七年に一度の奉納行列に加わって、善男善女となる

回向柱

今週末の2015年4月5日から始まる善光寺御開帳で、参拝者が先ず目指すのは、回向柱(えこうばしら)と言われる大きな柱です。善光寺金堂前に建立されるこの柱は、善光寺から南東に位置する長野市松代町を出て、千曲川と犀川を越え、10km弱の道のりを曳かれて善光寺に入り、建立されます。
去る3月29日には、一般参加の善男善女が、この回向柱を松代から善光寺に曳き奉納しました。その一部始終をお伝えします。

回向柱に触れて極楽浄土へ

七年に一度の盛儀と言われる善光寺御開帳。この「御開帳」とは、普段は拝むことのできないご本尊様を、期間を定めてだれもが参拝できるように「開帳」することを指しています。ただし、善光寺の場合、ご本尊は秘仏とされているため、開帳されるのは鎌倉時代に造られたとされる前立本尊(ご本尊の御身代わり)です。御開帳は今年2015年の4月5日から5月31日まで行われます。
期間中、前立本尊である阿弥陀如来様の右手には金の糸が握られ、この糸は五色の綱となって回向柱に結ばれます。ですから回向柱に触れることは如来様とご縁を結ぶことにつながるとされるのです。

回向柱

回向柱

回向柱は、真田家が治めていた松代藩(現在の長野市松代町)より善光寺に寄進されるならわしとなっており、そのための回向柱寄進奉納行列が編成されます。松代町中村神社の敷地で切り出された杉の柱は45cm角で長さ10mという巨大なもの。これを曳くための行列はとても長大なものでした。
善光寺木遣りの威勢のよい掛け声を先頭に、武者行列、お姫様、お殿さま(真田家当主)などが続き、時々舞いのようなアクションを見せつつ、おごそかに進みます。しんがりは主役の回向柱なのですが、これを曳くのは選ばれた(といっても実は先着250名)私たち一般の善男善女と牛! です。

回向柱

 

回向柱

回向柱

松代に全国から善男善女が集結

松代町の文武学校前に集まったのは当日朝7時すぎ。ここを基点に柱を曳く私たち参加者は、この日徹底して「善男善女」と呼ばれます。「みなさ~ん」とか「参加者の皆さ~ん」ではなく、「善男善女のみなさん、こちらへ集まってくださ~い」といった具合です。
繰り返し「善男善女のみなさん」と呼ばれているうちに、普段の行動も言動も善男らしく(または善女らしく)ふるまわなければいけない気になってくるから不思議です。これも御利益の一種でしょうか。
いっしょに綱を引いていた富山から来たというご夫婦は、7年前に続いて2度目の参加とのこと。その理由はズバリ「極楽浄土に行きたいから」と即答でした。極楽浄土行きパスポートの魅力はやはり強く、長野県外からの参加者も少なくなかったようです。
あまり事前PRしていない割には希望者が多いのは、御開帳に関する主な公式行事のなかで、いわゆる「参加型イベント」はこれだけということもあったかもしれません。

回向柱

回向柱

この奉納行列は松代から延々善光寺まで続くのかといえばさにあらず。松代町内を1kmほど曳いた後バスに分乗し(柱はトラックでしょうね)、長野市街地まで移動します。
地元松代の方によると「昔は善光寺まで1日がかりで実際にずっ~と曳いていった」とのことで、その頃のかたちに戻した方がいい、といった意見も少なくありませんでした。

回向柱

回向柱

ともあれ、その後長野市内に移動して午後は2kmほどの善光寺参道を北上します。
松代町内ではどちらかというとアットホームでのどかな空気の中、行列も和気あいあいといった感じで進行していましたが、ここ長野市中心街ではその雰囲気が一転します。
行列を一目見ようと参道の両脇に集まったたくさんの人・人・人、そしてテレビ各局によるカメラの砲列とそのスタッフたち。緊張の中、行列を構成する木遣り保存会の方やお武家さんたちはきちっと整列して足並みをそろえて進みます。ここはなんといっても善光寺さんの目の前ですからおごそかにして、私語などもってのほか・・・ですよね。
私たち善男善女は群衆に見つめられ、意味のない特権意識(選ばれたわけでもないのに)と主役意識(何といっても柱を曳いているのは武者行列ではなく我々)とちょっとした恥ずかしさをもって進みます。集まった群衆のなかに知人を見つけることも多いのですが、その場合は手を振ったり話をしたりして善男の威厳が崩れたのはご愛嬌ってことにいたしましょう。

回向柱

回向柱

そして無事善光寺到着。この後、善光寺の宮大工によってきれいに削られた柱に文字が入れられて、今週末(2015年4月3日)の本番「回向柱建立式」を迎えます。
さあ全国の善男善女(またはその候補者)のみなさん、七年に一度の盛儀を体感しに、ぜひ信州善光寺におこしくださいませ。(つかはら)

 

善光寺御開帳特設サイト

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