インドと長野をつなげるホットなOYAKI

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日本の伝統文化や伝統食が、今や世界を舞台に人気を集めていることに疑いの余地はありませんが、長野県の代表的な郷土料理である"おやき"を外国で食べられる日が近いなんて、知ってました? しかも南アジアの大国、インドで!
今年(2013年)1月、長野市信更町(しんこうまち)にあるおやき工房「信更いっぽ(しんこういっぽ)」に、インドから1人の女性が"おやき留学"にやってきました。その名はサラスワティ(Saraswaty)さん。2カ月ほどの短期留学でしたが、おやきについてたくさんのことを学びました。そして、暑い国から来たサラさんと過ごした2カ月は、いっぽ工房にとっても、それはそれはホットな冬になりました。

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インドからおやき研修生がやってきた
サラスワティさんは、インド南部に位置する大都市バンガロール(Bangalore, Karnataka)郊外のラブゴドゥール村(Ravugodlu)にあるNGO(非政府組織)「ヴィシュワラヤ(Vishwalaya)」のスタッフ。今年2013年1月26日に来日し、3月中旬まで信更いっぽでおやき作りを学びました。信更いっぽのメンバーや地域の方々に「サラさん」「サラちゃん」の愛称で呼ばれています。

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昼間は信更いっぽの工房で、メンバーがおやきを作るのを見学したり質問したりするサラさん。夜はホームステイ先の信更いっぽ代表・村田郁子さんの家でおやき作りの実習をしていました。そこでは、ナスや野沢菜などのお馴染みの味だけではなく、オリジナルのインド風おやきにも挑戦! なんと4種類のレシピを完成させました。どれも皆から好評だといいます(^_^)

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定番のなすおやきの具。味噌でからめたナスが入る

そもそもどうしてインドからはるばるおやき作りを学びにやってきたのでしょうか? ことの発端は、信更いっぽのメンバー村田恵さんが、2011年にインド旅行でヴィシュワラヤを訪れたことでした。ヴィシュワラヤは周辺の村の障害児や孤児の保護・教育、女性の権利問題に取り組んでいます。活動に感銘を受けた恵さんは、ヴィシュワラヤの日本人スタッフである後藤理恵さんが2012年に帰国した際、信更いっぽに招待したのです。いっぽのおやきを食べた後藤さんは、「このおやきなら、インドでもいける!」と判断し、研修の受け入れをお願いしたのだそうです。そこで白羽の矢が立ったのが、料理上手なサラさん。サラさん自身、ヴィシュワラヤに訪れるたくさんの外国人と触れ合う中で、日本に行ってみたいという気持ちが強かったのだとか。

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丸めた具を小麦粉の皮で包み込む

インドでおやきが食べられる!?
「信更いっぽの"野菜ミックス"おやきが一番好き。インドにはベジタリアン(菜食主義者)が多く、ナンやチャパティのような粉物文化もあるので、野菜たっぷりのおやきは受け入れられる可能性があると思います」とサラさんは言います。
サラさんや後藤さんがおやきをインドで作ろうと考えるのには、理由があります。インドの農村では昔から女性の地位がとても低く、収入を得る手段・チャンスが少ないという問題があるのです。そういった女性の権利問題にも取り組むヴィシュワラヤとしては、村の女性の収入源としておやき作りができないかと考えたのです。まずはバンガロールに住む日本人向けにおやきを作ってみようと計画しているのだとか。
※バンガロールは世界のIT産業の中心地のひとつ。様々な国の企業が拠点を構え、「インドのシリコンバレー」とも呼ばれています。もちろん日本人駐在員もたくさんいます。

サラさんは、「インドの村で外国の食べ物を受け入れてもらうのはとても難しい」と言います。しかし、食べ慣れた小麦と、村でとれる野菜で作ることができるおやきは、時間をかければ健康的な食べ物として受け入れられるのではと、在印日本人だけでなくインド人にも人気になることを期待しています。

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すてきな笑顔を思い出に
「サラちゃんが来てくれて本当に楽しかった。工房の中だけじゃなく、地域が明るくなったんです!」と話すのは、代表の村田さん。サラさんはおやきの研修だけでなく、地域の小学校や公民館のイベントにも参加しました。自慢のインド料理を振る舞ったり、子供たちとインドの遊びを楽しんだりと、積極的に地域に溶け込んでいったそうです。「いろいろな人にインドの文化を知ってもらえて、とても楽しかったです。インド料理も喜んでもらえて嬉しかった」と、サラさんは笑顔で振り返ります。

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地域の人たちと交流するサラさん(提供:信更いっぽ)

信更いっぽは10年前に地域の活性化と女性の雇用創出を目的に作られました。同じ思いを持ったサラさんを受け入れることに抵抗はなかったといいます。「国際交流は難しいと思っていたけど、お互い飛び込んでみたらすぐに心がつながったの。サラちゃんは積極的に日本の文化を吸収しようとしてくれたから本当に楽しかった〜。地域にとってホットな冬になったよ」と話す郁子さんも笑顔。サラさんの帰国は寂しいですが、おやき作りがインドで実現することを、信更いっぽのメンバーだけでなく地域のみんなが期待しています。

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さて、気になるインド風おやきは、今回の記念にと、頭に「サラ」の名前を付けて、サラ・ポテト、サラ・ミックス(野菜)、サラ・ソップ(カンナダ語でほうれん草)、サラ・スイート(サツマイモやナッツ)の4種類。インド風味が試食会で好評だったこともあり、今後お店の商品ラインナップに入れていく予定とのこと。信更いっぽのおやきは信更町の店舗以外でも長野駅などで販売しているので、見かけたらぜひ食べてみてください!

◇関連リンク
信州おやき調査隊「信更いっぽ」
Vishwalaya ヴィシュワラヤ

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