地元を熱く!信州味噌「奏龍」のコラボ

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お正月気分もだいぶ抜け、食事スタイルも、ご飯に味噌汁を基本とした定番メニューに戻っていることでしょう。ご飯の右隣が定位置で、食事には必ずといっていいほど添えられる味噌汁。日本人とは古くから付き合いの長い存在ですが、その味噌汁に入れる味噌の原料にもなる大豆は、現在ではほとんどを輸入に頼っている状態で、食料自給率はわずか5%足らず。そのなかでも味噌、そして醤油に使用される国産の大豆の割合は、わずか1割弱と、今や国産大豆が使用されている味噌はかなりの貴重品です。

そんななか、地元の農家が育てた大豆に米、という生産者の顔がわかる原料にこだわり、また製法にもこだわってつくられた信州味噌を使ったスイーツやラーメンが、六文銭がトレードマーク(家紋)の真田一族の郷、県東部の上田市内で販売されています。
その名も「はい!よろこんで 奏龍|信州上田 奏龍味噌イベント」。
手軽に味噌を味わえ、改めて味噌の美味しさに出会えるこの催し。スイーツは、上田市内の和・洋菓子9店舗でアイデアを凝らしたその店自慢のオリジナル味噌スイーツが販売されており、さらにラーメンは、上田市内とその周辺地域の合計11店舗で提供され、上田エリアを巡る楽しみを倍増させています。


「自分たちがつくった味噌で地域を元気にしたい!」
味噌の本場・信州で味わう、地産にこだわり丁寧に手作りされた信州味噌を使ったオリジナルスイーツとラーメン。上田市内をまわった数だけ味噌の奥深さを知ることになるでしょう。その陰には、地元を楽しく盛りあげようと、情熱溢れる若き男性2人の存在がありました。
味噌の原料に欠かせない大豆の生産者、そしてその大豆を使って味噌をつくる職人。そんな2人の願いはただひとつ。
「自分たちがつくった味噌で地域を元気にしたい」ということ。
ふたりの思いは地元生産者や職人を巻き込んで、上田市内は今、熱くて甘い、美味しさに包まれているのです。

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信州味噌・醤油醸造元大桂商店の小林大史さん(左)と
大豆生産者の柿嶌洋一さん

味噌の原料の大豆を生産するのは、上田市武石地区で代々農業を営む柿嶌(かきしま)洋一さん(32)。柿嶌さんをはじめ地元で農業を盛り上げようと志を同じくする農家が集まって結成された、農事組合法人「エコーズフェス武石」で行っているのが、清酒用の酒米に転作用のソバ、そして長野県で開発された特大粒の大豆「つぶほまれ」。この大豆は、生産性が上がらず栽培が難しいとされるものですが、煮豆にして食べたその味わいは、大豆のもつ本来の味わいが楽しめる美味しさで、「この大豆をこれからもずっと作っていきたい」と、栽培当初から柿嶌さんの思い入れの強いものだったそうです。

熱い想いに魅せられて
そんななか、エコーズフェス武石で柿嶌さんらが育てる酒米を使い、地元の酒造会社が造り上げた日本酒「奏龍(なきりゅう)」も好評です。地元の恵みを、同じ地元のプロが美味しい酒に造り上げ、それを地域の人々が好んで口にする――そんな地産地消に取り組む姿と、この酒の美味しさに強く惹かれたのが、1821(文政4)年創業の信州味噌・醤油醸造元「大桂(だいけい)商店」の7代目、小林大史(だいじ)さん(39)。大豆を作る生産者、そして大豆を使って味噌をつくる職人の熱い気持ちが合致して、こだわりの味噌づくりへの扉は開かれたのです。

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大桂商店が手掛ける味噌はすべて、創業時より現在に至るまで一貫して、昔ながらの製法で手作りされているもの。量産することなく、また加温によって短期で醸造することなく、一年に一回、春先に味噌を仕込み、夏の暑さに任せて発酵を促し、ようやく季節が落ち着く秋に完成するという、昔から信州の風土に合わせて行われてきた、天然醸造でつくられる味噌です。加熱殺菌をしないため人体に有益な酵母や乳酸菌が生きている状態の生味噌で、もちろん無添加。
「(この味噌でつくった味噌汁は)一生飲んでも飽きない、本物の味噌をつくっています」と自信を持って応えてくれる小林さんのもとには、消費者の方から「ようやく本物の味噌に辿り着きました」という喜びの声をもらうこともあるのだそう。

