あなたはダリアのことなどほとんど知らない

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県南部の飯田市と同市周辺の下伊那郡にかけてのJAみなみ信州管内は、品質の高い花きの生産が盛んなところ。先週のオキシペタルムに引き続き、今週はもうひとつの主力作物「ダリア」についてお伝えしましょう。と、ここで「なんだ、ダリアかぁ」と考えたあなた、ちょっとお待ちください。今世の中に出回っているダリアは、あなたが知っている(と思っている)ダリアとは、まるで印象が違うもののはずですから。

赤黒い魅惑的な色をしたものや、蓮の花のようにきれいなピンク色など、また形も毬(まり)を連想させるようなものや、大きさも小ぶりなものから大輪のものまで、これまでのイメージをガラガラと覆す色や形があります。「ええっ! これがあのダリアなの!?」と驚いてしまうぐらい、今のダリアは種類が豊富なのです。

ダリアには大きな可能性がある
ダリアは、メキシコが原産のキク科の多年生草本植物で、江戸時代末期にオランダ人がヨーロッパから持ち込んできました。花の形がボタンに似ていたことから当初は「天竺牡丹(てんじくぼたん)」と呼ばれ、そのままそれが和名にもなっています。色の鮮やかさで、メキシコの国の花とされており、花ことばは華麗、優雅、移り気など。

JAみなみ信州管内は、東西から山脈にはさまれ、あいだを天竜川が流れる夏でも涼しく品質の良い花きの栽培が盛んな場所。なかでもダリア栽培が盛んで、今は27名もの生産者がダリアを育てています。花き部会には、ダリア専門班というダリアについて専門のグループが設けられていて、そのダリア専門班の班長をされているのが、下伊那郡高森町の唐沢弘之(からさわひろゆき)さんです。彼はダリアの可能性に夢を見て、5年前からダリアの栽培を続けています。

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ひと口にダリアといっても、現在JAみなみ信州管内で栽培されているダリアの数は30種類以上。唐沢さんも"アジタート""ブラックキャット""純愛の君""ミッチャン"などの種類を生産するほか、これから世に出していこうと企てている試作品もあわせると、なんと15種類ものダリアの栽培をおこなっているのですが、過去に栽培したものもふくめば、これまで手がけたダリアはすでに30種類ほどにのぼるといいます。

なぜこれほど多くの種類を栽培しているかといえば、浮き沈みが激しく飽きられやすい花の世界では、人気の出そうな花を次々と世に出していくことにより、ダリアとしてのまた別の魅力を知ってもらうなど、世界に刺激を与え続けたいという願いや、またそうすることで世の中でダリアという花の人気を保っていきたいという思いがあるからなのです。

年間を通して最も魅力的だった花
唐沢さんは言います。「花は時代の景気に左右され易いものであることや、自分がいいと思って出したものが時代のニーズと上手く一致して認められるかどうかはとても難しい」と。

そんな花の世界で、昨年おこなわれた国内最大手の花き卸売業者・大田花卉による「FLOWER OF THE YEAR OTA」(東京都中央卸売市場を利用する業者から一般の人々まで約200人を対象に、年間を通してもっとも魅力を感じた花についての人気投票)2008年度において、JAみなみ信州の生産者が育てたダリア「黒蝶(こくちょう)」が見事グランプリを受賞しました。

「花作りの先端をいく者の意地」との言葉通り、ダリアをハウスで年中栽培する前例がないなか、試行錯誤を繰り返しながら通年の栽培を可能としたJAみなみ信州ダリア班のメンバーたち。同じメンバーとはいえ花づくりに対してはみながライバルであり、各人は独自に研究を重ねて妥協することなく栽培に取り組んでいます。こだわりを持った栽培をしたいと考えるひとりひとりのメンバーの思いは同じであり、そのことがJAみなみ信州の花き栽培のレベルを高めているようです。

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手を抜けばすぐ品質が低下する
「これほどまでに人気が出る花になるとは正直思わなかった」と唐沢さん。それにしてもこのダリア栽培は「とにかく手間がかかる」と言います。花の持ちを良くするために、収穫は日の出前の早朝涼しい時間から行いますが、日中は"脇芽(わきめ)"という幹の横から伸びようとする芽を摘み取ることにより、中央に伸びる花へ生長を集中させる作業をほぼ1日中ハウスの中で毎日おこなっているのです。

特に気温の高いこの時期は、樹の生長が早いため、作業が追いつかないほどに忙しいのです。ブライダル関連からの需要が多いダリアの花は、結婚式が1年中でもっとも多くなるこれから秋になると、さらに需要のピークがやってくるので、しばらくは夏の疲れを癒すどころではなく、このままモーレツに忙しい時期になだれこみます。

「手を抜くと、品質の低下を招いてしまうため、適期の作業ははずせない。とにかく気力と体力、ただそれだけです」と話す唐沢さんの言葉は、ダリア栽培の大変さを伝えていました。

ダリアの切り花とのつきあい方
品質の良さに定評があるとはいえ、夏場のこの気温の高い時期は、どうしても花の持ちが悪くなりがちです。そんな花持ちの悪さを、「買った人ばかりでなく、花を作る側に立つ人間も花持ちが良くなるように工夫を重ねて栽培、輸送を考えて行なっている」と唐沢さんは話します。そうはいっても、花を長く楽しむには生産者ばかりの努力では限界があるわけで、この時期のダリアの切り花の手入れについてお聞きしました。

まずダリアは涼しい場所で花の観賞を楽しむこと。そして水は毎日こまめに取り替えること。ダリアは水が大好きで、水の吸収量は多いのですが、この時期水に浸かっている茎の部分からぶよぶよと繊維が溶けてくるため、なるべく水は少なめに入れ、こまめに水を取り替えながら補給をしてやるのがよいのです。

水に浸かって繊維が溶けた部分はハサミで切り、茎を清潔な状態にしておく。花弁(花びら)は外側から枯れたようになってくるので、そのような状況がみられたら、まず周りの枯れた部分だけをハサミを入れて取り除くこと。指でその部分を取り除こうとすると、花全体が取れる場合があるため、けして指で引っ張らないように。

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それは一瞬で世界を変える花
ダリアは現在、市場では高級な花とされ、親しみを感じる花ではないかもしれません。しかしそのことが、日常を非日常に転じ、いつもの場所を異空間に感じさせてくれる不思議な魅力を持った花でもあります。気分を変えたい時などあなたの部屋にも一輪飾ってみてください。

「多くの人に知ってもらい、飾って楽しんでもらいたい」と話す唐沢さんは、より多くの人を魅了させるダリアを目指して、また近い将来ダリア界からスターが誕生することを心待ちにしつつ、今日も手間を惜しまずダリアを育てていることでしょう。

参考ページ:

JAみなみ信州で栽培されているのダリアの品種全37種類一覧

あわせて読みたい:

オキシペタルムを25年栽培し続けてきた彼

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