加工品

昔ながらの手で作ったこんにゃくが人気です

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北安曇郡池田町は信州の中央部から少し北、雄大な北アルプスの壁のような山々を望む田園風景という、安曇野の眺望が自慢の町です。その北アルプスを見ながら走る県道51号沿いにあるJA大北(だいほく)の直売所「グリーン大地会染(だいちあいぞめ)店」では、冬から春にかけてこの時期にだけ店頭に並ぶ、手作りのこんにゃくが人気です。

JA大北女性部池田支部のこんにゃく部会が、地元産こんにゃく芋を使い、昔ながらの製法で作る刺身こんにゃく。こんにゃくを作りあげるのは、時間や体力を要する重労働ですが、作業の合間には、信州ならではの楽しい時間もあって、こんにゃく作りはおかあさんたちの手で和やかに行われていました。

こんにゃくが体によいことは昔から知られていました
こんにゃくを食べると、体内から不必要なものが排出される働きがあることがわかっています。こんにゃくマンナンという食物繊維が豊富に含まれているため、腸の働きを活発にし、老廃物を外に出すためです。文字で書かれた記録を読むかぎり、もともとこんにゃくは日本列島に医薬用として持ち込まれたようです。

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原産は熱帯アジアのインドシナ半島とされており、現在でも東南アジアには数多くのこんにゃく芋が自生しています。こんにゃく芋の形状から「象の足」などとも呼ばれているらしいのですが、それらはマンナンといわれる食物繊維を含まないため固まらず、こんにゃく作りには適していないといいます。

日本列島に伝わったのは2世紀から3世紀頃に古代中国からとも、6世紀に仏教伝来の前後に韓半島から入ったとも伝えられていますが、文献上は諸説あって、確かなことは分かっていないのです。さらに稲作以前に南方から里芋などと共に根菜文化として持ち込まれたという説もありますから、縄文時代の中ごろには持ち込まれていた可能性も捨てきれません。いずれにしても、こんにゃくは当初は薬用として使われていたのだと思われます。

土から作るのが伝統的なこんにゃく
かつて、こんにゃく作りといえば、生芋から作っていましたが、現在市販されている多くはこんにゃく芋を乾燥させて製粉した精粉(せいこ)で作るのが主流となっています。

JA大北こんにゃく部会では昔ながらの製法を守り、部会長の塚原米子(つかはら・よねこ)さん(75)宅の約2アールの畑で収穫した生芋を使って、手間ひまかけてこんにゃくを作ってきました。昔からこんにゃくは『土で作るもの』といわれています。育つときにたくさんの養分を必要とするからです。だから速効性の肥料ではなく、養分のある土づくりが欠かせません。塚原さんは言います。

「もう10年以上になるかねぇ。5月に植えて9月に収穫して。ぼかしを使って土を作り、農薬を使わないで作っています」

池田支部のこんにゃく作りは11年前から。当時のJA生活指導員が中心となって、地域の特徴となる農産物加工品を作ろうという活動が発端でした。メンバーは4人。毎週月曜と木曜が活動日で、毎回2人1組となって、直売所に併設された調理室で作っています。

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取材に訪れたこの日は塚原さんと、光家せえ子(こうけ・せえこ)さん、矢口俊子(やぐち・としこ)さんの3人で作業が行われていました。

こんにゃくを作るのは簡単な作業ではなかった
まずは、皮をむいたこんにゃく芋を2センチ角くらいに切ってミキサーにかけます。芋2キロに対して水は8リットル。こんにゃくの97%は水分ということが理解できる気がします。ミキサーでトロリとした芋を、今度は火にかけた大鍋に移して木じゃくしでかき混ぜ続けます。

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「この作業が大変なんですよ」と矢口さん。

大鍋は強火にかかっているため、手を休めると焦げついてしまいます。その上、熱で水分が飛ぶため粘りも出て、緩かった液体が固まり、混ぜるというよりは練り続けるような作業となるのです。手はだんだんと重くなり、腕に疲れが出てきます。それでも手を休めるわけにはいきません。

昨年11月から同部会で作業をするようになった光家さんは「こんにゃくを作るようになってから二の腕が締まってきましたよ」と笑顔。

練り続けること約30分。生芋の色に近いピンクがかった色から、こんにゃく色のグレーに変わったころ、今度は熱湯で溶いた精製ソーダを3回に分けて注ぎ入れ、さらに練り続けます。凝固させる精製ソーダが、まんべんなく混ざったところで、大鍋からステンレスのバットに移し替え、形を整えたら、しばらく寝かせます。

こんにゃくの状態にあわせて休憩もとる
作業開始から約1時間半。そこでこんにゃくが冷めるまでは少し休憩タイム。信州ならではの「お茶の時間」がはじまります。自家製の漬け物や煮物、まんじゅうなどを持ち寄り、テーブルがいっぱいになるほどのお茶うけを並べ、昔ながらの信州のお茶の時間。みんなもこの時間を楽しみにしています。

「仲間で話をする、こういう時間も大切なんですよ。漬け物の漬け方を教えてもらったりね」と3人。

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お茶の時間は、この後始まる作業の英気を養う時間でもあるのです。やがてこんにゃくが固まったころ、作業は再開します。

冷めて固まったこんにゃくを切り分けたら、今度はアク抜きのために約40分、大鍋でグラグラと茹でます。

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「ここでこんにゃくが煮崩れてくると、失敗。時にはやり直すこともありますよ。何度やったらうまくできるのかねぇ」と塚原さん。光家さんは「うまくできると本当にうれしいよねぇ」としみじみ話してくれました。

一度に30枚しかできません
茹でて固さが安定したら、水にさらして出来上がり。柔らかな食感と、粒子の荒い素朴な味わいは生芋からできたこんにゃくならでは。それはまさに刺身のようにワサビ醤油で食べるのがおすすめです。1枚150〜200円前後で販売しています。食べる前に30分ほど水に浸してアク抜きをしてから食べてください。5月上旬までの月曜と木曜の午後には直売所の店頭に並びますが、1回30枚程度と数に限りがあるので、売り切れることもあります。手作りこんにゃく、お早めにどうぞ。

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手作りこんにゃくが購入できる場所:

JA大北農産物直売所グリーン大地会染店
長野県北安曇郡池田町大字会染5098−1
電話0261−61−1345
営業時間:通年8:30〜17:00
地図

JA大北ホームページ

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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