2019年度の野生鳥獣による農作物被害額は158億円であり、被害の7割が鹿、猪、猿によるものといわれています(農林水産省 農村振興局「鳥獣被害の現状と対策(2020年11月)」より)。
最近は住宅地で猪が出没することも多く、野生鳥獣被害は農家だけでなく地域全体が頭を抱える問題です。
このような背景の中、捕獲した鳥獣を地域資源として有効活用する観点から、野生鳥獣の肉「ジビエ」を使った料理が注目されています。
今回は鹿肉の商品開発や商品の製造を行い、JA祭で販売もしている上伊那農業高校畜産班にお話しを伺いました (長野県の一部の高校では部活動のことを「班活動」といいます)。
上伊那農業高校畜産班とは?
一般的に有害獣駆除された多くの鹿は埋設処理されることが多いです。そこで、もったいない! と考えた畜産班は「埋める鹿をください」と地元の猟師さんにお願いして鹿肉の商品開発を始めました。ここからが同校畜産班の本領発揮です! 県内の高校で初めて「食肉製品製造業」の営業許可を取得し、商品開発から商品の製造、販売までの一貫体制を整えました。
2016年から販売している人気商品の鹿肉ジャーキー「でぃあでぃあ」は、2017年には都内の長野県アンテナショップ「銀座NAGANO」で限定販売されました。
鹿肉を多くの人に食べてほしい
畜産班メンバー(2021年1月27日現在)。
鹿の角を意識した鹿ポーズをしていただきました!
畜産班班長の中原葉南(なかはら・はな)さん(写真前列左から2番目)は中学3年生の時に、当時の担任の先生がお土産に買ってきてくれた「でぃあでぃあ」のおいしさに感動して畜産班に入りました。
畜産班の活動で衝撃的だったのが鹿の捕獲現場の見学でした。
モザイク部分は鹿のと体です。
中原さんは、「かわいそう、と思う一方で命の尊さを感じました。畜産班の活動を通じて、より多くの鹿を"埋める"のではなく"食べてもらいたい"と思うようになりました」と語ります。
中原さん曰く、鹿肉は「臭みがなくどんな料理にも合う食材」だそうです。
そこで、先輩が作ったジャーキータイプだけでなく、ソーセージタイプの新商品を開発し、さらに多くの方に鹿肉のおいしさに親しんでいただきたい、と取り組んでいます。
「鹿肉本来の"野性味"を生かしつつ、パセリやバジル、唐辛子などのスパイスを加えて風味豊かな味わいにしました。大人から子どもまで楽しめる味です!」(中原さん)
こちらのソーセージは来年度以降のイベントで販売する予定です。(※新型コロナウイルス感染防止の観点から、今のところ具体的な参加イベントは決まっていません。)
人気商品「でぃあでぃあ」ができるまで
お店であまり見ることがない鹿肉。一体どのように調理されているのでしょうか?
ジャーキータイプの「でぃあでぃあ」の製造方法を簡単にご紹介します!
鹿肉をスライスして
山椒やニンニクを加えた甘めの特製たれに漬け込み
燻製したら
完成です!
イベントで販売したときの様子
ちなみに畜産班の今後の目標は、鹿の解体を自分たちでできるようにするために、伊那市の方々と連携して地域に食肉処理場を作ることだそうです。いよいよ本格的! 頑張ってください!!
■問合せ
長野県上伊那農業高等学校【全日制】
畜産班顧問 境 久雄
長野県上伊那郡南箕輪村9110
TEL 0265-72-5281
FAX 0265-76-8942