夏の定番野菜のひとつ、ズッキーニ。
ズッキーニは、もともとはイタリアンやフレンチなどに使用される西洋野菜として日本で栽培されるようになりましたが、クセのない味わいがどんな料理にも合うことから、今では一般的な家庭でも食べられています。
長野県はズッキーニの生産量全国1位※。長野県産ズッキーニは6月中旬から10月中旬にかけて出荷されます。
※2018年 農林水産省「野菜の作付面積、収穫量および出荷量」「野菜生産出荷統計」「地域特産野菜の生産状況」より
ズッキーニの成長速度にびっくり
長野県の北部に位置する飯山市は、県内トップの生産量を誇るズッキーニの産地です。
飯山市にあるJAながの みゆき ズッキーニ部会(以後、ズッキーニ部会) 副部会長の兼子 喜男(かねこ・よしお)さんの圃場にお邪魔しました。
兼子さんがズッキーニ栽培を始めたのは2000年。きっかけは水害によりご自身のアスパラを栽培していた農地が被害にあったことでした。
「木島平でズッキーニという珍しい野菜を栽培しているという話を聞いて、新しくズッキーニ栽培を始めようと思いました」(兼子さん、以下同)
飯山市で仲間4名とともにズッキーニ栽培を始め、2年間の試行錯誤の末に安定して栽培できるようになりました。
当時、イタリアンやフレンチで使用される高級食材としてズッキーニがほかの生産者の注目を集めたことと、飯山市で栽培が盛んであるアスパラガスが連作障害により収量が少なくなり作付けが困難になったことから、アスパラガスからズッキーニに栽培を切り替える生産者が増えました。
今ではズッキーニ部会には100名ほどの生産者が加盟しています。
兼子さんはズッキーニの生産歴22年の大ベテラン。奥さまとふたりで800本のズッキーニを栽培しています
きゅうりのような見た目のズッキーニですが、じつはカボチャの仲間。授粉から3日後の未熟果(種が完全にできあがっておらず、種の外側が固くなっていない実)を食べます。
成長速度がとても速く、4日後には規格外の大きさになってしまいます。
「規格外になると皮と種が固くなります。出荷できなくなるので、取り残さないように注意しないといけません」
授粉はすべて手作業。雄花から取ったおしべを雌花につけて授粉します
ズッキーニの雄花(左)と雌花(右)
授粉から2日後。翌日に収穫する予定のズッキーニ
雌花の大きさと比べるとズッキーニが大きくなったことがわかります。
たった1日収穫が遅れただけで出荷できなくなるなんて大変です。
デリケートなズッキーニは丁寧に収穫します
収穫の際はズッキーニを根元から「アスパラ鎌」という小さな鎌で切り取ります。ズッキーニは皮が傷つきやすいデリケートな野菜であるため、1本ずつ丁寧にコンテナに入れます。
取り残しがないようにしっかりと探します
ズッキーニの雌花は手で摘みます
アスパラ鎌で余分な茎を切り取ります
しゃがんだり立ったりをくり返して1日500本ほど収穫します。流れるようなスピードで次々とズッキーニを収穫する兼子さんですが、「腰にくる大変な作業ですね」と苦笑いしていました。
ズッキーニは少し爪があたっただけで削れてしまうほどデリケートな皮をしています。食べるときは柔らかくておいしいのですが、収穫・梱包の際は慎重に取り扱わなければなりません。
手間がかかっているのですね。
ズッキーニのおいしい食べ方
収穫後のズッキーニ。中から水分がにじみ出てきます
ズッキーニは、生のままサラダや浅漬けにしてもおいしく食べられます。
一般的には炒め物や揚げ物、スープなど加熱して食べることが多く、油と合わせると香り豊かになります。
ズッキーニと豚肉の炒め物。油との相性が抜群
ズッキーニ農家がよく食べる「ズッキーニの味噌汁」。どんな具材でもおいしいですが、鯖缶も合います
「ズッキーニはクセがなく、どんな料理にも合います。低カロリーでカリウムも多く含まれるので身体にいいですよ」
水をたくさん飲む夏には、むくみ防止効果のあるカリウムが豊富に含まれるのは魅力的ですね。
飯山市産含め、長野県産のズッキーニは全国の市場に出荷されます。お近くのスーパーなどで探してみてください。