松本盆地の南西部大地に位置し、景勝地として有名な上高地のふもとにある山形村は、県内一の「長いも」の生産地。強い粘りと甘みが特徴で、その味わいの良さは上高地・焼岳の火山灰土による大地の恵みです。北アルプスを望む広大な畑では今、土の中でひと冬越した長いもの春堀り作業がさかんに行われていました。上條浩一さんの畑でも、土をかき出しながら深く掘り下げる"山形村発祥"の機械「ミニモール」と、長い棒を使った収穫作業が続いています。今年は春の訪れが早かったため、例年より1週間ほど早い、2月25日からの収穫解禁でした。作業は4月下旬ころまで続きます。
機械のおかげで作業はずいぶん楽にはなりました
細長い畝をゆっくり進むオレンジ色の機械がミニモール。大きさは手押しする耕運機ほどですが、その先端にはチェーンソーを拡大したような特殊な機械が付いています。
「昔は1本1本手で掘ったそうですよ」と上條さん。長いもは、その名の通り1メートル近くある長いイモ。あまりに労を要する作業だったため、村人が「長いも堀りの機械を開発してほしい」と業者に要望して誕生したのがはじまりだとか。
その堀り取り作業を大幅に軽減したのがミニモールでした。チェーンソー状の機械が回転すると、土を掘りながらベルトコンベアーのように地上に土をかき上げ、120センチほどの深さまで軽々と進んでいきます。とはいえ機械が収穫までしてくれるわけではなく、最終的には微調整が効く人間の手が必要です。
いもに傷をつけないよう、長い棒を使って手作業で丁寧に抜き取ります。こうして、まっすぐに伸びた長いもの収穫ができるのです。上條さんが使用している棒は長さ150センチくらいのステンレス製。グリップ部分などは「使いやすいように」と自分で作りました。ちなみに、一緒に作業をしている父・恒夫さんの棒はスキーのストックを改造したものだとか。作業する時の姿勢や身長に合わせた道具を作りだすのも効率をあげる農作業のひとつなのです。
秋に7割、春に3割の収穫を行う
長いもは春に植え付けて秋に収穫するものと、ひと冬越した翌年の春に春堀りするものとに分かれていますが、味わいは秋も春も差はないそうです。秋と春とに収穫を分けるのは、労力のかかる収穫作業を分散させることや、冷蔵庫での保管よりも"天然の保管庫"ともいえる土の中の方が状態良く保存できるからなのです。多くの農家は秋に7割、春に3割の収穫を行っています。
西に北アルプス、東に八ヶ岳、北西には松本平を望む、眺めの良い場所に約80アールの畑を持つ上條さんは、父の大病を機に脱サラして後継者となって6年目。
「どこに棒を刺せば傷つかないように長いもが収穫できるか、いまだに見極めている状態で、毎年勉強です」と苦笑い。
現在は元気になった父と母と畑で作業しながら、作業の感覚やカンを磨いているところです。作業効率のアップや品種の研究などにも熱心に取り組み、さまざまな方法で試験的な栽培もするなど、次世代を担う若手農家のひとりです。
贈答用としてもみなさんに喜ばれている
山形村の良質な長いもは、かつて噴火した焼岳の火山灰土によるもの。肥沃で水はけの良い土壌が適していたことから、代表的な特産品となるまでに生産量が増えました。20年度の作付面積はJA松本ハイランド管内で80ヘクタールのうち70ヘクタールと、約9割を山形村が占めています。地元4割、お好み焼きの重要が多いという関西方面に3割が出荷されています。当然ですが地元のAコープやまがた店では家庭用から贈答用まで1年中、長いもの販売を行っています。
問い合わせ先:
Aコープやまがた店
住所:〒390−1301
東筑摩郡山形村2024−1
電話:0263−98−2040
営業時間:9:30〜19:00
定休日:原則 第1・3水曜日(長芋直売時は無休)
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