お盆の定番!それとも変わり種?信州の天ぷらまんじゅう

天ぷらまんじゅう

信州では、お盆になると天ぷらを食べる習慣があります。が、これって信州だけのようですね。
なすやピーマン、かぼちゃなどの夏野菜や、エビ・イカなどの魚介類など、家庭・地域によって食材はいろいろですが、それらを大皿に盛って仏様にお供えし、集まった家族や親戚との夕食でも食べます。
そんななか、お盆にだけ登場する天ぷらがあります。それが「天ぷらまんじゅう」。まんじゅうを天ぷら粉につけて油で揚げたもので、揚げまんじゅうとは違います。信州の中部(木曽、松本、安曇、大町)と南部(下伊那、上伊那、諏訪)地域を中心に作られており、それ以外の地域に生まれ育った信州人は「まんじゅうを天ぷらに揚げるの?」と首をかしげる変わり種でもあります。

仏様にはめずらしいものをお供えする

天ぷらまんじゅう

阿智村から南アルプスを望む

天ぷらまんじゅうは、お盆限定の天ぷらということで、「どうしてお盆にだけ天ぷらまんじゅうを作るのか」を知りたくて、信州の南部に位置し、日本一の星空が見れる村として注目されている下伊那郡阿智村の伍和地区へ。きゅうりやとうもろこしを中心に生産している野菜農家の園原幸子さん(66)と母のせつさん(90)親子に、昔からお盆に作っている天ぷらまんじゅうのお話を聞きにお邪魔しました。

天ぷらまんじゅう

昭和初期に建てられた園原家

園原家のお盆は、8月13日に仏様をお迎えし、14日の昼に天ぷらまんじゅうをお供えし、16日の早朝に、なすでつくった馬やこの時期にはめずらしいくるみや栗、お仏壇にお供えしたうどんや団子(米の粉を丸めたもの)などと一緒に、天ぷらまんじゅうを川のほとりにお供えして仏様をお送りするそうです。
「お土産を持って仏様たちが乗り遅れんように、川のほとりに供える。(なすでつくった馬やくるみ、栗、うどん、天ぷらまんじゅうなどの)準備で15日の夜から16日の朝は忙しかった」と、昔を懐かしみながら語ってくれたせつさんでした。

天ぷらまんじゅう

天ぷらまんじゅう

この地域には、「仏様にはめずらしいものをお供えする」という昔からの風習があるとのこと。
「40年程前に、親戚の新盆で初めて食べた天ぷらまんじゅうの味が忘れない」と話すせつさん。それが、天ぷらまんじゅうとせつさんとの初めての出合いで、それから、めずらしくて美味しい天ぷらまんじゅうをお盆のお供えにするようになったことを教えてくれました。お盆だけしか作らない仏様へのお供えものであり、今も園原家の行事食として受け継がれています。

表面サクサク、皮はふっくら

お盆には少し早いですが、園原家の天ぷらまんじゅうを作っていただきました。
今回作っていただいた「天ぷらまんじゅう」は、食べやすいように揚げる前にお饅頭を二つに切り、天ぷら粉をつけて油で揚げ、表面が少し色づいたらできあがり。
お饅頭の大きさや用途によって切らずに揚げることもあるそうです。

天ぷらまんじゅう

お気に入りのお饅頭を食べやすい大きさに切る

天ぷらまんじゅう

お饅頭に天ぷら粉をつける

天ぷらまんじゅう

天ぷらまんじゅうを作る幸子さん

天ぷらまんじゅう

180度の油で揚げる

さっそく、揚げたての「天ぷらまんじゅう」をいただきました。表面サクサク、お饅頭の皮はふっくら、こしあんはなめらかで、お昼を食べた後でもペロリと食べてしまいました。
園原親子も揚げたての「天ぷらまんじゅう」を頬張りながら、「やっぱり天ぷらまんじゅうは美味しいね」と。

天ぷらまんじゅう

天ぷらまんじゅうを頬張る園原親子

天ぷらまんじゅうを作る習慣のある地域では、お盆が近づくとお菓子屋さんやスーパーなどで、天ぷらまんじゅう用のお饅頭が並びます。最近は、小さめサイズのお饅頭も登場しているようです。「お饅頭は作り立てで美味しいものを使わんと、天ぷらまんじゅうにしても美味しくないよ」と、幸子さんはアドバイスしてくれました。
こんなに美味しい天ぷらまんじゅうなのに、お盆限定なのは昔から伝えられている行事食だからなのでしょうか。はっきりした理由を見つけることはできませんでした(残念)。

お盆に、お気に入りのお饅頭を天ぷらにして食べてみませんか。新たなお饅頭の美味しさを見つけることができるかもしれませんよ。

この記事を書いた人

さくら

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