ご存じですか?畑で育つ陸(おか)わさび

お刺し身に欠かせないものといえば、おしょうゆ、そして「わさび」!日本人ならば誰もが口にしたことがあるはずの薬味です。


じつは、長野県はわさびの生産量が全国
1位!

参考:特用林産物生産統計調査 確報 令和4年特用林産基礎資料

県内でも安曇野市はわさびの生産が盛んで、たとえば「大王わさび農場」は、広大なわさび畑の景色が目にも涼しい観光地でもあります。

noutiku2-01-20240807大王わさび農場のわさび田(2023年10月撮影)

わさびと聞いてイメージするのは、おそらく「水わさび」が一般的。このように流水で育つイメージが強いですよね?

noutiku2-04-20240807よく見る水わさび。根茎をすりおろして薬味に使う(提供:マル井)

今回ご紹介するのは、水の中ではなく、土の中で育つ「陸(おか)わさび」です。畑育ちのため「畑さわび」とも呼ばれます。

「水わさび」と「陸わさび」は同じ品種

水わさびと陸わさび、どう違うのでしょうか。

結論から言ってしまうと、じつは同じ品種。栽培される環境が異なるだけなのです。

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わさびといえば豊かな清流が育む「水わさび」。「沢わさび」とも呼ばれます
 (提供:マル井)

根茎の利用を主体として栽培される水わさびに対し、陸わさびは主に加工のための、葉や茎が主体の栽培となります。

noutiku2-05-20240807採れたての「陸わさび」

ちなみに、同じくわさび呼ばれるものに「西洋わさび」があります。

わさび大根、あるいはホースラディッシュとも呼ばれますが、こちらはまったく別の野菜で、根茎はなく、白い根っこを食用とします。


noutiku2-23-20240807西洋わさび

西洋わさびも、すりおろすとわさびに似た辛味成分が出るため、陸わさびや水わさびの代用として、緑色に着色してチューブわさびの原料とします。

この西洋わさび入りと区別するために、陸わさびや水わさびを使った製品には「本わさび入り」などの標記が入っている場合があります。店頭で見比べてみてください。

陸わさびの生産現場

今回はJAあづみ管内の長野県安曇野市で陸わさびを栽培する丸山啓吉(まるやま・けいきち)さん、アイコさんご夫妻の畑にお邪魔しました。

noutiku2-06-20240807ビニールハウスいっぱいに繁る陸わさび

取材当日は収穫の真っ最中で、ひと株ひと株大きな陸わさびを啓吉さんが鎌で刈り取っていました。

noutiku2-07-20240807陸わさびを収穫中の丸山啓吉さん

noutiku2-08-20240807収穫は鎌で

啓吉さんが刈り取った陸わさびを、アイコさんが土を払い、枯れた葉を取り除きます。

noutiku2-09-20240807ビフォー

noutiku2-10-20240807アフター(背景にもアフターの陸わさびがたくさん)

気になるのは、やはり味。

「やめたほうがいい」と苦い笑いで止められましたが、百聞は一見に如かず。一見は一口に如かずということで、茎の部分を少しかじってみました。

おお!茎からもツーンとした、あのわさびの味がする!

すかさずアイコさんがジュースをくださり、感謝することしきり…。

noutiku2-11-20240807約80cm

ビニールハウスの中で元気いっぱいに育つ陸わさび。

「今年は特に大きい」と啓吉さん。

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JAあづみのイケメン広報さんが畑に立つと、腰まで埋もれてしまうくらい!

noutiku2-13-20240807収穫し、土を払った陸わさびをコンテナに積み込みます

陸わさびは10月に定植して、翌年の5月下旬から7月上旬にかけて収穫します。つまり、定植から収穫までが約8ヵ月。

対して水わさびは栽培方法にもよりますが、栽培環境がかなり限定されるうえ、収穫まで1~2年もかかります。

これが陸わさびを栽培する大きな理由のひとつです。

以前はセルリーを栽培していた丸山さん夫妻ですが、体力的に厳しくなったため断念。空いたビニールハウスを活用しようと、陸わさびの栽培を始めました。「作りやすくて手がかからないところがいい」とふたりは言います。

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2アールのビニールハウスをふたりで切り盛りする丸山さん夫妻。就農30年以上のベテランです

収穫した陸わさびはどうなる?

収穫した陸わさびは、JAあづみが連携する安曇野市のわさび加工会社・マル井が全量を買い取ります。

茎や根茎の部分は、おもに加工されて刺し身用の小袋やチューブタイプ製品に。葉は菓子原料になるそうです。

noutiku2-17-20240807葉(提供:マル井)

noutiku2-18-20240807茎(提供:マル井)

noutiku2-19-20240807-1根茎。水わさびに比べると小ぶり(提供;マル井)

わさびは日本原産の農産物です。平安時代から香辛料として用いられ、私たちの身近にある薬味ですが、全国的に生産量が減少しているのが現状です。

しかし陸わさびならではのメリットがあります。

・超促成栽培で寒さに強い
・農閑期を中心に栽培できて、労力負担が少ない
・冬場のハウスの加温が不要で、生産コストを抑えられる

これらを生かしながら、JAあづみはマル井の協力のもと、わさびの収穫量アップ、そして安曇野の産地化に取り組んでいるのです。

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日本料理だけでなくお肉などにも合うわさび。海外人気も高まっているそう(マル井ホームページより)

回転寿司やそばのお店に必ず置いてある小さなチューブわさび。ペースト状になった状態からはなかなか想像できませんが、その原料の姿と生産地に思いを馳せていただけたらうれしいです。

おまけ・わさびの花は食べられる!

3月頃に花を咲かせる陸わさび。アイコさんが「花も食べられるよ」と教えてくれました。

noutiku2-20-20240807小さな白い花を咲かせます(提供:マル井)

少量のお湯と砂糖で蒸らして、おひたしにするのだそう。時期になると直売所に並ぶこともあるので、ぜひお試しください。

わさびって、まるごと全部食べられるんですね♪

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

おとうふ

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