最高気温ですら氷点下(!!)、重ね着をさらに重ねた2月(如月)もようやく過ぎ、いよいよ芽吹きの季節(弥生)となりました。
現在、信州の春を彩る、優美な「ひなまつり」が各地で開催されています。
今回は、長野県北部に位置する長野市松代町で行われている「第11回 松代でひなまつり」をご紹介します。
開催期間:2013年3月3日(日)〜4月3日(水)
松代町といえば、江戸時代、真田信之が松代藩十万石の藩主となって以降、真田氏が十代に渡り治めてきた城下町です。松代城跡、真田邸、文武学校、さらにはNHK大河ドラマにも幾度となく登場した幕末の学者・思想家である佐久間象山ゆかりの町として、歴史・伝統文化が色濃く残っています(写真は象山神社)。
ここを訪れれば、そんな当時のひなまつり気分を満喫できるかもしれませんよ♪
歴史ロマンを感じる町並みに
賑やかな子供の笑い声
2013年3月3日(日)午前11時。象山神社東側の小川に、色とりどりの「流し雛」が一つ、またひとつと流れてきました。この流し雛、実は、朝9時半から地元の子供たちや、親子・ご家族で参加した皆さんが折り紙でつくったお雛様なのです。地元ボランティアの方々に教えてもらいながら作ったお雛様は、象山神社でお祓いしてもらって川に流します。
「孫と一緒に楽しんでます。良い思い出になります」と笑顔のおばあちゃん。学校の友達と一緒に参加し、「教えてもらったからすぐできた」と喜ぶ地元の子供たち。他にも松本市や須坂市、中には東京や横浜から参加したご家族などで社務所内はあふれ、その数300名を超えるほど。地元ボランティアの方も「年々多くの方に喜んでもらって張り合いがある」「私達も地元サークルの『折り紙専科』で学んでおり、毎年違った折り方を教えるのが楽しい」と話してくれます。また、神社境内ではオカリナの演奏も行われ、ひなまつりを盛り上げていました。
小川では身を乗り出してそっとお雛様を流す子供たちや、「待って〜」「どれか分かんなくなる〜」と、自分のお雛様を追いかける子供たちの歓声が上がり、賑やかな中にも、子供の健康や成長を願うご家族は真剣そのもの。そのなかでも、長野市から今回初めて訪れ、「初めての子(7カ月の女の子)が生まれたので、元気に育つようにと祈りながら流しました」と、流し雛の行方を見守っているご両親の姿が印象的でした。
健康と厄除を願う「桃の節句」
「ひなまつり」の起源には諸説あるそうですが、古代中国の3月上巳の日に禊(みそぎ)を行う風習からとも、平安時代、紙で作った人形(ひとがた)に身の穢れ(けがれ)を移したものを水辺に流し健康を祈る「厄除け儀礼」からとも、また、平安貴族子女の遊びごと(おままごとのようなもの)から、とも言われています。後々、飾り物としての形と、厄除け・身代り人形という意味が強くなり、嫁入り道具となったようです。現代の様式は江戸時代初期からとされています。
街ぐるみで祝う盛大なイベントに
先ほども言いましたが、松代町はもともと歴史情緒あふれる、ゆったりのんびりした散策が似合う街なのです。期間中は、街の文化財や公共施設、商店街の至る所――その数何と90か所!!――に、旧家に伝わるひな飾りから、思い出の詰まったひな人形、さらには個性あふれる手作り雛まで数多く飾られているのです。それはそれは華やかにあでやかに、多くの人々の目を楽しませています。
松代まち歩きセンターの三田事務局長によると、もともと真田宝物館の学芸員さんが「街おこしに何かやろう」とおひな様の展示を考えていたそうです。ちょうどその頃、初孫の節句にお母様の雛飾りを店内に飾って祝ったという地元商店街の老舗茶舖「小島園」をはじめ、地元体験学習・交流・観光活動を行う「エコール・ド・まつしろ」の皆さんなどと一緒になって、街ぐるみでひなまつりイベントを行うようになったそうです。
小島園店内の雛飾りは、ご主人のお母様の生まれた大正4(1915)年のもの。100年近く前のものは思えない色合いの鮮やかなことといったら......。
「茶箱に入れて目張りをして保存しているからかなぁ。当時のままだよ」「うちは息子だったから初孫が生まれた10年前に開けたんだよ」と、お茶の芳しい香り漂う店内でゆっくり語ってくれました。
「お祝いをいただいた方の名簿が当時の日記に残ってるんだよ」「浦島太郎や花さかじいさん人形もあるんだよ」と話しながら、歴史を感じる日記も見せてくれました。
上左から、花さかじいさん、浦島太郎
下左から、明治時代からの日記、小島園外観
近所の商店街でも衣料品店内や美容室の窓辺に、ひな段やひな飾りが飾ってあり、ふらりと訪ねても快く思い出話を聞かせてくれたり、写真を撮らせてくれます。手作りのおひな様や自慢のコレクションの話も聞けるかも!?
またこの日、「喫茶Gallery 象庵」で新たな出逢いがありました。このお話は来週のお楽しみに。
関連イベントも盛りだくさん
今年の目玉のひとつに、改築を終えたばかりの真田邸で行われる「いろいろな時代のおひな様展」があります。長野市立博物館所蔵の八田家「享保雛」を借り、江戸時代から昭和50年代のものまで一堂に並びます。数こそ多くないものの、時代時代の衣装の違いに、まるでタイムスリップしたかのような世界を体感できます。また、お顔も一体一体違っていて、スリムなお顔立ちもあれば、すっと切れ長の目のもの、ふっくらお顔にやさしい一本線の目、などなど。「このおひな様いいなぁ」と好きな顔立ちを見つける楽しみもありますよ。昭和のおひな様には、何十年かぶりに出逢った懐かしさを覚え、しばしシミジミ(-_- )
そうそう、最近のおひな様事情としては、まつ毛の長い、はっきりした顔立ちが流行っているそうですよ。時代ですね〜。
また、2013年3月7日(木)の午後3時まで松代まち歩きセンターで、人形作家・高橋まゆみさんの新作「おひな様」リレー展が行われます。
高橋まゆみさんの新作は、3月8日以降、千曲市→須坂市→小布施町→山ノ内町→中野市と約5日間ごとに移動しながら展示されます。
高橋まゆみ新作人形のリレー雛
ほかにも期間中、絵手紙展示やまつしろ写真コンテスト作品展、ミニコンサートなどのイベントも盛りだくさん♪ 日程など詳しくは実行委員会までご確認ください。
古の趣ある街並みをのんびり歩きながら、信州の小さな春をみつけてみませんか?
◇関連リンク
・第11回松代でひなまつり
・エコール・ド・まつしろ
・長野県内のひなまつり特集
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