長野県では先月中旬に梅雨明け宣言こそ出ましたが、いまだ断続的に雨が続いています。長雨と日照不足は全国的にも同じ状況で、農産物の生育に関するいくつかの報道をみなさんもご覧になったことと思います。先週も「長野県のおいしい食べ方」の読者の方から長野県の農産物を心配するコメントを複数いただきました。そこで、現在の長野県産野菜や果物の生育状況を、わかるかぎりお知らせしておきます。
信州の夏野菜はどうなる?
露地栽培のレタス、白菜、キャベツなど葉洋菜では、品目ごとに状況は異なるものの、肥大が十分に進まないことや、腐敗性の病気の発生などが懸念されています。ハウス栽培のトマトやキュウリなどは、日照不足により光合成能力が低下し、生育の遅れや収量・肥大の不足が心配されています。
夏場の野菜の安定生産にむけて
こうした天候状況に対して、生産現場では排水対策を強化したり、かん水(水やり)を抑えたりするなどしています。これは、高湿度と日照不足の中で栽培を続けると病気にかかりやすい軟弱野菜になりがちなためで、上記のほか肥料を抑えるなどして、生育をコントロールしているのです。また、病気が発生した際には、迅速で適切な防除を行い、被害の拡大を防ぐよう、JAグループでは呼びかけています。
高冷地の冷涼な気候を利用した夏野菜の生産は、サラダカントリーとも言われるわたしたちの県の大きな特徴でもあります。生産者、JA長野県グループとも、夏場に野菜を安定して生産することに対する全国のみなさんからの期待が大きいことを痛感しています。農産物生産には不良な天候が続いていますが、生産者、県内JAともに、夏場の日本の食卓から野菜が消えることのないよう、安定した収量の確保に向けて取り組みを強めています。
これからの果物の季節はきっと大丈夫
果物では桃の早生種(早めに出る品種)で平年に比べて収穫時期が3日ほど早まりました。ただ、この早まりは長雨や日照不足の影響というより、春先の花が咲いてから30日間ほどの期間に気温が高かったためと考えられています。長雨による影響としては、桃の一部に腐敗や生理落果(雨に当たって自然に果実が落ちる)が見られ、収量に影響しそうです。日照不足では、糖度に少し影響が出ていますが、出荷時は糖度センサーで一定基準を超えたものを選別するため、食卓に届けられる桃は例年通りのおいしい桃ですのでご安心ください。ただ、この点からも収穫量の減少が予想されるため、全体の収量は前年より下回るかもしれません。一方、これから出荷がはじまる白鳳、あかつき、川中島白桃などの桃の中生種、晩生種は、収穫時期こそわずかに早まりそうですが、今までのところ全体的には大きな影響はなさそうです。
りんごを見ると、肥大や玉伸びも良く順調に育っていて、まだ病害虫の異常発生なども報告されていません。早生種のつがるは夜間の気温の低さからか色つきがとても良く進んでいます。梨、ブドウでも目立った影響は出ておらず、今後、天候がすこしでも安定すれば、例年通りのおいしい果物を届けられるでしょう。
自然と切り離せないからこそ農業
農業は自然と切り離すことができません。農家の努力を超えて、その年の気候、天気に収量や品質が左右されることも残念ながらあります。地球規模の気象の異変は今年だけでなく、これからも起こるでしょう。わたしたち編集部が生産者の方を取材する際、しばしば耳にするのが「その年その年が勝負だ」という言葉です。現在の天候はけして良くはありませんが、これまでに培った技術を駆使して、おいしい農産物の安定供給のために生産者、JAグループとも頑張っていますので、このブログをお読みのみなさんにも応援いただければ幸いです。