家庭菜園でも人気のトマト。支柱に枝を誘引して栽培する「縦型栽培」が主流です。
今回は「水耕栽培水平放任」という、苗がまるで木のように大きくなり、果実のように実をつける栽培方法のトマトを紹介します。
「水耕栽培水平放任」って?
やってきたのは長野県南部の上伊那郡箕輪町にある信州トマト工房株式会社(以後、同工房)。代表取締役の唐澤金実(からさわ・かねみ)さんに話をうかがいました。
唐澤さんは42歳で脱サラし、お父さんから相続した農地で高糖度トマトの栽培を始め、平成30年に株式会社へ移行しました。現在、就農して25年。社員7人とともに、ハウス約35aで年間約43トンのトマトを出荷しています。
「『水耕栽培水平放任』という栽培方法では、水平に展開することで光合成が効率的に行われ、また水耕栽培の溶液の濃度を調整して、浸透圧により根から水をうまく吸えないようにして、トマトの糖分を高めることができます。東京のデパートで食べたフルーツトマトに感動して、栽培を始めました。」(唐澤さん、以下同)
液体は浸透圧が高い方から低い方に流れます。根から水分を吸い上げようとしても、浸透圧の高い溶液に液体が戻ろうとする力が強いため、トマトは水をうまく吸えなくなるのです。
高糖度なフルーツトマト。5月はさらに甘い
フルーツトマトは品種名ではなく、特別な栽培方法で作られた高糖度トマトのことです。糖度がどのくらいからそう呼ぶかは正式に決まっていませんが、一般的なトマトの糖度が4~6度ぐらいなのに対し、8度以上のものをフルーツトマトと呼ぶことが多いようです。
自慢のフルーツトマト「ルージュ・フルーツ」。ルージュはフランス語で「赤い」という意味
同工房の自慢のフルーツトマトが「ルージュ・フルーツ」です。その名前どおり真っ赤な完熟の状態で収穫し、トマトに多く含まれる赤い色素「リコピン」の含有量が一般のトマトと比べて5倍も多い※ことからこの名前になりました。 ※デザイナー・フーズ(株)調べ
糖度は10日に一度測ってチェックは入念に。この時、測ったものは糖度11.4度でした!
「トマトは夏が旬だと思っている人が多いですが、一番日照時間が多い5月が一番甘いトマトを収穫できるんですよ」
個体差はありますが、今の時期は特に糖度が高いのですね。
おすすめトマトの選び方・食べ方
おいしいトマトは、小ぶりでおしりに☆(星)型の線がみられるものです。
トマトのお尻から白い線が星型に伸びています
冷やすか、常温か。それはお好みで、ガブッと丸かじりしてください。ジューシーなので果汁にはご注意を!
冷え性の方には、切ってからレンジで20秒程度温めて食べるのもおすすめです。
試食させていただいたところ、果汁が多く、甘いのに加えて、旨味が強いことに驚きました。
「完熟状態で収穫すると、ビタミンやリコピン、旨味成分のグルタミン酸が多く含まれるといわれています。深みのあるおいしさでしょう」
おいしくって、身体にもいいなんて、最高ですね。リコピンには日焼け防止効果があるそうで、紫外線が気になるこれからの季節にたくさん食べたいです。
ルージュ・フルーツは例年3~7月中旬まで収穫できます。最近は母の日のプレゼントに購入する人も多いそうです。父の日(6月19日)のプレゼントには、まだ間に合いますね。
減農薬栽培にも力を入れています
同工房では、害虫(コナジラミ類)の天敵となる虫(ツヤコバチ)を放し飼いにするなどして、化学農薬をできるだけ使わないように工夫しています。
「減農薬で栽培しているので、安心して丸かじりしてくださいね」
最近はトマト栽培のほかに有機栽培も始めている唐澤さん。地元の小学校でも有機栽培の授業をしています。
「化学農薬に頼りすぎると、害虫の一生のサイクルは短いのですぐに薬物耐性のある害虫が出てしまいます。長い目で見たら、自然本来の仕組みを生かした防除が効果的だと感じています」
これからもおいしいトマトを育ててくださいね。