「おやき」の国の信州には「まんじゅう」にも昔からの伝統があります。しかも、まさに今、この時期にしか食べることのない「まんじゅう」が、そう「七夕まんじゅう」が、ここ信州には伝えられているのです。というと多くの方が「え? 七夕?? もう、8月じゃないの???」と思われるかもしれません。いえいえ、信州では旧暦で七夕をお祝いする地域がたくさんあるのですよ。そこで今回のローカルフードは「七夕まんじゅう」をご紹介しましょう。
「おやき」の国の「まんじゅう」
中信地方の安曇野と一部の松本地域、そして東信では上田と佐久の両地域は、昔から「まんじゅう」が盛んな土地で、現在もそれをまんじゅうと呼んでいます。まんじゅうは、小麦粉を重曹などで膨張させて作るのが特徴。北信州・西山地方の「おやき」の場合は、小麦粉を練ったものに野菜あんを入れて丸くまとめて焼きあげるのが普通です。しかし安曇野地方や東信地方などの「まんじゅう」をつくる地域では、この「七夕まんじゅう」をつくる風習が脈々と続いています。
「七夕」の「まんじゅう」
「おやき」や「まんじゅう」はそもそも、「まるめる」「まとめる」をおめでたい意味につなげて、家族や村の生活の無事を祈ったり、先祖への感謝をこめたご馳走として、つくられていました。まんじゅうをつくる地域では、原料の小麦がとれるこの時期と「七夕」が重なっていることから、まんじゅうが七夕に供えられるようになったそうです。それがいつしか、主食やおやつとなり、四季を通して信州の食卓にのぼるようにもなりました。
安曇野の「七夕米まんじゅう」
今回、現在も伝統や文化を伝えようと松本平で「七夕まんじゅう」をつくり続けるJAあづみ女性部の漬物研修センターを訪ねました。同女性部は7人が中心になって、20年ほど前からJA生活センターの施設を利用してまんじゅうや漬物など安曇野の特産品をつくっていて、今回はこの一ヶ月間のみつくるものとされている「七夕コメまんじゅう」をつくる現場を訪れました。
生地も具もすべて土地のもので
生地には地元産の玄米粉と小麦粉を使用しています。「玄米粉を使っているから、コメまんじゅうといいます。こうすると、生地がもっちりとした食感がだせるんですよ。みためも、ふっくらしておいしそうでしょう。どれも、たっぷり具材が入っていて、ひとつひとつつ丁寧に作っていますよ」と代表の中澤けさみさんが教えてくれました。
センターには、出来立て・ふかしたてのおまんじゅうの香りがあふれています。七夕用のまんじゅうの中身は、刻んだシソの葉と一緒にからめた地元産長ナスと甘味噌の二種類。コメまんじゅうの具はなんと20種類以上もあり、旬の野菜を使ったり、通年のものを使ったりその時期に一番あったものを選ぶのだそうです。出来立てを、同センター直売所にて販売しています。さらに、来場者には安曇野名水を使った抹茶を振舞い、地域の交流の場にもなっているようです。
地域密着で、伝統を守る
学校が夏休みになっていない7月の上旬には、地元の小学校、中学校、福祉センターへ、約2300個の七夕コメまんじゅうが配布されました。この取り組みは、4年ほど前から「七夕まんじゅう」を知らない子どもたちに伝統文化を伝えるために企画されたそうです。中澤さんは「わたしたちの子どもの頃はどの家にありました。子どもたちには、地域の伝統を知ってもらいたいんです。おいしいと評判でしたよ。今後も続けていきますよ」と笑顔で話してくれました。
「七夕コメまんじゅう」は、以下のところで、この季節にのみ販売されています。近くまでお越しのさいは、足をのばして一度めしあがってみてください。信州の伝統の味がしますよ。
七夕まんじゅうの期間限定発売場所
●安曇野スイス村
〒399-8201 長野県安曇野市豊科南穂高5555-1
安曇野スイス村ウェブサイト
●アルプス安曇野 ほりがねの里 堀金村物産センター
〒399-8211 長野県安曇野市堀金烏川2696番地
アルプス安曇野 ほりがねの里案内サイト
七夕まんじゅうのお問い合わせ先
■JAあづみ女性部 あづみ農協 漬物研修センター
長野県安曇野市豊科南穂高2728-1
電話 0263725930
ご予約は第3木曜7:00〜8:00のみ受付
直売時間は日曜日と木曜日の午前8:30から
または、JAあづみ 総務開発事業部 総合企画課
電話 0263722932 まで。