたてのおいしいリンゴを一人でも多くの方に食べてもらいたい」と自信に満ちた表情で語りました。