2月最初の午の日は「初午の日」。
「祭神が稲荷山の三箇峰に降りた日」と言われている初午の日ですが、稲荷神のお祭りとして、全国各地の稲荷神社で農作祈願や商売繁盛等を祈願します。中には、毎年盛大にお祭りをする地域もあるそうです。
今回は、30年以上にわたって、初午の日に「わら馬」を作って幼稚園に寄贈しているわら馬作りの名人がいると聞きつけ、話を聞いてきました。
手作りの大きなわら馬を地元の子供たちへ
やってきたのは千曲市上山田。
上山田は、善光寺詣りの精進落としの湯として昔から親しまれている「戸倉上山田温泉」のある土地で、温泉ファンにはたまらない昭和レトロな温泉街が存在します。
今回取材協力してくれたのは、上山田大わらじ委員会会長の宮本暢さん。
2004年の静岡国際園芸博覧会で金賞を受賞した経歴もある宮本さん。世界1位の腕前は89歳になってもいまだ健在。自ら作った「わら馬」を幼稚園に寄贈するこの活動は、30年以上続けているそうです。
「わら馬」とひと口にいっても、宮本さんが作るのは、子供が乗って遊べるほどの大きさと頑丈さのあるわら馬です。宮本会長が所属する上山田わらじ委員会の構成委員は約10名。しかしながら、宮本会長以外のメンバーだけでは、1人でわら馬を作ることができません。それほど高度な技術と経験が必要なんです。
全行程6時間!貴重なわら馬作りに密着
1.わら馬作りで初めに行うのは「つべおとし」です。作業がしやすいようにわらの芯だけを残し、弱いわらをそぎ落とします。
2.その後、枝と竹を使ってわら馬の骨格を作ります。
3.わらを濡らして柔らかくします。
4.顔を作ります。
4−1.一握りほどのわらをいくつも用意し、編みながら一つにまとめます。
4−2.まとめたわらの中に、別のわら一束を入れ込み、包み込みます。
4−3.4−2をいくつも用意し、縄でくくって口を作ります。
4−4.たてがみ用にわらを挟んで、さらになわで縛れば顔が出来上がります。
5.4−2の骨格に顔を入れ込みます。
6.4−1のやり方で胴体用のさらに大きいものを作ります。
7.6を胴体につけ、足や体にわらをしきつめます。その後、縄でギュッと縛れば完成です。
私が取材したときは約6時間前後で完成しましたが、早いときは1日2体のわら馬を作れる時もあるそうです。
「午のように元気で活発に」未来へ繋ぐ願いを込めて
宮本会長(前列中央)と上山田わらじ委員会のメンバー
上山田わらじ委員会の皆さんは、「子供たちが午のように元気で活発に過ごしてほしい、との願いを込めて作っている」と話してくれました。
昔は、わらは生活の必需品といわれていました。上山田わらじ委員会のように、これからも昔の人の技術や文化を次の世代に伝承する活動を大切にしていきたいですね。
宮本会長のおすすめの作品
「亀の乾杯 宝船」
人の一生は終わることはない。(亀の万年)
死んだとしてもそれは中締めである。(とっくり)
死んだら天国でまた乾杯しよう。(杯)