先週、「城下町松代町で春を彩るひなまつり」と題してお届けしましたが、そこで素敵な出逢いがありました。古布とちりめん細工の人形たちと、その作者である小泉三姉妹です。今回は、長野市川中島町の自宅で5年前からひな飾りや手作り雛を公開している小泉姉妹を取材してきました。
まだまだ続く信州のひなまつりと笑顔の花咲く小泉家へようこそ!
長野市松代町の象山神社にほど近い「喫茶Gallery 象庵」で行われている「―古布・ちりめん細工―小泉姉妹展」。明るい店内の壁いっぱいに色とりどりのつるし雛が飾られ、奥には立ち雛、押し雛。ほかにも五月人形や干支人形、タペストリー、小物入れや帽子に洋服まで......。
編集部員が思わず「すごい......」とつぶやいたところ、「家にまだまだあるのよ。数は数えたことないけどね」と、長女のふさ子さんと三女のみつ子さん、五女のさきさんがニコニコしながら話しかけてくれました。
五女!?
そうです、こちらの姉妹展は小泉五姉妹の手によるものなんです。この日は五人姉妹のうちの三姉妹にお話を伺いました。インタビュー形式でお楽しみください。
――ギャラリー出展のきっかけは?
長女・ふさ子さん:5年前の春、近所のお茶飲み場として、これまで作りためたひな人形を自宅で1カ月間公開したこと。このご時世、姉妹はみな嫁いで近所の人とも疎遠になりがちだけど、わいわい集まるのって楽しい。ひな人形もお茶請けのひとつ。もちろんお菓子や漬物もかかせないけど(笑)。
今では口コミで上田市や須坂市からも見にきてくれる。仲間が増えて「喫茶Gallery 象庵」に寄らせてもらったり、逆に象庵オーナーの町田さんが自宅にひな人形を見にきてくれたりして。そんなご縁で町田さんから姉妹展をすすめられた。
ひな飾り(上)と五月人形
喫茶Gallery 象庵 オーナーの町田さん
――皆さん手先が器用ですね。昔からよく作ってたんですか?
ふさ子さん:人形や小物を本格的に作り始めたのは10年前。それまでは皆、農作業や主婦として忙しかったし。子供の頃も麦の草取りや蚕の世話など子供の仕事があったし、戦中戦後は物も余裕もなくて......。
五女・さきさん:大ねえちゃん(ふさ子さん)はよく私達の服を縫ってくれた。
三女・みつ子さん:そうそう、きれいだし早かった。
ふさ子さん:母から和裁を習ったし、戦後は洋裁学校に通ってた。時代で編み物の機械編みや既製品も多くなってきたけど、和装仕立てができたことで重宝がられてた。結婚してからも男しょ(男の人)は仕事に出てたから、女しょ(女の人)が農作業を一手に引き受けてたので、なかなか作る暇がなかったね。
つるかめ(上)と干支
――本格的に制作をはじめたのは?
ふさ子さん:今から10年前、70歳の時。「これからは好きなものを好きな時に好きなだけ作ろう」って、月1回東京から来てくれた先生に小物や人形作りを習いはじめたの。一番初めは小さな人形から。
みつ子さん:その時、私達も一緒にやろうって。
ふさ子さん:楽しかった〜。この日だけは何があっても習いにいかせてもらったよ(笑)。あっという間だね。
さきさん:大ねえちゃんが熱心だから、私はちょっと分からなくても後で聞けばいいやって(笑)、頼りにしてます!
小物入れや帽子、洋服など多彩な作品が並ぶ
――一つの作品の制作期間は?
ふさ子さん:つるし雛は1本1年くらい。今も現役の主婦だし、農作業もまだまだやってるし。でも、集中して人形一体一晩で作ったことも。
※今回、干支人形を展示する際、「羊がない」と町田オーナーに言われ、展示初日の前夜に一気に作り上げた。
――色合いも風合いも素敵ですが、この布は?
ふさ子さん:祖母や母の着物が多い。昔の着物や端切れが形を変えて日の目を見るのがうれしい。思い出深いし、祖母や母が継いだり染めかえたりと手をかけていたことがわかって。またこれがいい味になるの。
みつ子さん・さきさん:懐かしくて、ついつい思い出話に花が咲く日も。それがまた楽しいのね〜♪
ふさ子さん:あと、人形作りや公開展示で広がった仲間で布を下さる方も。その方をイメージして作ってみたり。
――制作過程は?
ふさ子さん:昔の着物をほどいて丁寧に洗い、いろいろな色や素材の端切れに分類する。様々な組み合わせを試した上で作り始める。この組み合わせを考えるときが一番楽しい。何度も置き換えてみて意外な組み合わせが良かったり。たまに絵の好きな息子が色やレイアウトを見てくれたり(笑)。「もう少し左」とか「色はこっちがいい」とか言うの。
親王雛
――いろいろなモチーフがありますが、今後作ってみたいものは?
ふさ子さん:新作はちりめんでいくつもかんざしを作り、それを着物の帯に貼りつけたもの。
予定も計画もない!! その時々にパッと思いついたものを作るだけ。でも、みっちゃん(みつ子さん)が「次はこれ作ろう!」っていうこともあるわね。企画・立案はみっちゃん!
さきさん:で、取材対応はふさちゃん(笑)。
みつ子さん:制作とおしゃべりは全員で! あっはは〜。
ふさ子さん:人形作りは多くの皆さんの後押しあってのもの。これからも作り続けていくよ。細かい所は目が疲れて見えづらいけどね(笑)。
きもの帯に鯉。一匹一匹の表情が豊か
小泉姉妹のすてきな笑顔に会いにいこう。
人が好きで、かわいいものが大好きな小泉姉妹の朗らかな人柄にほっこり和んだひと時でした。ありがとうございました! これからもますますお元気で。新作を楽しみにしています。
実は、ここで皆様にお詫びしなければなりません。「喫茶Gallery 象庵」での「古布・ちりめん細工 小泉姉妹展」は既に終了しています。
現在、小泉姉妹の人形たちは、「雛人形と吊るし雛・女の手仕事『第4回』」と題して川中島町の自宅にて公開中です。期間は、2013年3月31日(日)までの9:00〜17:00。不定休のため、電話(026-292−1423)で予約されることをお勧めします。
小泉家公開雛
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