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戸隠を再びそばの聖地にする夢・山口庄一さん 手にしているのが在来種の戸隠のソバの実 |
誰がなんと言おうと「そば」と言えば「信州そば」であります。そしてその「信州そば」のなかで、最も有名なのが「戸隠そば」です。戸隠の地に適した在来種のソバで、昔ながらの味の戸隠そばを広め、結果として地域の活性化をはかりたい――そんな願いで活動している「戸隠そば再興大作戦会議」の代表、山口庄一さんを訪ねました。
戸隠にしかないソバの種を
一昨年[2006年]の5月にソバ栽培農家8人が集い、役場でソバの生産振興について話し合う場が持たれた折り、会議の仮称「戸隠そば再興大作戦会議」が、大袈裟だけど面白いということでそのまま会の名前となったのです。8人のうち6人が会に参加し、その後7人が増えて現在は13人がメンバー。戸隠地区の在来種のソバ3種類を選抜し、生産振興を目指しています。
昔の戸隠そばの味!
山口さんが在来種のソバ生産に取り組むきっかけは、本場の戸隠そばをもう一度味わいたいという知りあいを地元のそば店に連れて行った時、その知人が、そばを食べた後「昔の戸隠そばの味と違う」とぽつりと感想をもらしたのを耳にして、これでは戸隠にそばを食べに来てもらう人に申し訳ないと考えたからでした。
南北に延びる日本列島の各地でその土地土地のソバが栽培されています。しかしソバは、品種の交配が簡単にすすんでしまうため、戸隠地区でも本来の在来種から、「昔の味と違う理由」は、長野県内で多く栽培されている信濃一号などと交配していると考えられました。戸隠の在来種は、信濃一号などと比べると実が白っぽく、形状はやや丸みを帯びていて、そばにすると苦味など独特の風味があり、そば通から好まれてきたのです。
在来種を守り続ける農家の務め
幸い戸隠地区には、周囲と隔絶された谷合で種を守って来た農家があり、山口さんは、その種に着目。調べた結果、地区内には在来種と思われる種が数種あり、それらをつぶさに検討したうえで3種類を選び出しました。それらは現在、長野県中信農業試験場で検査・保管がなされ、この2月には検討会議を開いて、最終的に生産振興する在来種を決めることになっています。
今年戸隠のそばは本格的生産へ
山口さんがソバの栽培を始めたのは9年前の平成11年から。遊休荒廃農地を農地としてよみがえらせ、そこにソバの種を蒔きました。儲からないので止めた方が良い、と周囲からは言われましたが、「自分は半分は楽しみで栽培しています」と山口さん。
戸隠そば再考大作戦会議の活動をはじめるようになると、マスコミなどにも取り上げられて、それを見た知人から連絡が来たり、種を譲ってほしいなどの問い合わせも来るようになりました。
戸隠は再びソバの聖地へ
ソバ栽培から10年目を迎える今年、いよいよ戸隠の大地(農耕の神と水の神)が守ってきた在来種の本格的な生産がはじまりますが、これからが大変だと、山口さんは考えています。
在来種の種の生産体制づくり、栽培面積の拡大、戸隠そば商組合との連携など、多くの課題が山積しているからです。生産農家を増やすために、行政の後押しも欠かせません。
「ソバの白い花が咲いた畑を眺めると、何ともいえない気持ちになるのです」と山口さんは今回の話をしめくくりました。そばの聖地・信州戸隠での「在来種ソバ再生」の真摯な試みが、大地の力を借り受けて成功してほしいと願わずにいられません。
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「そば玉」が戸隠のそば屋さんや宿泊施設の軒先に。 |
戸隠にそばを食べに行くなら冬の今こそが絶対のおすすめ
戸隠地区には多くのそば店がありますが、夏場は大変込み合います。おすすめなのがこの冬場。新そばが出回る時期からそれほどたっていないことや、風味をそこなわずそば粉を挽くのに適した寒さ、そして一部のスキー客が訪れるくらいですので、ゆったりと戸隠そばを味わうことができます。雪見酒とそばなど、いかがでしょうか。
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