日本ワインに吹く新しい風vol.2:安曇野市天王原

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北アルプスを西側に仰ぎ見て広がる安曇野。その東の端に低く南北に連なる山々があります。山というより丘といったほうが似合うこの斜面は、池田町または安曇野市明科地区にあたり、良質なワインぶどうの産地として注目され始めています。
この丘でぶどうを栽培するとともに新たなワイナリーも建て、理想のワイン造りに挑もうという二人の若者がいます。このお二人に会いに安曇野を訪ねてみました。

注目され始めた、ワインぶどうを生む安曇野の丘

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晴れていれば正面に雄大な北アルプスが見られるのですが・・・

押野山という低い里山の、西に向かってなだらかに下る斜面は、ここ明科地区の人に天王原と呼ばれています。もともとは桑畑として使われていた耕作放棄地をなんとか生まれ変わらせたいという背景があり、気候も土壌もぶどう栽培に適していたことから、今では垣根仕立てのワインぶどうの木が美しく並ぶ新しい風景が広がっています。
ここに立つと眼下に広がる安曇野の平野部と、その向こうに屏風のように連なる雄大な北アルプスを一望にでき、この風景を見ながら育つぶどうたちがどんなワインに生まれ変わるのかと、ちょっとワクワクしてきます。

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この辺りのワインぶどう生産者は北隣の池田町と合わせて今や数十人にのぼり、「北アルプスワインぶどう研究会」という組織も2016年にできました。また、安曇野市・池田町・大町市エリアは2018年春「北アルプス・安曇野ワインバレー特区」にも認定され、「信州ワインバレー」の新しい注目エリアです。
ここで育ったぶどうは、今まで安曇野市の二つのワイナリーを中心にワインの原料とされてきましたが、天王原の畑に隣接したこの山麓地域としては初めてのワイナリーが、まもなく立ち上がろうとしています。

二人のプロが取り組む新たなワイン造り

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最高のコンビ。塩瀬さん(右)と斎藤さん

ワイナリー設立を計画しているのは塩瀬豪さんと斎藤翔さんの若いお二人。代表を務める塩瀬さんは広島で醸造学を学んだ後、別のワイナリーで9年の醸造経験があり、もはやベテランの醸造家といっていいでしょう。相棒の斎藤さんは今までソムリエのキャリアを重ねてきた上で、さらに3年間の醸造経験もあり、さしずめワイン目利きのプロ。同い年とはいえ、親族ではない2人による醸造所立ち上げは極めて珍しいのですが、別々のジャンルでプロとしての道を歩いてきた二人には、これから造り出す自分たちのワインのイメージがはっきりと見えているようです。
長野県では毎年のように新しいワイナリーが誕生していますが、塩瀬さんによれば「僕らのワイナリーは新規参入とはいえ、自分たちはすでにアマチュアではないんです。造りのプロとワインを見極めるプロが手を組んだ以上、長野県のワインの品質を落とさず、むしろレベルアップさせていくつもりです。自信はあります」と言い切ります。
目指すワインはどんなワイン? という問いに対して、二人の答えは「フィネス」。フィネスとは「洗練された」「上質な」「繊細な」という意味で、「けして価格的に高価でなくてもエレガントでバランスのいいワインは造れるはず」と二人は口をそろえます。「目指すワインが一致していたということが、一緒にやることになった一番の理由ですね」と斎藤さん。
二人のプロが造りだすワインはどんなものになるのでしょうか。期待は膨らみます。

ワイナリーの名前は「Le Milieu(ル・ミリュー)」と決めました。フランス語で「真ん中」を意味し、小手先に走らずワインの本質をまっすぐに貫いていこう、という志が伝わってきます。また、「自分たちが作ったワインが、だれかの大事な1本になればいい」という意味も込めている、とのお話もお聞きしました。

待ちに待った最初のワインは間もなく誕生

20180919wine07.jpg斎藤さんによれば「西向きの斜面はワインぶどう栽培に適してるんです」といい、日没ぎりぎりまで日が当たり光合成が行われる天王原の斜面は、斜面全体が砂礫交じりで水はけもよく、ワイン関係者の間ではブドウ栽培のなかなかの好適地とみなされています。
二人がこの斜面で4年前に植えたシャルドネが収穫の時期を迎えており、畑仕事にも余念がありません。
ただしワイナリーとして正式に稼働するには、すでに申請してある醸造所の免許が下りるのを待たねばならず、また醸造所の設備工事もこれからです。準備中の今は収入確保のためのアルバイトを二人ともしていて、今年の本格醸造が始まるまではしばらく二刀流の生活が続きます。
順当にいけばまもなく白ワイン、続いて赤ワインの初出荷にこぎつけそうで、それに先立ってシードルの出荷も予定しているとのこと。なお、畑の面積をどんどん拡張したり、生産するワインの本数を必要以上に増やすことについては二人とも慎重で、あくまでも「納得できる品質のワインを造ることが一番で、量を増やすことは考えていません」と方針は明確です。
ワインは他の酒と比べて、原料の産地による違いが味に大きく影響すると言われます。安曇野の小さな丘のぶどうが、二人の若者の手でどのように生まれ変わるのか楽しみです。(つかはら)

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醸造所は工事中。まだ看板もありません

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Le Milieu
住所 長野県安曇野市明科七貴4671-1
TEL・FAX 0263-62-5507
e-mail go.shiose.wine@gmail.com

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