信州を代表する食文化発祥の地がこの古寺だ

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年の初めにひとつ想像してください!! 「長野県の食」「信州の味」といったら、あなたは、なにをイメージされるでしょうか? ソバ、野沢菜、おやきなどを思いおこす方が多いかと思いますが、ここで絶対に忘れていただきたくないものが、そうです「味噌」なのです。

日本人の味覚の原点ともいうべき味噌。今では汁物などの調味料の代表格といえる存在ですが、古くは貴重なタンパク源でもありました。その種類も多種多様、21世紀の今も、わたしたちの台所には欠かせない存在です。

そして味噌のなかでもひときわ有名なのが「信州味噌」というわけ。

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信州味噌は全国的に有名
長野県の味噌の出荷量は年間19万トンをこえ、全国シェアの約4割にもなります。信州味噌の特徴は、「淡色辛口の米味噌に分類され、山吹色を呈し、光沢がある冴えた色で、やや酸味があり、特有の香気・風味をもっている。」(長野県味噌工業協同組合連合会ホームページより)と評されており、長野県人はおろか、全国的にも馴染みの深い味噌なのです。

冬の終わりに各家庭において大豆を煮て(蒸して)から潰し、味噌玉にしてしばらく寝かせ、発酵させて作る味噌づくりが、信州各地の家庭では行われていたものですが、今日では、それもあまり見られなくなりました。

信州味噌のルーツはここ
そうした信州味噌のルーツが、なんと長野県佐久市にあると聞き、早速訪ねてまいりました。ルーツが佐久市にあるという話は長野県人でさえ、ここ最近知った人が多いのが正直なところでありますが、佐久市誌や専門家の研究などによると、どうやら信州味噌のルーツを探求する旅の行き着く先は、佐久市安原にあるこの古刹(こさつ)にたどり着くようです。(冒頭写真)

臨済宗妙心寺派の「宝林山、安養寺(あんようじ)」。この古いお寺は味噌・醤油の製法を中国から日本に伝えた鎌倉時代の高僧「覚心」(信濃国筑摩郡[現松本市]出身)の遺志により建立された寺であり、安養寺味噌すなわち信州味噌の発祥の地といわれています。

安養寺味噌は長期熟成が鍵
たしかに冷暖房のなかった時代には信州は冷涼で、蔵の中で適度な温度と湿度を一定に保ち、味噌が熟成するのに相応しい気候だったといえるでしょう。そんな佐久市で信州味噌のルーツといわれる「安養寺味噌」を約8年前に復活させた江戸時代から続く老舗(資)和泉屋商店を訪ねました。

mr_abe_izumiya.jpg和泉屋商店の阿部専務さんによると、他の味噌と比較し、安養寺味噌は仕込みの過程に違いはないということですが、

「材料に安養寺の田嶋現住職と檀家のみなさんが栽培した大豆を使用すること、味噌の熟成期間が他の製品であれば半年から1年半であるところを2〜3年じっくり長期熟成させています」

とその違いを説明していただきました。工場化がすすんだ現代では、短いもので5日の醸造期間で出荷される味噌があることを思えば、驚異的な熟成期間です。

まろやかで香りがひきたつ
製品となるまでには大豆の蒸し加減など難しく苦労があったようですが、平成21年は年間2回の仕込みで約6トンを生産したようです。このこだわりの製法により、塩辛さがよりまろやかに、味噌独特の香りが引き立つ味噌が完成しました。

misogura.jpg「味噌汁はもちろんですが、きゅうりなどにつけてそのままの味と香りを楽しんでほしい」

と食べ方をおすすめしていただきました。聞けば聞くほど味わってみたくなるではありませんか。そうそう安養寺味噌からはいささか脱線しちゃいますが、ここ和泉屋商店さんには若い人たちが信州味噌に興味をもってもらおうと地元パン屋さんと共同開発した「味噌マカロン」があり、これも人気急上昇中です。味噌の風味がいい感じでこちらも注目かな。

佐久といえば安養寺ら〜めん
さて話をもとに戻しまして、安養寺味噌といえば、「安養寺ら〜めん」を忘れてはなりません。このラーメンは、味噌の復活と呼応するように、地元のラーメン店主たちによる「佐久拉麺会」と関係者により開発されたご当地名物で、テレビ番組でも紹介された人気沸騰中のラーメンです。開発プロジェクトを支えた佐久市商工会議所のご担当者に開発の裏話をお聞きすると「安養寺ら〜めん」は安養寺味噌をみそダレに8割以上使用することを基本とし、各店が独自の麺、スープ、具材を使ったオリジナルの安養寺ら〜めんを開発しており、現在では16店舗で提供がなされています。

anyoujimiso.jpg「安養寺味噌は、2年以上長期熟成されとても上品な味のため、ラーメンにすると麺やスープが前面に出やすく、味噌の風味を活かしたラーメンの開発には試行錯誤の繰り返し」で、開発には苦労が多かったようです。しかし仏農商工官の人の繋がりがついに「安養寺ら〜めん」として結実。完成後は中高年の方からも食べやすいと好評で、まろやかで上品な味噌の味わいを堪能しに思わず各店をはしごしたくなります。今後について「まずは地元に愛され、そこから広めていきたい。佐久鯉とともに佐久に来ていただき味わってほしい。まちおこしにつなげて地域を元気にしていきたい」と担当者は力強く語ってくれました。

安養寺ら〜めんスタンプラリーが今年も2月末まで開催されているので、この機会に信州佐久に一度足をお運びください。信州味噌発祥の地での新たな鼓動を感じられることでしょう。


あわせて読みたい:

 ・自分の家で熟成させるところが味噌の味噌(2007年2月28日)


お問い合わせ・参考サイト:

佐久市商工会議所
〒385−0051
長野県佐久市中込2976−4
電話0267−62−2520
佐久市商工会議所公式サイト

安養寺ら〜めんガイド(軽井沢ナビslow-style.com)

みそ醸造元 合資会社 和泉屋商店
〒385−0022
長野県佐久市岩村田789−2
電話0267−67−2062
和泉屋商店ホームページ 

宝林山安養寺
長野県佐久市安原1687
(JR佐久平駅から車で約20分)
0267−67−4398
アクセス地図
宝林山安養寺の紹介(JA佐久浅間おすすめスポットページ)

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