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おしゃれでカッコいい、若者たちの森づくり

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単純に、自然が好き。でもそれだけじゃなくて「なにかしたい」
左下から時計回りに、安斉さん、田崎さん、宮本さん

都会で暮らし、普段は一般の会社に勤めている若者たちが、自ら進んで地方の森に入り、自然とのふれあいを楽しみながら森林を守るためのボランティア活動をする輪が、いま広がっています。そこは東京から新幹線で70分、バスではおよそ3時間という距離に位置する「都会に近い田舎」、マウンテンカントリー長野県は佐久市の大沢地区です。森を再生させるために都市と農村を結びつける活動を見てきました。

ボランティアの参加者は10代後半から30代前半の若者です。全員が森林保護についての知識や技術をとりわけもっているわけではなく、いわば初心者ともいえる存在。しかし彼らの共通意識は「自然が好き」「何かしたい」という思いからくる「行動力」であり、さらには「人と関わることが好き」だということ。そんな若者たちが休日を利用して、都心から信州の森へやってくるのです。

日本の森のために若者の力を集めよう
彼らの活動をサポートするのがNPO法人「森のライフスタイル研究所」です。地方と手を取り合い、次世代を担う若者と共に森づくりを行なうことで、全国の荒廃した森林や里山の再生・保全をしようと活動中の団体です。農業と同じく、林業でも、高齢化・担い手不足が課題となっている今、若者たちにこそ働きかけその力を集める必要があると、彼らは考えました。

取材にうかがったのは「森と洋服のプロジェクト」というグルーブ。NPO法人「森のライフスタイル研究所」が、長野県佐久市を拠点に活動するNPO法人「信州そまびとクラブ」らと連携して昨年に設立されました。佐久市大沢財産区にある経済性を失い手入れが不足したカラマツの人工林が、放置されたために広葉樹化している典型的な日本の森を、プロジェクトでは、山主の意向を踏まえてもう一度健康なヒノキの森へと再生しようとするもの。

「おしゃれでカッコいい森づくり」を目指す
プロジェクトには、広葉樹伐採などはじめて森づくりに関わる人たちには一部難しい作業もありますが、きちんとしたスタッフとともに共同で作業を行なうことで、課題を解決しながら市民みんなで森を創りあげていくもの。特徴は、ファッションを切り口に「おしゃれでカッコいい森づくり」を目指すことで、森づくりをしたことがない若者たちでも参加しやすい活動を企画する点にあります。知識がなくても、同世代と楽しく活動ができるという入り口の広さで、多くの若者に森の保護について考えるきっかけを与えているようです。

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「信州そまびとクラブ」のサポートで、森林保全作業はどんどん進みます

みんなおしゃれでカッコいい!
先週末の9月11日、長野県佐久市大沢地区を舞台に集まった参加者は、合計36名。男女比はおおよそ4:6。参加者の一人、東京都の会社に勤める安斉さんにノコギリで木を伐りながら感じることを聞いてみると、「あ〜!楽しい!」というシンプルな答えが返ってきました。小柄な女性もたくさんいましたが、だれもが積極的にノコギリを握って木を伐り倒していきます。どなたも不思議に惚れ惚れしてしまうような姿でした。それぞれがカラフルな洋服を着て、皆、真剣なまなざしで木を伐るのです。時折あちらこちらから聞こえる笑い声が、とても楽しそうに爽やかな森の中に響いていました。

「信州そまびとクラブ」の一員である松村さんは「参加してくれる子たちはみんな、積極的だよね。楽しそうに進んでやってくれるからありがたいよ」と目を細めます。松村さんが感じる森づくりの魅力は、自然の息吹を感じながらする山仕事の楽しさ、大きな木を伐り倒した瞬間の独特のたまらない感触、手をかけた木々がゆっくり育っていく様子の愛おしさだといいます。

