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オオアカウキクサはなぜここに生息するのか

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左がオオアカウキクサ 右がウキクサ 大きさがまるで違う

水がこの地球ではどれほど大切なものかを広く伝えなくてはならない時代になっています。「人為的な活動および地球規模の気候変動による水循環系の変化は、現代社会の持続可能な発展を根底から揺るがす恐れもあり、重大な認識を持って健全な水循環系の再生に取り組む」という危機感の高まりから「安全な水、きれいな水、おいしい水にあふれる21世紀の日本と地球を目指し、水循環系の健全化に寄与する」ことを目的にする賞が「日本水大賞」です。日本水大賞委員会(東京都千代田区)が主催、これまでも水環境保全に貢献する優れた研究・活動を表彰してきました。長野県佐久市にある臼田高等学校環境緑地科の農業研究班(グリーンライフ科農業クラブ)の生徒たちの研究は、絶滅危惧種に指定されているウキクサ(浮草)の、学名を「アゾラ」といい、長野県では『オオアカウキクサ』という名で知られるウキクサの保護と、アゾラの稲作への活用に貢献しつつあって、2008年にはその日本水大賞農林水産大臣賞を受賞しています。

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地蔵池の調査を続けている現在の農業クラブのメンバー

農業研究班の受賞理由は「佐久市十二新田集落協定による自然生態系保全プロジェクト−−絶滅危惧種オオアカウキクサを使った水田管理」という研究に与えられました。長野県のレッドデータブック絶滅危惧種に指定されているオオアカウキクサ(学名=アゾラ)の保護と、これの農業利用に関する研究、並びに普及啓蒙活動に対する評価です。

『オオアカウキクサ』は、地元の佐久市小田切・十二新田地区の地蔵池などに自生している水生のシダ植物で、この地域に生息する固有の水草でした。臼田高校グリーンライフ科農業クラブの生徒たちは、2005年から『オオアカウキクサ』を使った水田管理の実験と研究をはじめ、現在もその調査研究は受け継がれて継続しています。

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地蔵池のオオアカウキクサの保護を訴える高札


人々の態度を高校生が一変させた
このウキクサは、除草剤に弱く、増殖すると水田を覆い、地元では昔から"稲の生育を悪くする雑草"と農家の人は見てきました。しかしこの生徒たちの研究をきっかけとして、浮草にたいする人々の態度は一変し、今では『オオアカウキクサ』の保護へ向けて地域が一体となっています。

研究のきっかけは「中山間地直接支払事業」という、国からの支援制度を受け、中山間地といわれる平野の外縁部から山間地の地域を守る活動をしている佐久市十二新田集落代表の井出誠さんらと学校が話し合い、教育との連携が取り決められたことにはじまります。

臼田高校の生徒たちの研究成果により『オオアカウキクサ』を水田に入れることで、稲の生育や草丈に緑肥効果が現れ、雑草を抑制、収量も多くなることがわかったのです。緑肥(りょくひ)とは、栽培している植物を、収穫せずそのまま土を一緒にして耕し、後から栽培する作物の肥料にすることです。

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これが絶滅危惧種 オオアカウキクサ

このウキクサを守るためにできること
生徒たちは『オオアカウキクサ』を守るための案内板を設置してもらいました。地元の切原小学校の児童が稲の学習でも『オオアカウキクサ』について扱ったり、JA佐久浅間の農業体験教室も臼田高校の水田で開かれ『オオアカウキクサ』についての学習や、田植え体験を行うなど、地域が連携してその保護活動が進められています。

今ではこの『オオアカウキクサ』が水田管理に効果があることが地元の人々に次第に理解され、地域に減農薬や水質改善への取り組みも広がってきました。臼田高校の山下昌秀先生は話します。「地域連携の中で支えられながら、生徒たちの調査が続けられました。だから生徒達も自然や農業にいっそう関心がもてたと思います」と。

生徒たちの粘り強い研究もまた信州の自然と農業を支えるひとつの大きな力となつているようです。以下に、生徒たちの論文の冒頭部分を引用しておきます。これを読み、関心を持たれた方は農業班の研究を臼田高等学校環境緑地科のホームページからダウンロードして、全文を読むことができます。

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地蔵池の調査をする農業クラブのメンバー(佐久市十二新田区)


佐久市十二新田集落協定による自然生態系保全プロジェクト
絶滅危惧種オオアカウキクサを使った水田管理

長野県臼田高等学校 環境緑地科 農業研究班



はじめに

私たちは2004年1月より片貝川の上流部の佐久市十二新田で長野県のレッドデータブック絶滅危惧種Ⅰb類に記載されているオオアカウキクサの調査研究をしています。このウキクサは通常のウキクサ(単子葉植物)と違い、シダ植物に分類されるものであって、学名をアゾラといいます。このアゾラという言葉はラテン語で"乾燥で死ぬ"という意味で湿地に生息するものであり、現在の乾田が主体となっている日本の水田からは姿を消しつつあります。

地蔵池のアゾラを兵庫県・人と自然博物館・鈴木武先生にDNA鑑定をお願いしました。その結果、東日本に分布しているオオアカウキクサ(アゾラ・ジャポニカ)但馬タイプといい、外見的な特徴から西日本に分布している大和タイプとは明らかな違うものと判定されました。

またそれぞれ分布域からも言えるようにアゾラはよそから持ち込まれたものではない、この地区固有のものにほぼ間違いないとの鑑定していただきました。このアゾラは空気中の窒素を固定してアンモニアに変換するので窒素肥料として利用できます。また西日本では増殖して水面を覆うことで草退治に利用したり、アイガモ農法でこれを飼料として使用しています。そのため農業等の利用目的で外国より持ち込んで、繁殖し問題となる事例も発生しているようです。そこで私たちはアゾラの生息できる水田や農村環境を知り、水田環境を保全し地蔵池固有のアゾラを地元で利用することを目的として研究に取り組んでいます。

〔以上原文のまま〕


参考サイト:

 ・長野県臼田高等学校環境緑地科ホームページ

 ・長野県臼田高等学校ホームページ

 ・日本水大賞


 ・アゾラについて

 ・中日新聞 希少な浮草でエコ稲作 絶滅危惧「オオアカウキクサ」

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