松代町の文武学校前に集まったのは当日朝7時すぎ。ここを基点に柱を曳く私たち参加者は、この日徹底して「善男善女」と呼ばれます。「みなさ~ん」とか「参加者の皆さ~ん」ではなく、「善男善女のみなさん、こちらへ集まってくださ~い」といった具合です。
繰り返し「善男善女のみなさん」と呼ばれているうちに、普段の行動も言動も善男らしく(または善女らしく)ふるまわなければいけない気になってくるから不思議です。これも御利益の一種でしょうか。
いっしょに綱を引いていた富山から来たというご夫婦は、7年前に続いて2度目の参加とのこと。その理由はズバリ「極楽浄土に行きたいから」と即答でした。極楽浄土行きパスポートの魅力はやはり強く、長野県外からの参加者も少なくなかったようです。
あまり事前PRしていない割には希望者が多いのは、御開帳に関する主な公式行事のなかで、いわゆる「参加型イベント」はこれだけということもあったかもしれません。
この奉納行列は松代から延々善光寺まで続くのかといえばさにあらず。松代町内を1kmほど曳いた後バスに分乗し(柱はトラックでしょうね)、長野市街地まで移動します。
地元松代の方によると「昔は善光寺まで1日がかりで実際にずっ~と曳いていった」とのことで、その頃のかたちに戻した方がいい、といった意見も少なくありませんでした。
ともあれ、その後長野市内に移動して午後は2kmほどの善光寺参道を北上します。
松代町内ではどちらかというとアットホームでのどかな空気の中、行列も和気あいあいといった感じで進行していましたが、ここ長野市中心街ではその雰囲気が一転します。
行列を一目見ようと参道の両脇に集まったたくさんの人・人・人、そしてテレビ各局によるカメラの砲列とそのスタッフたち。緊張の中、行列を構成する木遣り保存会の方やお武家さんたちはきちっと整列して足並みをそろえて進みます。ここはなんといっても善光寺さんの目の前ですからおごそかにして、私語などもってのほか・・・ですよね。
私たち善男善女は群衆に見つめられ、意味のない特権意識(選ばれたわけでもないのに)と主役意識(何といっても柱を曳いているのは武者行列ではなく我々)とちょっとした恥ずかしさをもって進みます。集まった群衆のなかに知人を見つけることも多いのですが、その場合は手を振ったり話をしたりして善男の威厳が崩れたのはご愛嬌ってことにいたしましょう。
そして無事善光寺到着。この後、善光寺の宮大工によってきれいに削られた柱に文字が入れられて、今週末(2015年4月3日)の本番「回向柱建立式」を迎えます。
さあ全国の善男善女(またはその候補者)のみなさん、七年に一度の盛儀を体感しに、ぜひ信州善光寺におこしくださいませ。(つかはら)
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