アスパラガスの産地として良く知られる長野県北部のJA北信州みゆきでは、3月中旬にアスパラガスの種まき作業が行われました。作業が行われた飯山市常盤の育苗ハウス内には、作業台の上にズラリと種まき用の黒いトレーが並べられ、5人の職員によりトレーに次々と種がまかれていきます。トレーを見るとそこには1枚のトレーにつき200個のくぼみがあり、それぞれのくぼみに土が入っています。このくぼみの中に種を入れていくのですが、この入れ方はちょっとユニークです。使う道具は「野菜播種板(やさいはしゅばん)」という上下に2枚の板が重なり、それぞれに200個の穴が空いているもの。具体的な作業を説明しましょう。
種をまかなければなにもはじまりません
まずはアスパラガスの種を上の板にザーッと出し、両手で板を抱えながら、穴に種がはまるように左右に動かします。見ているだけだと少し楽しそうに見えるこの作業ですが、やっているみなさんはもちろん真剣そのもの。
上下の板の穴の位置は少しずれているため、上の板の穴に種がはまった段階ではまだ種は下に落ちません。無事、200個の穴すべてに種がはまったところで、上下左右の位置がトレーに合うように板をセットし、下の板を横にずらすように手で押すと、上下の板の穴の位置がそろい、トレーに種が落ちるという仕組みです。トレーに落ちた種はほとんどがしっかりとくぼみの中心に収まっています。
しかし、作業をしていた女性の方に聞くと、最初の頃は板とトレーの位置がうまく合わず、いくつも種をこぼしていたのだとか。それが、経験を積むうちに感覚的に位置がパッと分かるようになったのだそうです。それでも、うまくくぼみの中心に落ちなかった種があると、ピンセットなどで中心に収まるよう位置を調整します。
これから発芽するまでに10日ほど
このあとトレーの種に土をかぶせ、水をあげ、被覆して25度設定のハウスに10日ほど置くと発芽します。このハウスでは種を苗の状態まで育て、各農家宅に出荷しますが、今回の種が苗となり出荷されるのは5月中旬頃になります。また、その苗がアスパラとなって食べられるようになるのは、来年の夏頃ということです。
今回、5〜6人の人手で2日間かけ、約600枚のトレーに種がまかれました。1枚200粒なので、12万粒以上がまかれたことになります。JA北信州みゆきでは、4月中旬から2回目の種まきを予定しており、およそ13万粒がまかれます。