長野県の北部に位置する北安曇野郡小谷村で栽培されている「信州おたり雪中(せっちゅう)キャベツ」。
名前のとおり雪の中で栽培され、とにかく甘いと評判で、栽培に手間暇のかかることでも知られる小谷村の特産品です。テレビ番組「青空レストラン」で2022年に紹介され、現在も人気が続いています。
今回は「信州おたり雪中キャベツ生産組合」の雪中キャベツ畑を取材しました。
「信州おたり雪中キャベツ生産組合」のみなさん
雪中キャベツはどこだ!?
雪中キャベツは、雪の中で熟成したキャベツが甘みを蓄え、みずみずしくシャキシャキとした食感が特徴です。
今年は147アールに2万500本の苗を植えました。8月に定植し、根がついたまま冬を越え、雪の下で2週間以上熟成させます。
さぁ、いざ収穫!なのですが、辺り一面雪に覆われていて、見えるのは動物の足跡のみ。どこにキャベツがあるのかまったくわかりません。
「誰が一番最初に見つけるか勝負だ!」と農家のみなさんは収穫の目印となる杭を確認し、担当位置を決めて一斉にスコップを使って掘っていきます。
えっ。この深さを手作業で掘るの!?
この日はもっとも深いところで約150cmの積雪がありました。一歩出しては足が埋まるので、なかなか前に進めません。「キャベツ出てきて~」と叫びつつ(笑)、最初のキャベツを見つけるまで、5分から10分ほど雪をかき分けていました。
収穫の際に気をつけるのは、キャベツを傷つけないようにすること。すべて手作業で収穫するため、1日50~100玉と収穫量は限られます 。
雪中キャベツは降り積もった雪の下で根を張り続けているので、通常のキャベツより1.5倍ほど大きく、重さは平均2㎏、大きいものだと3㎏もあります。
雪中キャベツはなぜ甘いのか?
会長の小池利治さんに今年の状況を聞いてみると「今年は降雪が早く、積雪量は多い畑だと2m以上と多かった」とのこと。
では、雪中キャベツは、なぜ甘いんですか?「雪の中は0℃ほどに保たれて、キャベツは身を守ろうと自分のでんぷん質から糖分を作り出すんです」
なるほど、キャベツが凍らないように糖分を蓄えるから、一般的なキャベツに比べて甘くおいしいキャベツになるんですね。
通常のキャベツは糖度4~5度くらいですが、小谷村の雪中キャベツは8度以上と甘さが際立っています。もっとも甘くなるといわれる芯の部分はエグミが少なく、すっきりとした甘さがあります。
断面を見ると、葉がぎっしり詰まっています
今年から品種改良を行った「夢舞台」という品種を栽培しています。病気に強く、より大きいキャベツができているそうです。
雪中キャベツのおいしい食べ方
生で食べる
切ってそのままいただきます。雪中キャベツの甘みを味わうには、やっぱりこれが一番!
ロールキャベツ
煮込む前にフライパンで焦げ目がつくくらい焼くと香ばしくなります。また、1時間くらい煮込むと味がしみ込んで、さらにおいしくなります。
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[材料]
雪中キャベツの葉…8枚
豚ひき肉…200g
タマネギ…1玉(小さめ)
卵…1個
塩、こしょう、ナツメグ…各少々
〇煮込み用ソース
水…カップ2(圧力鍋を使う場合はカップ1)
固形スープの素…1個
トマトジュース…200cc
塩…2g
ウスターソース…大さじ2
トマトケチャップ…大さじ1
オイスターソース…小さじ1
酒…大さじ2
はちみつ…小さじ2
ローリエ…1枚
[作り方]
1 キャベツの葉はラップをしてレンジで約2~3分温め、芯をそぐ(キャベツはシナシナにすると肉を包みやすい)。
2 タマネギはみじん切りにして、サラダオイル小さじ1をかけて混ぜ、ラップをしてレンジで2分半温める(みじん切りにしたまま、生でもOK)。
3 ボウルに豚ひき肉、2(温めた場合は冷ましてから)、卵、塩、こしょう、ナツメグを入れ、手でこねる。混ざったら8~10個に分けてまとめる。
4 1の手前に3をのせてひと巻きし、葉の左右を内側に折り込みながら巻き、爪楊枝で留める。
5 鍋に4の巻き終わりを下にして並べ、煮込み用ソースの材料を加えて中火で煮る。煮立ったら弱火にして、ふたをして30分~1時間ほど煮る。アクは都度、取り除く。
7 キャベツがやわらかくなったら火から下ろす。爪楊枝を外し、ローリエを取り除き、器に盛って完成。
雪中キャベツと豚バラ肉の酒粕ミルフィーユ鍋
甘みののった雪中キャベツに酒粕を入れた鍋で、身体の芯から温まります。
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[材料]
雪中キャベツ…1/2個(横に切った上側を使う)
豚バラ肉…300g
A|酒…300㎖、しょうゆ…大さじ2、みりん…大さじ4、味噌…180gm、塩麴…250g
昆布・かつお節のだし汁…1.4ℓ
塩…適宜
[作り方]
1 キャベツを横半分に切り、上半分を1枚ずつはがし、豚バラ肉と交互に重ねる。
2 1を5㎝幅に切り、鍋いっぱいに敷き詰める。
3 Aを混ぜて入れ、だしも加えて強火で5~6分煮る。
4 味をみて適宜、塩を入れ、ひと煮立ちしたら完成。
キャベツの芯の天ぷら
雪中キャベツは寒さに耐え、凍らないようにと糖分を増していくため、芯にいくほど甘みが強くなります。キャベツの芯の部分も捨てることなく、丸ごといただきましょう!
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[材料]
雪中キャベツ…1/2個(横に切った下側を使う)
衣|天ぷら粉…100g、水…180㎖
油…適量
[作り方]
1 キャベツを横半分に切り、下半分は芯のついたまま2㎝のくし切りにする。
2 てんぷら粉を水で溶いて衣を作る。
3 揚げ油を温め、キャベツを衣にくぐらせて揚げる。
揚げ油の温度は175℃くらい。3~4分ほど軽く焦げ目がつくまで揚げると、芯まで柔らかくなります。好みで天つゆや塩を添えていただきます。
最後に…
小谷村では2017年から生産者や村、JA大北などの販売組織が「信州おたり雪中キャベツ生産組合」を設立しました。「雪中キャベツ」のブランド価値を高め、産地の取り組みを発信しようと基準を定め、オリジナルのシールもリニューアルして、販売しています。
雪中キャベツの収穫は2月末まで。道の駅小谷や、JA大北の直売所と白馬村のA•コープ白馬店などで販売しています。見かけたら、ぜひ買って食べてみてください!
組合長の小池さんからのメッセージをどうぞ