11月半ばも過ぎて、いよいよ長野の冬も本格化…寒さが増してまいりました。
寒さ厳しい長野県出身者は「寒さに耐性がある」と思われがちなのですが、生まれも育ちも長野県の筆者は、手足が冷えて眠れないくらい寒さに弱いです。
さてこの冬が始まるこの季節に旬を迎えるのが、信州の伝統野菜にも選ばれている「松本一本ねぎ」。
名前のとおり、松本城の旧城下町として知られる長野県松本市で栽培されています。
普通のねぎとはどう違うのか。その秘密をJA松本ハイランド管内の畑に見に行ってまいりました!
「松本一本ねぎ」って?
長野市に次いで県内では第2位の人口の松本市。その中心部から少し離れた神田に、整然と並んだねぎの畑が見えてきました!
真っすぐ伸びた松本一本ねぎ。土の下はどうなっているのでしょう…
この地で「松本一本ねぎ」を栽培する青木秀夫さんは、定年退職後に親の畑を継ぎました。青木さんの畑の様子を見せていただきました!
美しいカーブが最大の特徴
ねぎの品種群は「加賀群」「九条群」「千住群」と大きく3つに分かれます。
松本一本ねぎは加賀郡に分類され、あの有名な「下仁田ねぎ」や「加賀一本ねぎ」と同じ品種群に属します。寒さに強く、越冬できるのが特徴です。
真っすぐに伸びて整然と並んだ松本一本ねぎを、いざ収穫です。
青木さんとともに収穫作業をする息子の久仁永(くになが)さんが掘り出して、見せてくださいました!
おや?ねぎの様子が…
なんか曲がっているような…
やっぱり曲がってる!
収穫した松本一本ねぎの白い部分はきれいなカーブを描いていました。
じつは松本一本ねぎの最大の特徴が、このカーブ。もちろん規格外ではありません!
しかし、もともと曲がる品種ではありません。なぜ曲がるのか?そこには栽培方法に秘密がありました。
カーブの秘密は真夏の植え替え作業
なぜこのように曲がるのかというと、ほかのねぎにはない「植え替え」があるから。
9月に種をまき、4~5月に苗を植え、夏真っ盛りの8月中旬に植え替えを行います。
植え替えのとき、畝に対して斜めに立てかけて、そのまま土をかぶせます。そうすると、ねぎは地上では真っすぐに伸びますが、土に埋まった軟白部分に曲がりが生じるのです。
なぜこんな手間をかけるのか。そればズバリ「曲がることでストレスがかかって、甘くおいしくなるんです」
このひと手間(というには重すぎる作業ですが)が、松本一本ねぎたらしめているのですね。
指さしている部分は、植え替えたときに枯れた根。細かく伸びた根っこは植え替えた後に生えてきたものだそうで「植え替えの証だよ」と青木さんが見せてくれました。
ここまでお読みいただいた方はお察しかと思いますが、植わっていたねぎをすべて抜き、畝を掘り、一本一本植え替える作業はかなりの重労働。
JA松本ハイランドの保尊さんは、生産者とともに「松本一本ねぎ」を守り、広めることへの思いを次のように語ってくださいました。
「植え替えの手間や、近年の気象条件による栽培課題、作業の機械化が困難である点など、正直なところ栽培が容易な品目ではありません。信州の伝統野菜を後世に継承するために、市場に出回る一般的な長ねぎよりも有利販売ができる点を活かし、生産規模の維持拡大を狙い、推進しています」
箱詰めの際、真っすぐなねぎのようには詰め込めません
甘さが特徴の希少なねぎ、おいしい食べ方は?
こんなに手間ひまかけて育てた松本一本ねぎを、おいしく食べたいですよね!
ねぎ大好きな筆者がお土産にいただいたねぎを「薬味にして食べます!」と張り切っていたところ、「生食だと、このねぎのおいしさが発揮されないよ」とのこと。
松本一本ねぎのおいしさを最大限に味わうために最適なのは、加熱調理だそう。やわらかなねぎは熱することで甘みが増します。
青木さんのおすすめの食べ方は「切ってお皿に並べて、ラップをかけてレンジで5~6分チン。柔らかーく甘くなって、お酒が進んじゃうよ」とのこと。
鍋に入れるなら、すき焼きもおすすめだそうです。フライパンで軽く熱してそのまま食べるのも、ねぎ本来のうまさを味わえそうですね…。ということで、すき焼き風丼にして食べてみました!
ドンッ!
手前のこんがり焼いたねぎが松本一本ねぎ。家にあったねぎは刻んで薬味にしてダブルねぎ添えに。
外はこんがり、中がとろっと甘い松本一本ねぎは、甘辛く味つけした牛肉、そして卵と超絶マッチ!
「ありがとう…」食が奏でるハーモニーに自然と感謝の言葉が漏れ出ます。
松本一本ねぎのレシピはJA松本ハイランドホームページでたくさん紹介されているので、ぜひチェックしてみてください♪
伝統野菜の松本一本ねぎを守る青木さん親子
右から青木秀夫さん、息子の久仁永さん、妻の京子さん、そしてJA松本ハイランド職員の保尊さん
おまけ・松本一本ねぎの赤ちゃん
収穫と同時期、畑には来年の収穫のために植えた松本一本ねぎの苗がすくすく育っていました。9月に種をまいた苗は、なんとひと冬越します。
寒さ厳しい信州の冬を耐えて、来年は甘くておいしいねぎになぁれ♪