あっという間に12月。とうとう長野市にも先日雪が降りました!
最寄り駅まで自転車で通勤している筆者ですが、帰る頃にはサドルが凍っていて地味に辛い…
農産物もだんだんと少なくなってきましたが、この時期に旬を迎えるのが「根菜」。甘みを蓄えたホクホクの根菜は、蒸しても焼いても揚げてもおいしいですよね。
そして筆者にとって根菜といえば、ごぼう!
折しも信州の伝統野菜に指定されている「村山早生ごぼう」というマニアックな品種が長野県須坂市で収穫されると耳にしたので、生産現場に行ってきました!
「村山早生ごぼう」とは?
やってきたのは長野県の北部に位置する須坂市。須坂市は扇状地で水はけがよく、寒暖差があることからおいしい果物が採れる果樹栽培の盛んな地域です。
市内の千曲川にかかる村山橋の河川敷に、村山早生ごぼうの畑が広がっていました。
曇天空の村山橋
この地域で栽培される村山早生ごぼうは白くて柔らかく、アクが少ないのが特徴。 4~7月に種をまいて、9~12月にかけて収穫します。
ごぼうは収穫まで120~150日程度かかりますが、村山早生ごぼうは100~120日で収穫できる、名前のとおり早生のごぼうです。
繁った葉の下に、ごぼうが根を張っています
「昭和22年に東京から持ってきて、改良を重ねて育ててきた。ここの土が向いているんだよ」と「村山早生ごぼう生産組合」の黒岩正勝さんは言います。
村山早生ごぼうは現在に至るまで、ほかの品種とは一切交雑しておらず、栽培しはじめた当時のDNAをしっかり受け継いでいるそう。生産者が守り、受け継いできたということですね。
河川敷のどこでもいいわけではなく、この一角が一番よく取れるのだそう。
一本一本、人の手で。いざ収穫!
早速、収穫の様子を見せていただきました。
わさわさ繁る葉っぱの下、土中深く根づくごぼうを掘り出します。柔らかい砂壤土を70〜80cmほど掘り、スコップで傷つけないよう収穫します。
葉っぱを取り除き、膝上が隠れるくらいの深さに掘り進みます
前屈みの作業が続きます
作業途中の様子。ものすごい「根っこ」感…
収穫まであと少し!
やっと収穫です
筆者も飛び入りで収穫させていただきました!(予定外だったので軽装備…後悔…)
見るからにへっぴり腰…本当に難しいんですよ!
土は柔らかくて掘りやすそうのなのですが、足場が悪くて狙ったところを掘削するのが難しく、同じところばかり掘ってしまう…。
「そろそろ抜けるかな?」と思い引っ張ってみると、予想以上に根を張っていて全然抜けない! でも、あんまり強く引っ張ると中で折れてしまうと冷や冷やして、思い切りできない!
重機は採算が取れないため使用しないそうで、一本一本、丁寧に人の手で掘り出していきます。
「掘ってみないと出来栄えはわからない。収穫して初めて『今年はいい出来だな』とか『ダメだったな』とかわかるんだ」と黒岩さんは言います。
いざ実食!
収穫したからには、やっぱり食べないと! 持ち帰った村山早生ごぼうを早速、調理してみました。
アクが少なく、生食も可能とのことでしたが、筆者の大好きな食べ方、コロコロごぼうにしました。
土を洗い流して、2cmくらいの輪切りにします。片栗粉をまぶして、多めの油で炒めます。ほどよく色がついたら、砂糖と醤油と酢にくぐらせて完成!
すごく簡単でおいしいので、ぜひお試しを!
土を取ってやると、白いボディがお目見え
切ってみると……確かに白い!
片栗粉をまぶしてこんがり炒めます。油は多めがおすすめ
砂糖2:醤油2:酢1のタレに絡めて!
柔らかく、くせがないため、食が進みます。
筆者はごぼう好きなので、あまり関係ないのですが(笑)、ごぼうが苦手という方にもお試しいただきたい!
ちなみに、取材時にいただいたごぼう茶もおいしかったです。ささがきしたごぼうを乾煎りし、水分が飛んでカラカラになったところで、塩を入れてさらに炒め、お湯を淹れていただきます。
ごぼうそのものの香ばしさが味わえて、すっごくおいしい!(しかも簡単)
伝統を守っていきたい!
村山早生ごぼうは伝統的に作られている品種で、昭和30年ごろの最盛期には生産農家は100戸を超えていましたが、果樹栽培が普及し、ごぼう農家は減少。
その後、品種の維持発展のため2007年(平成19年)に「村山早生ごぼう生産組合」を設立し、
同年に「信州の伝統野菜」に選定されました。
「信州の伝統野菜」とは
長野県内で栽培されている野菜のうち、「来歴」「食文化」「品種特性」という3項目について一定の基準を満たしたものを「信州の伝統野菜」として選定しています。
そのうち伝承地で継続的に栽培されている伝統野菜および一定の基準を満たした生産者グループ(生産者組織、農協、市町村など)に対し「伝承地栽培認定」を行っています。
(参考:長野県ホームページ「信州の伝統野菜~食べたら懐かしい風景がふんわり浮かびました~」)
「村山早生ごぼう生産組合」は現在9名のメンバーで活動していますが、そのほとんどが80歳を過ぎているそうです。
村山早生ごぼう生産組合のみなさん
直売会などでは、ごぼう目当てにやってくる人がいたり、売り切れてしまうほど人気の高いごぼうですが、後継者不足が大きな課題です。
「身体が元気なうちは続けて、この伝統野菜を絶やさず守っていきたい」と組合のみなさんが口々に仰っていました。
前回掲載した「松本一本ねぎ」もそうですが、伝統野菜は栽培地域が限定的だったり、栽培方法に手間がかかるなど、その生産量は減少の一途をたどっています。
ほかにはない味わいに加えて、歴史と伝統、生産者の努力を感じながら、冬の農産物をありがたくいただきたいと思います。