上松町特産品開発センター組合長の大橋さん(右)と寺田さん
米・菜種・ひまわり・オリーブにココナッツ・亜麻仁・アボガドと、最近はオイルへのこだわりを持つ方も増えましたね。「美肌も健康もオイルから」って、ヘルシー志向もここまで来たか~! とつくづく・・・。そこで今回は、信州で昔から栽培されていた「えごま」と「えごま油」に注目してみました。栽培方法や効能はもちろんのこと、手軽で効果的な食べ方も必見ですよ♪
注目度大のヒット商品「えごま油」
自然豊かな上松町
訪ねたのは、長野県南西部にある山間の上松町。中央には木曽川が流れ、中山道が走り、江戸時代から林業の町として栄えました。巨大な奇岩が連なる名勝「寝覚の床」や木曽駒ヶ岳、赤沢自然休養林などの豊かな自然は、観光スポットにもなっています。靄がかった幽玄な山々と木曽川を眺めれば、静寂の中でほかの町と違った時が流れているような感覚さえします。
「最近、俄然、注目度が上がってね、注文に生産が追いつかないほど」と話してくれたのは、上松町産の農産物を活用した商品を加工・製造・販売する「上松町特産品開発センター」組合長の大橋さん。
上松町でえごまを栽培し、地元産えごまを100%使用して機械圧搾法でゆっくり丁寧に搾った「生搾り」の「えごま油」を製造販売しています。
そもそも、えごま油とは、シソ科の一年草の植物「えごま」を搾った油のこと。なんと、縄文時代の遺跡からえごま種子が発見、なんて話もあるというから、日本古来の食材だったんですね~。シソ科というだけあって葉も花も実も、見た目はシソにそっくり。ただし、シソとえごまは同じ場所で育ててはいけない、とか。「シソと交配すると実が硬くなりすぎて油がとれないのよ」と、意外な事実も教えてくれました。
丁寧な処理できれいな生搾り油を作っています
えごま畑 写真提供:上松町産業観光課
もともと鳥獣被害もなく山間地で育ちやすい「えごま」。その栽培から収穫までをご紹介します。
ちなみに、「白」と「黒」があり、上松町では「黒」を栽培しています。
■5月下旬~6月中旬(地元では藤の咲く頃からとも)、20cm間隔で種をまく。3~4日で発芽、約一週間で生えそろう
■間引きを経て、6月下旬には移植と土寄せ(曇り小雨時や雨の前が植えつけには最適)
■7月中に摘心作業(8月では生育が遅れ穂が大きくならない)
■8月に枝が伸び、9月に出穂・開花
■10月下旬~11月初旬頃、霜が降りたら収穫。一番下の葉が黄色くなり、最初の穂が黒くなったら収穫時
■刈り取り後、圃場でそのまま葉が落ちるまで乾燥。早く乾燥させるためにハウス内でシートの上につるしたり、実を汚さないようにはぜ掛けする方法も
収穫後の乾燥 写真提供:上松町産業観光課
■脱穀。圃場にシートを敷いて、トタンにあてて実を落とす
脱穀 写真提供:上松町産業観光課
■篩いにかける(落ちきらない実をさらに落とす)
■天日干しの後、細かいゴミを除去
■水洗い1。ためた水に実を入れ、泥や小石など下に沈める
■水洗い2。目の細かいざるで、水がきれいになるまで流水でよく洗う。ここで油の透明度が決まる
■実をざるに移し、乾燥(カビが生えないよう風通しのよい場所で)
まさに自然そのままの味と輝き☆
搾る直前のえごま
搾る前に乾燥させる乾燥機
油を搾るには、22℃の乾燥機内で3~4日乾燥(この段階ではプチプチ軽い食感で美味しい)。専用のしぼり袋に実3kgを入れ、えごま専用の圧搾機で600kgの圧をかけて30分、小瓶(110ml)に詰めて完成です。黄金色に輝いたえごま油が約1リットルになりました。搾りたてを少しわけていただきました! 油にしては本当にサラリとしています。ほとんど無味無臭。さっぱりした中に遠くで香ばしさを感じるような・・・。これがまさに自然そのままの味なんですね♪
専用の絞り袋に入れる
次々と瓶詰されるえごま油
必須脂肪酸「オメガ3」が豊富
えごまを加工して、より付加価値を!
