外食しておいしく感じないものはご飯ですね

不定期連載 いつまでも若いあの人に聞いた

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イントロダクション
mountain_country.jpg大自然に抱かれながら、およそ210万人が暮らす信濃の国――長野県。季節が変わるごとにみせる色鮮やかな風土や独自の食習慣の一端をこれまでも、当ブログマガジンでは紹介してきました。伝統や食を大切にする心は今でも脈々と受け継がれています。当然食習慣と健康には、大きなつながりがあります。そこで、気持ちが明るく前向きで健康であり、地域で存在感にあふれ影響力のある方々に、健康や食についてうかがっています。不定期連載「いつまでも若い人シリーズ」の今回は第2回目です。


自分を大切にして、いつも楽しみを求める

grandma_aizawa_2.jpg長野県の最西北に位置する小谷村は、白馬連峰を境に新潟県と接する県境の村。面積の約9割が森林という山村ですが、緑が濃くなるこれからは、夏の季語でもある"山滴る"という言葉がそのままあてはまります。夏山が青葉でみずみずしい様子を表す言葉です。みずみずしい緑に覆われた小谷村中土は、みんなが「村」という言葉を聞いて思い描く「日本の村」そのものでした。

今回は、そこで生まれ育ったという相澤つたゑ(あいざわ つたえ)さん(76歳)を訪ねます。玄関先で声をかけると、中から「どうぞ〜」と、はつらつとした声が返ってきました。昨年からはじめた民謡の成果も大きいようです。地元JA大北おたり支所女性部のグループ活動「めだかの学校」では料理や裁縫などの講師として若い世代にコツを伝える先生をしています。自宅裏の傾斜地にある段々畑での毎日の畑作業も健康の秘訣となっているそうです。

声にもハリがあって、とてもお元気。特別な健康法はありますか。

「これといったことはしていませんよ。みなさんと同じです。昔は民宿が忙しく、その合間に農業をやって、ご飯を食べる時しか座る暇がないほど、本当に大変でした。だから今は自分を大切に、楽しみを求めながらやろうと思っているだけです。民謡は去年からやっています。楽しみがないといけないと思ってね。マレットゴルフも好きで、畑の合間に泥がついたままでも行ってしまうほど(笑)」

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子供のころは何を食べていましたか。

「お米がそんなになかったからね。『ちゃのこ』(小谷村の郷土食で、そば粉と小麦粉、馬鈴薯を混ぜた粉で作ったおやきのようなもの)が主でしたね。でも今のように小麦もなくて、そのころはそば粉だけで作った皮だったから、食べるのが嫌でした。中には塩だけで味付けした甘くないあんこや、野沢菜が入っていて、これを毎日、ジロ(囲炉裏)で焼いて食べました。今でこそ、そばはごちそうになっていますが、当時は本当に嫌でした。そばを食べる時は、山ウサギでダシをとっていました。骨まで砕いてダシにして、皮はなめして着るものにして。無駄にするところはなかったね。飼っていた鶏をダシにすることもありました。ごちそうは、あわやきびの入ったお餅。お汁粉みたいにして食べる、あずきのおかゆはお餅がぽったりとしていて、おいしかったです」

小谷と言えば山菜が有名です。季節には山菜採りにも行きますか。

「お嫁に来るまでは、親が採ったものを食べていましたから、山菜採りは昭和33年にお嫁に来てからですね。当時はウサギのエサかと思うくらい、いっぱいありました。特に、中土のこごみはぬめりと甘みがあって小谷の中でもおいしいですよ。今は裏の畑に植えたこごみが増えて、春には20軒くらい、方々へ送ります」

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斜面にある畑の作業は大変ですね。

「昔は18枚の棚田があって、村の人たちと一緒に作業して『18枚の田んぼを植えた』なんて話したものです。今は何枚かを一緒にしているから楽なものですよ。傾斜を登り降りするから、いい運動だと思ってね。作っているものを数えたら黒豆や青豆、白豆を合わせて40種類くらいありました。朝5時に起きてご飯を作って、畑へ行って、会合があれば会合に出て、夕方涼しくなったら、また畑へ行ってね。夜は好きな洋服づくりをしたりね。民宿をしていたころは、その合間にお客さんの送迎もあって」

車も運転するのですね

「45歳の時に運転免許を取りました。不安と緊張で10日間は眠れなかったです。でも辞めるわけにもいかないから『やるしかない』と思ってね。そう思うと元気も出ます。免許を取ったばかりのころにはひとりで甲府まで行ったり。去年はどうしてもチューリップが見たくて富山県の砺波までひとりで行きました(笑)」

食事も元気の素になっていると思いますが、好きな食べ物はなんですか。

「野菜や魚、肉、なんでも食べます。血圧が低く、しばらく薬を飲んでいましたが、飲んでもあまり変わらないのでやめて、疲れたら休むようにしています。食べることは大事なこと。食べないと動けないですからね。特にご飯は力になります。夕方の農作業でも、もうひと頑張りしたい時には「ネコまんま」でもいいですから、ご飯を口にしてから畑へ行きます。時々、外食もしますが、外食でひとつだけおいしいと感じないものがご飯。なにより、わが家で育てて炊いたご飯が一番おいしいですからね」

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後記 とにかく好奇心が旺盛で、行動力も伴っている相澤さん。お茶と一緒にテーブルに並んだお茶うけは「小谷漬け」に「きゃらぶきの佃煮」「具だくさんのおやき」、「あられ」と手作りのものばかり。忙しい合間を縫って、漬物も料理も、反物や古い着物や使った洋服づくりもしています。「忙しいからなんでもできるのだと思います。やろうと思えば何でもできるんです。できないのではなくて、やらないだけだと思います」とさらり。株分けして増やした庭のアジサイもそろそろ見頃を迎えます。これを見るのも増やすのも楽しみなのだそうです。相澤さんには、すっかり元気をもらいました。

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第1回 わしの身体はこの山が育てたものでてきてる(長野市・臼井基規さん)

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