信州各地には郷土食がたくさんあり、親から子、孫へと脈々と伝えられています。
今回紹介したい郷土食は、レタス出荷量日本一を誇る南佐久郡川上村の「はりこしまんじゅう」です。
標高1,100メートル、年間平均気温10度以下という日本有数の高原野菜の産地・川上村へ行ってきました!
築200年の古民家で昔ながらの作り方を再現
今回紹介するのは、川上村でレタスなどを生産している野菜農家の篠原千代子さん(57)。嫁いでから40年近く、農作業のお小昼(間食・軽い食事)として「はりこしまんじゅう」を作り続けているという篠原さんに、作り方を教えていただきました。
「はりこしまんじゅう」は、そば粉をぬるま湯でこね、ネギやショウガを入れ、味噌で味付けしたタネを、独特のやり方で形を整えて囲炉裏で焼いたもの。昔から長野県の佐久・小諸地域で食べられていた郷土食です。
お邪魔した日は、篠原さんが「昔ながらの作り方を再現したい」と、川上村の生産者や農産物直売所「マルシェかわかみ」のスタッフに声をかけ、川上村文化センターの横にある築200年以上の民家で「はりこしまんじゅう」を作ってくれました。この民家は、村内から移築されたもので、昔ながらの土間や囲炉裏、馬小屋があります。若いスタッフたちは、「囲炉裏で"はりこしまんじゅう"を焼くのは初めて」と、目を輝かせながら作業開始です。
不思議な名前の由来は、その作り方にありました
昔から伝わる「はりこしまんじゅう」は、そば粉を使用しているのですが、篠原家では、小麦粉に刻んだネギとショウガを入れ、味噌と水を加えながらサックリ混ぜます。「手早く混ぜるのがポイント」と篠原さん。混ぜたタネを粉を敷いたお椀に入れ、形を整えるため空中に跳ね上げます。「お椀の中のタネを、梁を越すほど高く跳ね上げてつくるまんじゅうということで、"はりこしまんじゅう"と呼ばれるようになった」と、篠原さんが名前の由来が作り方にあることを教えてくれました。
小麦粉にネギ、しょうがを入れ、味噌汁を流し込む
水分調整しながら、まなばしでサクサク混ぜる
お椀の中にも粉を敷く
跳ね上げる前のタネ
お椀の中のタネを跳ね上げる篠原さん
実際に、梁を越すほど高く跳ね上げるには、跳ね上げたタネをうまくお椀でキャッチする熟練の技術が必要のようで、さすがの篠原さんも梁を越すほど高く跳ね上げることはできないそうです。
お椀で形を整えたタネは、囲炉裏に置いた鉄板にのせ、火が通りやすいように平に伸ばされ表面を焼きます。表面が焼けたら囲炉裏の灰の中に入れ、じっくり火を通せば「はりこしまんじゅう」の出来上がり。
囲炉裏で表面を焼く
灰の中へ
表面カリカリ!素朴で絶妙な味わい♪
何枚でも食べられる美味しさです
灰の中で焼いた「はりこしまんじゅう」は、表面がカリカリ! ネギとショウガ、味噌の味が絶妙で、何枚でも食べられる美味しさでした。
普段は、ホットプレートやフライパンで焼くという篠原さんですが、「油を使わず鉄板に粉を敷いて焼く(写真参照)」昔からの調理方法で作った今回の「はりこしまんじゅう」は、食文化を伝える意味でも大切だと感じました。
粉を敷くことで鉄板に"はりこしまんじゅう"が貼りつくのを防ぐ
篠原さんは、現在JA長野八ヶ岳女性部の部長でもあります。「"はりこしまんじゅう"はあたりまえに食べていましたが、川上村を代表する郷土食であることを実感しました。これから多くの人に知ってもらい、食べてもらえることを考えていきたい」と、話してくれました。
素朴で、なつかしい味の「はりこしまんじゅう」を、これからも残していきたいですね。