2025年4月18日公開の劇場版「名探偵コナン隻眼(せきがん)の残像(フラッシュバック)」は、長野県の野辺山高原が舞台です。
野辺山エリアの紹介記事はこちら
八ヶ岳山麓東側に広がる野辺山高原はおいしい牛乳の産地であり、JA長野八ヶ岳の子会社である牛乳メーカー「ヤツレン」が手がける「ポッポ牛乳」は野辺山牛乳の一大ブランドです。
そしてポッポ牛乳は、牛乳工場の近くにある酪農家から届く新鮮な生乳で作られています。品質と安全・安心にこだわる酪農家を訪ねました。
野辺山は人にも牛にも良い環境
野辺山高原で酪農を営む二ツ山牧場の吉澤克次(かつじ)さんは18歳で就農し、現在は約150頭の乳牛(ホルスタイン種)を飼育しています。
吉澤克次さんと、茶色い牛がジャージー種、黒い牛がホルスタイン種
「ホルスタインは暑さが苦手。野辺山高原は標高が1300mと高く、気温は北海道並みに低く、冷涼な気候だから牛が過ごしやすい場所です」(以下、吉澤さん)
白黒模様の「THE乳牛」のイメージ、ホルスタイン種
「野辺山は空気も水もきれいで、牛はもちろん人も過ごしやすいところ」と吉澤さん。「牛乳の主成分は当然水ですから、おいしい水で育てば牛乳もおいしくなります」
吉澤さんが飼育するのはホルスタイン種がメインですが、離農した生産者から譲り受けたジャージー種も4頭います。「ジャージーの方が人懐こくて温厚で扱いやすいかな。好奇心旺盛でかわいいね」
つぶらな目がかわいいジャージーさん
一緒に取材に来たJA長野八ヶ岳の広報担当、田村さんに興味津々!
高原野菜の産地だからできる耕畜連携
吉澤さんは、牛のエサとなる牧草は化学肥料を使わず、すべて自分で作っています。
「野菜農家さんに畑を借りてエサになる牧草を作っています。ここは高原野菜の産地なので、フンは堆肥として使ってもらいます」
粗飼料(牧草)
収穫した牧草はロール状にして、水に濡れないよう保管されます
野辺山高原は高原菜の一大産地で、特にレタスや白菜の栽培が盛んです。長野県はレタスが全国1位、白菜が2位の生産量を誇ります。
レタス畑の様子(写真提供:JA長野八ヶ岳)
「野辺山で酪農をする一番のメリットは、野菜農家さんとともに耕畜連携ができること。輸入の牧草の値段が高くなっているなか、野菜農家さんの協力で粗飼料(牧草)は自給自足ができている。地域に生かされていると実感します」
牛に無理をさせない自給自足のエサ
吉澤さんの飼育する牛の1日の乳量は、ホルスタイン1頭あたり約26kg。一般的なホルスタイン種の1日1頭あたりの乳量は30kg前後であるため「ほかの生産者に比べたら乳量はかなり少ない」と吉澤さん。
本来、牛が自分の子どもに与えるお乳を私たち消費者はいただいています
その理由は、自給の粗飼料が主体であることにあります。
「輸入した濃い(エネルギー効率の高い)粗飼料だと、もっと乳量は増やせるけど、牛に負担をかけてしまう。ものすごい高カロリーなものを食べさせて、ガンガン働かせるイメージかな。うちは(自分で作った粗飼料で)カロリーを抑えて、健康的に搾っています。乳脂肪分が落ちることはなく、病気は少ないですね」
化学肥料を使わず、吉澤さんが栽培した牧草で育つ牛たち
「健康的に育った牛から搾る牛乳だからこそ、おいしい」という言葉に納得です。
経済動物としての乳牛の寿命を考える
みなさんは、私たちにおいしい牛乳を届けてくれる乳牛の寿命について考えたことはありますか?
生まれたばかりの子牛たち。好奇心旺盛でかわいい
考えてみれば当然なのですが、お乳が出るのは出産した雌牛のみ(人間も同じですね)。雌牛は生まれてから24か月程度で子どもを産めるようになります。そして吉澤さんによると、一生のうちに出産する頭数は2.7産。
雌の乳牛は、種つけされて出産し、搾乳される——そのサイクルを2.7回のお産でくり返します。
生物としての乳牛の寿命は10年以上ですが、経済動物としての寿命は5〜6年。高齢になると出産での事故が増えるため、その程度の年齢で乳牛は屠畜され、肉になります。
「乳牛の一生はとても短い。経済動物だから仕方ないけれど」と吉澤さんは言います。
牛が快適に過ごせるよう、牛舎は清潔に保たれていました
国産だからこそ安全・安心のシステム
牛の耳には「耳標(じひょう)」といって「牛トレーサビリティ制度」の個体識別番号が表記されたタグがついています。
耳につけられた耳標
この耳標に記載された番号によって「どこで生まれ、誰が育て、どこで屠畜されたのか」などが、肉になってもたどれるようになっています。
子牛の時点でつけられています
「ここまで品質管理しているのは世界でも珍しい。日本の畜産酪農の強みだと思います」。まさに国産だからこその安全・安心のシステムなのです。
安全に育った牛乳を安心して味わおう
資材高騰やコロナ禍の影響は酪農に深刻な影響を与え続け、現在、酪農家の件数は日本全国で1万件を切っています。10年前に比べると、大幅に減少しました。
5年、10年先に国産の牛乳が飲めなくなる日が来てしまうかもしれません。
学校給食にも供給される野辺山のポッポ牛乳
子牛とたわむれる吉澤さん
ヤツレンの野辺山牛乳は、吉澤さんを含む牛乳工場まで輸送時間30分以内の距離にある酪農家から届く新鮮な生乳で作られています。
そしてヤツレンで適切に管理された牛乳は、「ポッポ牛乳」としてブランドを築き、県内外で愛されています。

「当社の野辺山牛乳はとにかく、おいしさが自慢です。生産者のおかげで自信をもって売ることができる。野辺山の恵まれた環境と、酪農家の努力の賜物です」(ヤツレン営業部・青森課長代理)
写真左からヤツレン営業部 課長代理の青森さん、吉澤さん、JA長野八ヶ岳広報担当の田村さん
今回の取材は、筆者にとって国産(農)畜産物の安全・安心について改めて考えるきっかけになりました。みなさまにとっても、どうか同じでありますように。
お気に入りの1枚、ひょっこりジャージー
▼今回のヤツレン取材記事はこちら
愛されて50年!野辺山高原「ポッポ牛乳」はおいしさが自慢
ヤツレン公式ホームページ