天竜川で力強く生きるザザムシたち
さっそく川に入ってみましょう。今年は暖冬傾向ですが、長靴を通して水の冷たさが伝わってきます。
ザルを覗いてみると...、ザザムシがうじゃうじゃ! 小さいですが何百匹もクネクネと動いていると迫力があります(汗)。その中の一匹を取りあげてみましょう。
この翡翠色をした虫がザザムシの一種「ヒゲナガカワトビゲラ」です。ザザムシって「ザザムシ」っていう名前の虫のことではないの? と疑問に思いますが、ザザムシという名前は、浅瀬で川が流れる「ザーザー」という音からとって名付け総称された、トビゲラやカワゲラなど幼虫期を水中で過ごす昆虫の幼虫のことを指します。
こちらは、ヘビトンボの幼虫で「マゴタロウムシ」。見た目は小さいムカデのようです。「食べると香ばしくてトビゲラよりもおいしいんだよ」と中條さん。種類によって味が違うなんて、それはぜひとも食べてみたい! マゴタロウムシは古くから漢方薬として使用されており、子どもの疳の虫の薬としても重宝されていました。
頑丈な巣穴
トビゲラの仲間は、水中に卵を産み、卵から孵った幼虫は大きな石の裏などに、自分で糸のようなものを分泌して小石をいくつも繋ぎ合わせて巣穴をつくり、ケイ藻類などを食べて育ちます。繋ぎ合わされた巣は想像以上に頑丈で、逆さにしても剥がれ落ちません。この強度のおかげで、水流に負けずにとどまることができるのですね。
四つ手網
ザザムシ捕りでは、三方と底に網を張った「四つ手網」「万能鍬」、捕ったザザムシをふるい分ける「選別器」を使いますが、四つ手網と選別器はお店で売っていないため自分で作っているそうです。
虫踏み
四つ手網を下流側に置き、上流側では万能鍬を使って川床の石をひっくり返します。ひっくり返しただけでは、丈夫な巣を剥がすことができないため、足で石を掻いて巣を剥がし取る「虫踏み」を行います。巣から出されたザザムシたちは流されて、四つ手網にキャッチされるという仕組みです。四つ手網のザザムシは選別器でふるわれて、石や葉っぱを取り除いたあと、ネットに移し入れて持ち帰ります。
選別器
ネットに移し入れる
ザザムシは、伊那市の天竜川漁業協同組合が管轄する水産資源のひとつで、漁は許可制になっており、漁ができる期間は12月~2月末日に限られています。冬期に限定する理由は、幼虫老熟期で脂がのるためおいしいから、といわれていますが、「水温が4℃以上になると、虫も活発に動き始めてエサ(藻など)をたくさん食べるようになる。そうすると、臭みが出てきておいしくないんだよ。だからおいしく食べることができる、2月末までが漁解禁日になっているんだ」と中村さん。