青い光に包まれた大きなきのこ……
こちらは「黒あわび茸」というきのこです。
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長野県北部に位置する中野市は、えのき生産量全国一など、きのこ栽培が盛んです。
中野市にある「小林きのこ園」を訪れました。小林きのこ園では年間でえのきをおよそ30万本、黒あわび茸は15万本を出荷しています。
紹介してくれたのは園主の矢岡 太一(やおか・たいち)さんです。
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おいしい「かさ」を作るために
「当園では、もともとえのきの栽培をしていました。えのきは15℃で生育をスタートして、収穫するころには5℃になります。低い温度で生育を行うため、夏場に冷房代がかかります。そこで、より高い20~24℃で生育ができ、暖かい季節でも生育しやすい黒あわび茸を5年前から栽培し始めました」(矢岡さん。以下同)
黒あわび茸はヒラタケの仲間で、高温多湿の亜熱帯地域で採れます。
中野市以外では沖縄県、和歌山県、滋賀県で栽培されていますが、全国的に栽培量は少ない珍しいきのこです。表面が黒から赤褐色で、あわびを思わせるコリコリとした食感から、黒あわび茸と呼ばれるようになりました。
「黒あわび茸は立派な『かさ』が特徴です。肉厚でしっかりしているので、食感がいいのははもちろん、包装の最中に壊れにくいのもいいですね」
立派な「かさ」を作るためには、温度、湿度、光の調節はもとより、きのこが呼吸をしやすいように換気するーといった徹底的な管理が必要です。
温度、湿度、光の調節を行う装置
「蛍光灯などいろいろ試した結果、青色LEDを光源にすることにしました」
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加湿器で部屋の湿度を90%以上に保ちます。
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青く薄暗い様子はSF映画の一場面のようです。
栽培されている黒あわび茸をのぞいてみましょう。
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黒い粒々が黒あわび茸の芽です。
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およそ5日後に、きのこらしい見た目に!
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およそ10日後には収穫できる大きさになります。立派な「かさ」ですね!
黒あわび茸のおいしい食べ方
「黒あわび茸は油との相性が抜群。歯応えがあり、旨みが強いので、料理の主役になれるきのこです。おすすめの食べ方はアヒージョです」
きのこ独特のクセがないので、きのこが苦手な方でもおいしく食べられるという声を聞くそうです。
黒あわび茸のアヒージョ
「年中生産していますが、高温多湿を好むきのこなので、夏場に生産が盛んになります。これからの季節にたくさん食べてもらえたらと思います」
黒あわび茸は現状では飲食店での取り扱いが主で、スーパーにはあまり並びません。
「うちの黒あわび茸はJA中野市『いきいき館』で販売しています。料理はしないけれど黒あわび茸は気になるという方は、黒あわび茸の佃煮も販売しているので、いきいき館に行った時は探してみてください」
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矢岡さんは兵庫県のご出身。大学卒業後、民間企業に就職して7年間、IT関係の仕事していました。「経営に携わりたい」という思いから奥さまの両親が経営する小林きのこ園に転職。現在は奥さまとそのご両親とともにきのこの栽培をしています。
「初めは1ヵ月くらいずっと筋肉痛でしたね。きのこの培地がたくさん入ったコンテナを持ち運ぶなど、意外と力仕事が多いんですよ。今年で就農して8年目。ようやく管理、経営、労務なども任せてもらえるようになりました」
きのこ“工場” ですが、体力も必要なのですね。