流通の発達とデフレへの波に押され、今ではほとんどなくなってしまった幻の本物志向の信州味噌。そんな味噌への強いこだわりをもつ小林さんが、柿嶌さんらが栽培する大豆・つぶほまれを使ってつくり上げた味噌は、2009年、日本酒と同じ名称の「奏龍(なきりゅう)」として誕生しました。日本酒と同じ名前を付けたのは、生産者が解るようにとの考えがあったそうです。さらに味噌に加える米は地元産、そして塩は沖縄のシママース塩と、加えるのはたったこれだけ。素材の美味しさと、信州の風土と気温の影響によって、春から暑い夏を過ごした味噌は、ただ加えるだけでいつもの料理がより一層美味しくなるのです。

味噌の美味しさをもっと広めたい
しかし、美味しい味噌といえども、味噌は味噌汁に入れるものとして確固たる地位にあり、またその家で慣れ親しみ使い慣れている味噌があるもの。そこで、奏龍味噌をもっと多くの人に、様々な方法で味わってほしいと考え出されたのが、スイーツやラーメンとのコラボなのです。
「まずは地元の人に、そして様々な年代の人に、この美味しい味噌を味わってもらいたい。そして地元発信の本当の味噌の美味しさに気付いてもらいたい、という願いがあるんです」と話す小林さん。ただしこの奏龍味噌、スイーツに使うには塩分が強いため、スイーツに合う配合に変えてスイーツ用の味噌を完成させたそうですが、そこには小林さんが味噌づくりを手掛ける以前、料理人として数々のホテルやレストランなどで、和洋中ほか各国の様々な料理に腕を振るってきた経歴も影響しているでしょう。

ちなみにラーメンは今年2013年で2回目の開催。第1回として開催された2012年1月から3月は6店舗の参加でした。今シーズンは加盟数を増やし、無添加で本物志向の味噌の、その香りの良さとあまりの美味しさに惚れ込んだラーメン店11店舗が、個性あふれるオリジナル味噌ラーメンを提供中。ただしスイーツ、ラーメンとも味噌の時期に合わせての2013年3月31日まで、冬場だけの開催となっています。

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「自分ひとりだけがいいものをつくってもダメ、産地をつくらないと意味がないんです。そして、それが地元の人たちの誇りになって、またこの地域が以前のように活気を取り戻すことを願っています。そのためにも、つくるからには誇れるいいものをつくっていかなければならないとも思っています」と、先を見据える眼差しで語る柿嶌さん。
「海には海のもの、山には山のもの。ただ気付かないだけで、身近にもイイものが実は眠っているんです。それを自分にできる方法で発掘し、現在のニーズに合わせて提供し、光りを当てていけたら......」とも語る小林さん。
「もうやりたいことが多過ぎて、あと10年あっても時間が足りないよ」と、2人は最後に言い残しながら、足早に部屋を後にしていきました。

信州味噌・奏龍を使ったスイーツとラーメンについての詳細は「はい!よろこんで 奏龍」をご覧ください。

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ラーメンのあとのスイーツも楽しみ

最後に、「はい!よろこんで 奏龍」で提供されているオリジナル味噌スイーツの一例をご紹介します。

20130109miso07.jpg「和洋菓子 さわむら」が手掛けるのは、スティックチーズケーキ。
包みを開けた途端フワリと優しい味噌の香りが鼻腔をくすぐり、クリームチーズと味噌の味が上手く調和して、クルミのカリカリした食感がアクセントになる逸品です。

20130109miso08.jpg「パティスリー ルル」で販売されているのは、キャラメルとショコラのケーキ。
味噌が使われているといわれなければ気付かないかもしれませんが、チョコとキャラメルの濃厚な味わいは、癖になる止まらない美味しさです。


20130109miso09.jpg「ササガワベーカリー」が作ったのは、信州味噌ラスク。
焼きおにぎりのような、味噌の風味と味わいが懐かしく感じる逸品です。


◇参考リンク
大桂商店
〒384-0404 上田市上丸子991
電話 0268−42−2054
※大桂商店さんの味噌は流通にはのりませんが、蔵元のほか、地元の直売所・上田市丸子農産物直売加工センター「あさつゆ」農畜産物直売所「マルシェ国分」にて購入できます。

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