良く晴れた日の休日に、まだ雪の積もる山の木立の中を歩いてきました。目の前にはどこまでも続く白い雪原、空に向かって高くそびえる樹木たち、そして広がる青い空と、静寂のなかこれらが織り成す空間は、陽の光も手伝って、キラキラとした光にあふれてとても神秘的です。頬にヒンヤリ伝わる風は心地良く、大きな自然に包まれて、気分もスッキリ、リフレッシュできることでしょう。
訪れたのは、善光寺から車でおよそ30分の戸隠神社奥社。雪のシーズンを迎えるまでは、パワースポットブームなども手伝ってこれまでに見たことのない程の大勢の人が訪れたこの場所も、雪のある今は人出も少なく落ち着きを取り戻していました。
今回はその奥社の参道周辺をおよそ2時間あまり、地元のガイドさんに案内してもらいながらの散策です。雪上を歩くのに欠かせないスノーシューは、途中で脱げることがないよう前足をしっかりと固定して、サングラスも忘れずに。そうそう水とおやつもちゃんとリュックに入れて、では、参道入り口に立つ鳥居をスタートです。
見たこともない世界が見える
なんとこの鳥居、その昔は鳥居に腰掛けることが出来たほどに雪が積もったこともあるそうですが、現在の積雪はおよそ1.5メートル。夏場は深い笹の葉などに覆われて、迷子になる危険もあるため到底入っていけない場所も、一面が雪に覆われるこの時期ならば笹も厚い雪の下。だからちょっと高い視線から観察できることや、繁る笹の海原のなかで見ることが出来なかった木々と出合えるのも、今だからこその愉しみ。
雪を楽しむための履き物
そしてこの雪上を誰もが安心して歩くのを可能にしてくれるのが、スノーシュー。初めての人でも簡単に靴に装着して歩くことが出来る、雪山散策の頼もしい味方で、足をあまり持ち上げないよう、引きずるようにして歩くのがポイントです。行く手に広がる雪原の、道なき道を自在に進み、雪面に沿って登ったり下ったり、簡単に雪上を歩きこなせるこの道具に、まるで気分は森の住人。
すぐそこにあるワイルドライフ
そしてふと目を止めた先に、野生動物の温もりを発見。枝をへし折り、木の皮をかじった痕跡を残したのは、猿です。食料のないこの時期、猿は、木の芽や軟らかい枝先、木の皮や笹の苦い葉っぱなどを食べて飢えをしのいでいるそうです。
そして見上げた木の高いところには、鳥の巣状に葉が落ちることなく固まって残っているものが。じつはこれ「熊だな」といって、文字通り熊が、ドングリなどの実を食べる際に枝を折って食べ、その折った枝が集まって出来たものだそうで、熊はブナやミズナラなどドングリの実を食べるのに、枝の細いところまでスルスルと20メートル以上もあっという間に登ってしまうそうです。でも熊は木を降りるのは苦手なようですが。
木々の1本1本がいとおしい
戸隠神社奥社周辺に広がる木々は少し見てまわっただけでも、ハルニレ、ヤチダモ、ミズキ、カンボク、メグスリノキ、ハンノキ、キハダ、ダケカンバなどたくさんの種類の木々がありました。また、ある一帯に植わる白樺の木は樹齢70年程と、そろそろ寿命を迎えているそうですが、しかし白樺の樹は切り倒されることなく自然に朽ち果て、その後はブナなどの樹がバトンタッチをしてこのあとの一帯に繁殖していくという自然のサイクルなのだとか。
今までじっくり見ることもなかった木々を観察し、簡単に雪の上を歩いていけるこの身軽な楽しさに、時が経つのも忘れて、なんだか雪や木々と友達になれた気分。時にはここに生息する動物の足跡を見つけたり、見晴らしが良くなった枝からは、鳴いている野鳥の姿も見ることができます。さらに山の様子をスケッチしたりと、この時期山との親しみ方は人それぞれ。またここでは時折木々の隙間から望める荒々しい岩肌をした戸隠連峰もまた見ものです。
雪の信州を抱きしめる
春の遅い信州は、スキーやスノボーなどといったスピードを楽しむものばかりでなく、ゆっくり雪上を歩いて散策しながら五感をフルに働かせ、自然との一体感を味わいながら誰もが安全に自然と親しめる楽しみが広がっています。ただし、雪山はどこも同じような景気が広がっていて迷い易く危険ですので、ガイドの案内に従うか、よく知っている場所を歩くなどコース選びには念を入れてください。そしてお出掛けは、天気の良い日を選んでお楽しみください。
今ならまだまにあいますよ
厚い雪に覆われたこの場所でも、すでに厳しい冬の寒さを乗り超えて、今花芽が膨らみだし、春は少しずつ近づいてきていました。信州の自然が本格的な春を迎える直前の今、あなたも雪上散策にいらっしゃいませんか?
戸 隠 高 原 の 春 は も う す ぐ
参考サイト:
・戸隠観光協会公式ホームページ
・スノーシュー専門ウェブサイト スノーウォーク