長野市の西側の山間地、長野市七二会や小田切、信更、上水内郡の中条村、小川村、信州新町などは「西山地区」と呼ばれ、急傾斜地で米が作れず、麦や豆類の畑になっています。この地区には、信州の名物として有名になったおやきやうどん、すいとんといった粉食文化が、今も引き継がれているのです。今回は上水内郡中条村を訪ねて、味噌煮込みうどんの「ぶっこみ」をご紹介しましょう。
こねた小麦の切る太さで名前が変わる
「ぶっこみ」とは、いろいろな野菜とうどんをぶちこんで煮たということから名づけられ、「ぶちこみ」とか「おぶっこ」などと呼ぶこともあります。急斜面の西山地区では、水田が少なく、雪も少ないことから、畑で麦が作られました。小麦は粉にし麺として食べましたが、こねた後の切る太さで料理が変わります。一番細いものは「おとうじ(そうめん)」、次に「うどん」、太くて短いものが「ぶっこみ」となります。麺にしないで、こねたものを手で延ばしながらちぎって味噌汁に入れたものは「おつめり(すいとん)」と呼んでいます。
ぶっこみは、小麦粉を水で固めにこねて、めん棒で薄くのし、六分(2センチ弱)幅に切ります。この切り分けた麺を、大根、にんじん、じゃがいも、ねぎなど、その季節の野菜をたっぷり入れた味噌汁を作って、その中に入れて煮込んだものをいただきます。西山地区では夕食は粉ものという風習が昔からあり、簡単にできるぶっこみは、夕食として年中作られていました。幅広の麺に味噌煮込みというと、山梨県のほうとうが有名ですが、地元の人は「ぶっこみが元祖」と言っています。
ぶっこみを食べてみたくなったら
中条村日下野、虫倉山の南斜面にある「やきもち家」は古い民家を移築した茅葺屋根の宿。旅人はここで「ぶっこみ」を食べることができます。大根、にんじん、かぼちゃ、キャベツ、高野豆腐などの具だくさんのアツアツ味噌煮込みで、お好みで"ネギ南蛮"という辛い薬味を溶かして食べると、これがとても美味。昆布だしと野菜の味で、ほのかな甘みもあります。ぶっこみの他にも、施設の名にもあるやきもち(灰焼きのおやき)や笹おやきなど、西山地区の郷土食が楽しめます。
ここやきもち家は、食事のほかにも日帰り入浴ができる温泉もあり、宿泊はもちろん気軽に立ち寄ってふるさとの雰囲気を楽しめる施設です。またぶっこみは、中条村の白馬長野道路沿いにあってアルプスを一望する道の駅「パークライン中条」でも、食べることができます。
【やきもち家】
- 長野県上水内郡中条村大字日下野5286(地図)
- TEL:026-267-2641 FAX:026-268-3924
【道の駅 パークライン中条】
- 道の駅ガイド「パークライン中条」(地図も)
- 長野県上水内郡中条村大字住良木向川原1704番地
- TEL:026-267-2188
参考図書:「日本の食生活全集20聞き書長野の食事」農文協刊