果物

プルーンの気持ちが痛いほどよくわかるから

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長野県東部の佐久地域は全国でも指折りのプルーンの産地です。しかしそんな全国に誇れるプルーン産地の裏にも、生産者の高齢化、労働力不足などといった課題がありました。今回、佐久地域が有数のプルーン産地であり続けるために奮闘している農家のひとりに会ってきました。

南佐久郡佐久穂町にお住まいの高見澤良平(たかみざわりょうへい)さんは30年余りにわたってプルーンの栽培に携わってきました。栽培するプルーンは20種類、そのうち主に9種類を中心として生産、出荷をしています。今の高見澤さんのプルーン畑の大部分は、前任の地主から引き継いだもの。自身で所有していた畑はもともとわずかでした。後継者探しをするつもりで前任から引き受けた広大なプルーン畑は、当初、跡継ぎが見つかるまでの1年間だけ手をかけるつもりだったといいます。

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「わたしを食べて」と語りかけている出荷が早めのプルーン、オパール

プルーンの産地を維持しよう
「もったいないしね、やれるだけやってみようと。俺が誰か後継者を探してやるってね」

しかし後継者は見つからず、1年で返すつもりが「ズルズルとこのままになっちゃった」と高見澤さんは笑います。彼は今ではおよそ700本のプルーンの木々の主人です。「この畑の木は、一番最初にプルーンがこの地域に導入されたときに植えられた木ですよ。だから自分にもある程度責任もあったりしてね。愛着もあったりしてさ。"切るにはもったいないねえ"って、ひと言、言っちゃったんですよ」

高見澤さんのプルーン産地を維持するためのさらなる努力が、そのときからはじまりました。

プルーンはふたつの成長を経験する
高齢化の進むプルーン農家では、毎年作業中のケガが絶えません。

「ハウスや脚立から落ちた、そいういところを見ていると、一刻も早くそういう(高齢化したプルーン農家仲間が高所作業中に)事故を防ぐようにしなきゃいけねえって思ったんですよ」

心を痛めた高見澤さんは、新しいプルーンの栽培技術の開発に取り組みました。数十年のプルーン栽培の経験から思考錯誤で開発した「根域制限栽培」です。簡単にいうと、根の成長を制限することで、通常よりも早く果実が実り、木の高さを低くとどめて、高齢者でも作業をしやすくするというもの。

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これはすこし小ぶりなプルーンのサンタス

一口に「成長」といっても、プルーンの木はふたつのタイプの成長を経験します。ひとつが「栄養成長」で、もうひとつが「生殖成長」です。「栄養成長」とは自分の体を成長させるため、「生殖成長」とは果実を実のらせ、子孫を残すための成長です。

高見澤さん曰く、プルーンの若木は「栄養成長」のことしか考えていないそうです。そのため、果樹をつける前にどんどん枝を伸ばし、人間が手入れをするにも困難なほど成長してしまうのです。

しかしひとたび花をつけ、実をつけてしまえば、プルーンは「生殖成長」へと切り替わり、もう枝を伸ばさなくなります。「根域制限栽培」によって、通常よりも早い年数で実をつけるという効率性により、木が高くなりすぎずに人手の届くやすい範囲での作業の省力化が可能となったのです。

個々の品種に応じた育て方が必要
新しい栽培方法をはじめてすでに7年が経ちました。しかし品種によっては根が成長してしまったりと、上手くいかないものもあり、個々の品種に応じた育て方をしなければならない点が栽培の難しさだと、高見澤さんは言います。

まもなく収穫のピークを迎える高見澤さんは今はとにかくいそがしい日々を過ごしていました。ピーク時は夜間でも作業をしないと間に合わず、真夜中の午前2時から荷造りをはじめ、7時に出荷、朝食を食べてからまたすぐ収穫をはじめます。お弁当を畑に持ち込み、おおよそ17時までひたすら収穫を続けます。それから夕食を食べてわずかな休憩ののち、自宅でまた荷造りです。

「地域にも貢献しないといけないから。やっぱり仲間がいて、自分もプルーンをやっていられるっていう形がいいと思うからね。だからみんなで(いい技術は)取り合えばいいと思うから」

そう話す高見澤さんも、自身の後継者の出現を夢に見ているようです。

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年老いたプルーンの木の懸命な生き方
話を聞きながら畑を歩いていると、腐って枝の折れた一本のプルーンの木を見つけました。折れた木にも、たくさんの実がなっているではありませんか。老木となり倒れてもなお、このように見事な果実をつけているのです。懸命に生きる姿が、おそらく高見澤さんに愛情を抱かせるのでしょう。

プルーンは経済需要(果樹として経済的な役割を果たすという意味)が15年程と言われます。高見澤さんの畑にある多くのプルーンの木は、どれももう30年は生きているといいます。

収穫したてのアーリーリバーをその場でいただきました。甘酸っぱい果汁が弾力のある実から口いっぱいに広がります。高見澤さんも果実をほおばりました。「味はいかがですか?」と質問すると「まずまずだと思うよ」。謙遜しておっしゃいますが、高見澤さんの満足そうな表情を見れば、今年のプルーンの出来栄えが上々なことが分かります。

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収穫したてのアーリーリバーをほおばる高見澤さん

今年はプルーンの食べ比べを楽しめます
最近は気候の変化で多少の前後はあると言いますが、おおよそ以下のような順番でプルーンの品種は旬の時期を迎えます。まずこの時期からスタートを切るのがアーリーリバーです。そしてオパール、サンタス、ツアー、お盆をすぎてブルータン、くらしま早生、くらしま、ローブド、サンプルーン、プレジデント。ひとつの品種を口に出来るのは1週間から10日程。プルーンの旬はことのほか短いのです。

今年のプルーンは豊作とのこと。それは昨年、凍霜害で果実が実らず、その分収穫の力を木の手入れに費やせたためです。また、昨年果実をつけなかった分、今年は花がたくさん咲いて果実がたわわに実ったことにもよります。

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じっと熟す時を待っているプルーンのくらしま(左)とサンプルーン

さらにプルーンは、品種によってまったく別物というくらい、食べ比べに面白みのある果物。生産者自身が「ぜんぜん違うよ。みんな特徴があるわ。びっくるするくらい」とを驚くほど、プルーンは品種によって酸味、甘み、果汁量、肉質に違いがでる果物です。

消費する側からして見れば、品種による味の違いを楽しめるのはことのほか嬉しいかぎりです。生で食べるプルーンのおいしさはもう知っているというフルーツ好きのあなた、今年は品種によるプルーンの違いを楽しんでみるのは、いかがでしょうか?

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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