炭エネルギーが山暮らしの未来を照らす

炭焼き

長野市の北西部にある小さな集落「信級(のぶしな)」。人口は大正9(1920)年の1,306人をピークに高齢化と過疎化が進み、現在は約120人が暮らすコンビニも自動販売機もない限界集落です。青い空と山々の緑がどこまでも続いています。ここに全国から人が集まる炭焼き名人がいると聞いて訪ねてきました。

炭には木のエネルギーがつまってる

炭焼き

関口近夫さん(83)は農業の傍ら冬の収入源として約60年も炭焼きを続けています。昭和20~30(1945〜55)年頃の最盛期には15~16人ほど炭焼き職人がいて、炭焼き窯の構造や焼き方などの情報交換をしながら技術を身につけました。炭を焼く窯はもちろん手作りです。いい粘土質の土が近くになかったため石で窯を作ったそうです。試行錯誤を重ねる中で、現在の窯ができあがりました。

炭焼き

窯から大きな炭を運び出す関口さん

炭とは、木材を化学反応によりガスや水分を抜き「炭化」させたものです。窯の温度が400℃以上になると自然発火し、最高で800~1,000℃になります。その日の気候によって、煙の色や状態を見ながら窯の温度を判断しているといいます。15日ほどかけて完成した炭は、主に花火の原料として出荷しています。「おじいさんの影響か、炭に縁があったんだなぁ」という関口さんの祖父は、県内外で活躍する花火師だったそうです。

炭焼き

「木は光合成によって年輪の数だけエネルギーを蓄えている。炭にすることによって、エネルギーだけを取り出している。炭は乾電池のようなもの」と関口さんはいいます。「今はエネルギーとしての消費は減ったけれど、何か違った用途で使ってもらえればいい」と。

自然と向き合い、未来を考える

炭焼き

写真中央付近に炭焼き窯がある

県内外をはじめ、遠くは西アフリカ共和国で働いている方など、各地の方々が炭焼きを教えてほしいと関口さんを訪ねてきます。取材に伺った日も、農業や炭焼きを通じて、関口さん流の自然との向き合い方を学びにきているという、飲食店を経営する上條さんに出会いました。「師匠」と関口さんを慕い、真っ黒になりながら炭の搬出をされています。

炭焼き

Iターンで移住して農業をしながら炭焼きを学び、「信級炭盆(炭を器にした盆栽)」を作る浅野さん、信級でとれた米を炭焼き窯の余熱で焙煎した「のぶしな玄米珈琲」を作る植野さんなど、若者の育成にも熱心に取り組まれています。
「彼らのように、信級に魅力を感じて来てくれる人がいる。2人のIターンを通じて、信級が将来生き残るだけではなく、ユートピア的存在になっていってほしい」と関口さんの夢を教えてくれました。

炭焼き

「信級炭盆」

炭焼き

「のぶしな玄米珈琲」

◆関連リンク
信級 炭の盆栽
のぶしな玄米珈琲
※信級地区にある「食堂かたつむり」で飲むこともできます。

◇参考 のぶしな通信創刊準備号(発行:のぶしなカンパニー)

この記事を書いた人

ピーチちゃん

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