古代米とは、私たちの祖先が栽培していた、いわば「古代の稲の品種」が持っていた特色を色濃く残した稲のことです。
健康や美容効果に注目が集まり、ひそかに今、古代米の人気が高まっています。
今回はスキーなどで有名な白馬村の特産品である古代米「紫舞」の紹介です。
紫舞とは、標高約760mに位置する白馬村青鬼(あおに)地区で栽培されている紫米の商品名です。
道の駅 白馬HPより
鬼伝説が伝わる土地で紫米は育ちます
白馬村では米の生産が盛んなため、他品種の米と交配しないように、地理的に独立した青鬼地区で紫米が栽培されるようになりました。
ちなみに、「青鬼」という地区名の由来として、昔、隣の鬼無里村(現 長野市鬼無里地区)から追い出された鬼が青鬼地区にきていい鬼(善鬼)になった、という昔話があります。
(参考:『青鬼の民話4 岩戸洞くつと青鬼』より一部抜粋)
青鬼地区には伝統的な茅葺き屋根の建物があり、国の「重要伝統的建造物群」に認定されています。
その中のひとつ「お善鬼(ぜんき)の館」は一般に公開されている唯一の施設です。
茅葺き屋根(現在は鉄板被覆)の「お善鬼の館」。囲炉裏や厩を再現し、交流・体験施設になっている
提供:白馬村役場
青鬼地区の景観を守りたい
青鬼地区は農水省の「日本の棚田百選」に選ばれている名所です。提供:白馬村役場
紫米生産者の山本利光(やまもと・としみつ)さんの田んぼに伺いました。
2021年10月3日撮影
稲刈り前の様子
青鬼地区出身の山本さんは、子どものころから家の田んぼの手伝いをしてきました。
元々は白米を栽培していましたが、白馬村役場から紫米を栽培しないかと誘われ、平成4(1992)年から栽培を始めました。現在は3反(30a)の田んぼで紫米を栽培しています。
稲刈りをする山本さん家族ら
「現在は紫米の生産者はわたしを含めて2人だけです。年を重ねると栽培が大変になってきますが、生まれ育った棚田の景観を守るため栽培に励んでいます」
栽培してくれる方がいるおかげで、このきれいな風景を見ることができるのですね。
ちなみに紫米の稲を観察すると、白米の稲と比べて少し黒いことに気づきます。籾を剥くと紫色の玄米が出てきます。
紫米の稲
籾を剥くと、紫色の玄米(下)が出てくる
「ぬかの部分にアントシアニンが含まれているから紫色です。精米すると白いお米になるんですよ」
もちもちでおいしい「紫舞」
「古代米にもうるち米ともち米があるのですが、『紫舞』はもち米です。粘りのある食感でおいしいですよ」
白米(うるち米かもち米)1合に対して、「紫舞」大さじ1程度を混ぜて炊きます。
一晩水に浸水すると色がよく出ます。
炊き上がると全体が紫色になります。
「赤飯のような味なので、ごま塩を振って食べてください。おにぎりがおすすめです」
食べてみると、確かに赤飯みたいな味がします。赤飯は作る時に小豆を煮たりと手がかりますが、「紫舞」は白米に少し加えて炊くだけなので、簡単でいいですね。
紫米には白米に比べ、たんぱく質、ビタミンB1・B2、ナイアシン、鉄、カルシウム、マグネシウムなどが豊富に含まれています。また、色素のアントシアニンは抗酸化成分ポリフェノールの一種です。紫外線などのダメージから自らの体を守ったり、血管を保護し、動脈硬化を予防する働きや、老化防止・発ガン抑制にも効果があると言われています。
手軽に栄養が摂れるのもうれしいですね。
スーパーフードをお土産に
紫米を使用した加工品は、日本酒(白馬紫雲)や、そば、うどん、チーズケーキなど多方面にわたっており、販売もされています。
中でもおすすめなのが、長野県の郷土料理・五平餅を紫米とJA大北産の白米で作った「紫米五平餅」です。
甘じょっぱい味噌だれと相性抜群です。
栽培する風景を愛でるもよし、食べるもよし。食べておいしく、体にうれしい紫米。白馬村にお越しの際はぜひご賞味ください。
【「紫舞」や紫米五平餅を購入できるところ】
・道の駅 白馬
・JA大北農産物直売所ええっこの里
参考リンク:
・農水省ウェブサイト「古代米とは」