えごまは栽培しやすく軽量で、実をきれいにする細やかで丁寧な作業などが必要なことから、女性生産者に適した品目です。農産物の地産池消として直売からスタートした組合では、次第に「加工により付加価値を」との思いが強くなったといいます。地域の特産品である「五平餅」や「ほおば巻き」はもちろん、体によいとされるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸が豊富な「えごま」自身の効能を活かそうと、県の支援事業を使ってえごま油の圧搾機を購入しました。これが10年ほど前の話。今では、県内外からえごまを搾らせてほしいとの依頼まであるんだとか。さらにリピーターや口コミ人気で生産量が増え、原材料調達のために町内の農業者に種を無償配布し、栽培を依頼するまでになりました。栽培面積も徐々に拡大、えごまが地域振興作物になっただけでなく、遊休荒廃農地の解消にもなりました。
えごまの実
オメガ3脂肪酸とは、青魚で有名なDHA・EPA、えごまや亜麻種子などの植物油に豊富なα-リノレン酸などの脂肪酸の総称。必須脂肪酸として積極的に摂取したほうがよい油とも言われています。その効果は、血液をサラサラにし、動脈硬化の予防から中性脂肪・コレステロール値の低下、アレルギー抑制に肌の再生を促す美肌効果まで、さまざま。一緒にカロテン、ビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化物質をとるとさらに良いそうですよ。
上質なオイルで食べたい!
生産者オススメのお手軽メニュー
楽しそうに作業する大橋組合長さん(右)と寺田さん
大橋組合長さんと寺田さんに聞いちゃいました!
Q:こだわりのオイルを使った、オイルが主役! ともいえるオススメの食べ方は?
A:クセがないので何にでもあいますよ☆
いろいろありますが、簡単なものでは、野菜たっぷりのお味噌汁。食べる直前に小さじ1杯のえごま油をそのままちょい足し。野菜のビタミン(抗酸化物質)との相性抜群です♪
サラダのドレッシングに。さらっとしてクセもなく食べやすい。えごま油だけでなく、乾煎りして香ばしさを増したえごまの実も一緒に食べると、つぶつぶ食感も楽しいです。
五平餅やお団子の甘ダレに。乾煎りしたえごまをミキサーかすり鉢ですりつぶし、砂糖しょうゆで和えて。子どものおやつとして、長年地元で愛されてきた食べ方です。緑茶でのばすとビタミンもコクもアップ!
乾煎りされ香ばしい香りが広がるえごま
えごま油は使い方も重要。なんといっても熱に弱いオイルなので、そのまま使うことが大前提ですよ。また開封後は酸化しやすいので、早めに使い切ることも大切です。
森林の茶屋「よろまいか」で
オール上松町産のえごま製品や郷土食を
上松町特産品開発センターでは、予約注文でえごま油を販売しています。2016年3月現在、昨年予約分で既に品薄です。今年秋の収穫以降の注文となる可能性が高いため、お問い合わせの上、ご注文願います。
「よろまいか」にある囲炉裏
お品書き。4月下旬オープン予定
4月下旬からは、森林の茶屋「よろまいか」がオープン。油を搾った後に残る製粉したえごまや茎を無駄にしないように使用した、オール上松町産のドレッシングやタレ、五平餅にまんじゅう等も販売しています。ほかにも味噌や梅漬け・カブの甘酢漬け、ほおばの葉が大きくなる5月下旬からはほおば巻きといった季節の商品や、やまめ寒露煮定食もラインナップ。春の木曽路で、身も心もリフレッシュしてみてはいかがでしょうか?
JA木曽
上松町特産品開発センター利用組合