この赤いスイートコーンを知っていますか?
トウモロコシの中でも特に甘い品種を「スイートコーン」と総称します。最近、テレビ番組で取り上げられて人気が高まっていますが、黄色だけでなく白色や赤色のものもあります。
この赤いスイートコーンは「大和ルージュ」といいます。奈良県の「大和種苗」が開発し、2022年から種子が販売され、近年から全国的に栽培が始まった品種です。
今回は飯田市で「大和ルージュ」を栽培する寺畑(てらばた)農園の次期園主である田畑優奈さんを取材しました。寺畑農園は1684(貞享元)年から続く農家で、田畑さんは夫の実家である農園を継ぎ、いずれ16代目の園主となります。
寺畑農園の16代園主予定の田畑優奈さん(上)。義母(右)と義祖母、3人合わせて「もろこしパフューム」です!後方にぼんやり写っているのが義祖父
「大和ルージュ」とは?
「大和ルージュ」の何よりの特徴は、濃赤紫色のもちもちした実。糖度は16度程度の、いわゆるスイートコーンです。
種をまいてから100日程度で収穫できる晩生種です。また、地球温暖化による暑さに対応するために作られた品種で、かなり高い気温に耐えることができるそうです。
赤い宝石のような実がキラキラ光る「大和ルージュ」
収穫作業に密着!
トウモロコシの収穫は、朝4時からスタートします。トウモロコシは夜の間に、実に糖分をためるため、朝早く収穫すると糖分がたくさん詰まっているのです。
4月に植えたものは8月に収穫し、7月に植えたものは9月くらいに収穫します。
「大和ルージュ」は全長3メートルにもなります! 収穫はとても大変で、寺畑農園では田畑さんが収穫を担当しています。
収穫するトウモロコシは、しっかり実の張っているものを選びます。穂先が「すかすか、ぼかぼか」していると、収穫を翌日に見送ることもあるそうです。
株元からトウモロコシを引きはがし、横にパキッと折る感じで収穫します。筆者も教えてもらいながら、やってみました。
田畑さんから収穫の仕方をレクチャーしていただきました!
そして、収穫が終わったら選果の作業に入ります。スイートコーンの頭の方から虫が侵入して実を食べていることがあるそうです。そのため、収穫する際もそうなのですが、出荷準備をする際にも念入りに確認してから出荷します。
出荷準備にも潜入させていただきました!
寺畑農園では「大和ルージュ」だけでなく、黄色の「しあわせコーン」と白色の「白いおおもの」も合わせ、スイートコーン3種を栽培しています。
筆者はこの日は3種を試食してみましたが、品種ごとに甘みが異なり、とてもおいしかったです。
手前から「大和ルージュ」「白いおおもの」「しあわせコーン」
おいしいトウモロコシの選び方
品質の良いトウモロコシをどうやって選んだらよいか。筆者も気になったので、田畑さんに聞いてみました。次の3つのポイントを意識すると、おいしいトウモロコシを選べます!
1 ひげの数が多くて茶色くなっている
まず、ひげの状態を見ます。ひげと実の数は一緒なので、ひげがふさふさしているものを選びましょう。そして、ひげが茶色くなっているものは実が完熟している証拠でもあります。
2 皮が鮮やかな緑色をしている
トウモロコシの皮は、淡い緑か、鮮やかな緑色のものを選びましょう。皮が茶色く変色しているものは、鮮度が落ちているので避けたほうがよいです。大和ルージュの場合は、皮に赤く色がついている場合もあるそうですが、問題ないとのこと。
3 先端まで実がつまっている
先端の太さをチェックすることが重要です。トウモロコシは鮮度が落ちると先端の実がしぼんでくるので、先端までふっくらしているものを選ぶと良いそうです。
「大和ルージュ」の簡単レシピ
次に、田畑さんから「簡単レシピ」を教えていただきましたので、ご紹介します。
1 大和ルージュのトウモロコシごはん
大和ルージュとお米を一緒に炊くと、紫色のきれいなごはんになるんです!
2 大和ルージュのバターおにぎり
1のトウモロコシごはんが炊き上がったらバターを入れます。
取材時に「朝ごはんにどうぞ」といただきました!まろやかで、とてもやさしい味でした
3 レンチンしてニンニク塩をかける
大和ルージュを4等分して、電子レンジで4分加熱し、ニンニク塩をかけて完成!
ニンニク塩が良い役割をして、とてもパンチのあるおいしさでした!
そのほかにも「天ぷらや炒め物に入れるとおいしいよ!」と教えていただきました。
また、大和ルージュに含まれるアントシアニンは水溶性なので、ゆでると色素がお湯に溶け出て赤くなり、実は黄色くなります。そのままの色を生かしたい場合は、炒め物や電子レンジで加熱して食べるのがおすすめとのことです。
夫の実家を継いで16代目園主に
寺畑農園は1684(貞享元)年から続く農家(なんと340年前!)で、スイートコーンのほか、繁殖和牛の堆肥を使って育てた野菜を出荷しています。
田畑さんは大阪でアパレルの仕事をしていましたが、結婚を機に飯田市に移住し、2023年11月から夫の実家である寺畑農園を継ぎました。
「お客さんからおいしいと言ってもらえることが一番のやりがい。0から1を作るのに毎日精一杯ですが、日々農業から学ぶことがたくさんあるので楽しいです」と田畑さんは語ってくださいました。
今回、紹介したスイートコーン「大和ルージュ」は、長野県内でも生産が少しずつ始まっています。JAみなみ信州の直売所とオンラインショップで販売しているので、この時期だけの味を、ぜひ堪能してみてください。
直売所
JAみなみ信州およりてファーム
JAみなみ信州りんごの里
オンラインショップ
terabatafarm
おまけ
寺畑農園では、野菜の生産だけでなく畜産にも取り組み、冬には市田柿も生産しています。出荷できない野菜は牛にエサとして与えることで、廃棄物のロスをなくし、環境に配慮した農業を展開しています。
牛たちはエサの時間になると「エサをください~」と叫んでいました。