凛々しさとやさしさと。夫婦馬が伝える農村文化
新春の初午の行事が地元にもあれば・・・との思いから、およそ20年前から夫婦馬を作りはじめました。天を仰いでいななく雄馬(約30cm)と、草をはむ雌馬(約20cm)で一組となっていて、60組120体の完成を目指しています。今年の作品は、赤い手綱と鞍がアクセントになっています。
夫婦馬は雄馬と雌馬がセットで1組
この作品を作っている田中豊文さん(82)は、上伊那農業委員会協議会の「稲ワラ工芸品づくり名人」に認定されています。子どもの頃、学校から帰ったら、ワラぞうり4~5足作らないと夕ごはんをもらえなかった経験があり、稲ワラで何か作りたい、という気持ちが高まって、勤めていた精密会社を55歳で退職、自宅の横に工房を建てて制作をはじめました。稲ワラは、機械で刈り脱穀したものだと切れてしまうため、特別にはぜかけ(天日干し)にして稲穂を取り除いたワラを、近所の農家さんから提供してもらっています。
上伊那農業委員会協議会認定「稲ワラ工芸品づくり名人」田中豊文さん
田中さんはガンや腎臓の病気を患いました。現在も週2回透析に通いながらも「病気に負けないぞ」という強い気持ちで、入院している方や透析仲間を元気づけたい、と制作しています。毎年楽しみに待っていてくれる人がいるので、完成させる喜びと渡したときに喜んでもらえることと、2重の楽しみがある、と田中さんはいいます。