いよいよ夏本番。夏といえば海やプール、花火、お祭り…そして絶対に欠かせないのが、すいかでしょう!
ドンッ!!!
すいかといえば、緑と黒のシマシマの皮を切ると、赤い果肉があらわれるイメージですが、果肉の黄色いすいかを食べたことはありますか?
すいかの名産地・松本市波田で栽培される「金色羅皇」
黄色いすいかは一般的に、赤いすいかに比べて味が薄いといわれますが、甘みをとことん追求して開発された「金色羅皇(こんじきらおう)」という品種があるのです!
テレビ番組「マツコの知らない世界」で紹介され、すいか界ではニューフェイスながら地位を築きつつある品種ですが、栽培が難しく、かなり希少なのが現状です。
この「金色羅皇」を栽培するのが、長野県内きってのすいかの名産地、松本市波田にある「南原ファーム」の杉山彰英さんです。
南原ファームでは「信州の黄昏」という名で販売しています
波田は、火山灰土壌がすいか栽培に最適で、上高地から流れ出る清流・梓川から引き込んだミネラルたっぷりのおいしい水、そして全国有数の昼夜の温度差と日照量が、甘味とシャリ感のあるすいかを生み出しています。
すいかを収穫するのは6月下旬から10月くらいまで。
朝4時半からはじまる収穫現場を半日密着取材しました!とにかくやることが多く、休む間もないという印象でした。
午前4時半の松本市波田。夢のような色合いの空ですが、当然いつもは夢の中にいる時間帯…
フル稼働!すいか農家の1日
朝4時半、収穫開始。涼しいうちに収穫を行わないと、中身がだめになってしまうそう。
日よけの白いシートをはがしながら軸からすいかを切り離します
収穫したすいかは、ボールのようにパスしてトラックに積んでいきます。
ひと玉は平均8~9キロあります。たまーに落としてしまうとのことですが……私が拝見した限りでは落とさなかったです。すごい!
ビーチボールではありません。本物のすいかです
6時頃、交配&JA出荷。花が咲き始める朝の6時頃から交配の作業。当日咲いたおしべの花粉を、同じく当日咲いためしべに受粉させ、実をつけさせます。
当日咲いたおしべの花粉を…
めしべに受粉させていきます。めしべの下にはすいかの赤ちゃんが!
受粉作業を見せていただきました
畝にある花を一つひとつ手作業で受粉させていきます。いつ受粉させたのかわかるよう当日に咲いたおしべとめしべを交配し、色をつけていきます。気の遠くなる作業…。
別働隊はこの間、前日に荷造りしたすいかをJAに出荷しに行くそうです。
9時頃、荷下ろし。直売・ネット通販、・JA出荷のために、収穫したすいかの泥をふき取って、重さを量り、等級ごとに仕分けします。
南原ファーム直売所の看板犬こうめちゃんも、しっかりすいかをチェックしています
10時頃、再び畑での作業。収穫を終えた後も、次の収穫のため、すいかのつる引き(横芽を間引く作業)や、実ったすいかの下にお皿を引く作業などが続きます。
すいかは分岐する芽を順番に、親づる・子づる・孫づると呼びます。このうち、子づるにすいかを実らせますが、どんどん伸びてくる孫づるを取らないと、栄養が実に行きわたりません。こうした地道な作業が秋頃まで続きます。
13~15時頃、畑で作業の続きをします。
15時頃~18時、箱詰め。明日の出荷のため、今日収穫したすいかの出荷準備を行います。
「金色羅皇」は栽培が難しい
畝ごとに異なる品種を植え、畝ごとに収穫していきますが、金色羅皇の畝は、ほかに比べて割れた実がたくさんありました。
ぱっくり割れてしまった実
「金色羅皇は割れやすくて、栽培が難しい」と杉山さんは言います。皮が固いため、雨が降った時に影響を受けやすいのだそう。
「1~3割が割れてダメになってしまう。他の品種は裂果があんまりないんだけど」
カミソリでついたような小さな傷が市場に出した時に裂果の原因となるため、注意深く確認し、割れの原因になるような傷があれば、あきらめなければなりません。
裂果してしまった実から、黄色い果肉がのぞきます
収穫中、大きく育った金色羅皇の実に小さな傷を見つけた杉山さんが「あっ、こればダメだ…せっかくこんなに大きくなったのになあ」とつぶやく姿が印象的でした。
魅惑の黄色すいか「金色羅皇」
さて、お待ちかねの黄色すいか「金色羅皇」をゲット!
半分に切った「金色羅皇」。大きさ・重さも十分、黄色が濃ゆい!
特徴は、とにかく甘い・種が少ない・皮が固い・実が固く、崩れにくい、以上のことが挙げられます。
いざ実食!
切ってみると皮が固い!今までのすいかに比べても明らかに硬さが違います。切り分ける際には気合いとお手伝いが必要かも。
食べてみると……甘い! そして実がしまっていて食べ応えがあります。
今まで食べた赤いすいかは水分多めで、口に含むと実がほどけていくような食感で、ジュースを飲んでいる感覚に近いのに対し、この金色羅皇は、まさにスイーツです。
すいかは冷やしすぎると甘味を感じにくくなるため、冷蔵庫から出してしばらくしてから、というのが一般的なおすすめですが、金色羅皇に関しては「ギンギンに冷やすのがおすすめ」と杉山さん。
「普通のすいかは水分補給になるけど、これは甘くて逆に水が欲しくなっちゃうかもね」とのこと。
心がけるのは安全安心のすいか栽培
杉山さんの「南原ファーム」では、1990年から30年以上、除草剤を使用わず、化学農薬や化学肥料は極力減らしています。
きっかけは、双子の息子をすいか畑に連れて行った時のこと。ハイハイする二人が手にするものすべてを口に入れる様子を見て「除草剤は使うまい。自分が作るものは安全でなければならない」と決心したそうです。
栽培は大変ですが、「食べた人の喜ぶ顔を思い浮かべながら作業する」という杉山さん。そんな父の背中を見て育った息子たちは、今では一緒にすいか作りに励んでいます。
社長の彰英さん(左)と、写真右端と後列右が息子さん。みなさん仲良しで和気あいあい。そしてみんなイケメン!
波田のすいかを食べなきゃ信州の夏ははじまらない!
甘味たっぷりのとっておきスイーツなすいか「金色羅皇」には、生産者の努力とこだわりがたっぷりつまっています。
今年の夏は信州のすいかを味わってみませんか。ひと口たべれば幸せいっぱい。すいかの概念が覆るかもしれませんよ。