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信州そまびとクラブの村松さん率いる第1班のメンバーのみなさん。学生、会社員など所属はそれぞれ違うものの、自然が好きで森づくりが楽しいと口々に話す。左上から時計回りに、本村さん、田崎さん、石井さん、宮本さん、松村さん、木下さん、安斉さん

人の手によって植林され生長した森林には人の手が必要
林野庁の統計によると、日本の国土の約7割が森林です。そのうちの6割が天然林。天然林の森林は人の手を入れなくても自然に再生を繰り返します。残りの約4割がスギ、ヒノキ、カラマツなどの人工林です。人工林は文字どおり、人の手によって植林され生長した森林で、手入れをし続けなければ荒れ果ててしまいます。ですから人工林は除伐(じょばつ)や間伐(かんばつ)という作業を通して、手入れをしてやる必要があります。

除伐とは、木が太く健康に生長するためにクリ、ヤマザクラ、ダンコウバイ、ホウノキなどの雑草木や樹木を取り除く作業です。間伐とは、除伐で大きくなった木が込み合ってきたときに、一部を伐って間隔をあけ、一本の木に十分な日光と栄養がいきわたるようにするための作業です。どちらも人工林の生長を助けるために必要な作業で、農業で言えば、間引き(まびき)や摘果(てきか)作業が同じような役割を果たします。そして今回の活動の中心となる作業は除伐でした。

なぜ国産の木を使うようにしなくてはならないか
現在、外国からの安い外材が輸入されて国産材が使われなくなったため、日本の人工林を管理する費用がなくなり、荒廃の目立つ森林が目立ちます。森林は私たちの生活に必要な木材を供給するだけではなく、土砂災害や洪水を防止する機能や、生き物のすみかを守る機能、川や海の水を栄養豊富できれいに保つ機能、二酸化炭素を吸収して温暖化を防ぐ機能をもっています。人工林の多くは戦後に植えられており、植えてから30〜50年を経過すると木材として利用できる時期(収穫期)を迎えますが、収穫されることなく放置されてしまっている森林も多いのです。人の手をいれて、樹木を植え、育て、そして伐採するという循環をさせなければ、森は荒廃し、森が私たちに与える多様な恩恵も機能しなくなってしまいます。

したがって、国産材を積極的に使い、国産材への需要を高め、資金を山に還元する必要があるのです。私たちが国産の農産物を育て、選び、食べる必要があるのと同じように、日本の森林を育むためには、私たちが「国産の木」を使うことが必要なのです。

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除伐作業を始める前、辺りはこんなに暗かったのですが

取材日は夏の日差しが和らいだ頃とはいえ、作業をはじめる前の照る日差しの下では、汗をかかずにいられないくらいの陽気でした。佐久市臼田にある天体観測所「うすだスタードーム」から15分ほど山を登った場所での作業です。クリ、ヤマザクラ、ダンコウバイ、ホウノキなどが生い茂る森の中は、過ごしやすく、まさに「作業日和」でした。

やってみると大変さもわかるけれど
この涼しい木陰を作業によってなくし、地面や自分たちが生きてきたよりも長く佐久の山で生きてきているカラマツの木々に十分に太陽が当たるようにしなければならないのです。参加者は6〜7人の班に分かれ、ノコギリで伐れるくらいの太さの木を次々に倒していきます。取材者も作業に参加させていただきました。木は数分もかければ倒せるものがほとんどでしたが、何本か倒すと体全体から汗が流れ落ちてゆきます。実際の森づくりの仕事は、これ以上の大変な労力がかかるのでしょう。

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2時間ほど作業を進めると地面に日が差すまでに周囲は明るくなりました

森林と若い人たちとを結びつけたい
NPO法人「森のライフスタイル研究所」の代表を務め、精力的に各地で活動を企画する竹垣英信さんは、活動を通して「森林と若い人たちとを結びつける"きっかけづくり"をしたい」と話します。あくまで若者が自ら進んで楽しく活動を行なうことを願っているためでしょう、仲間づくりをしようとする明るくさりげない気遣いが随所に感じられました。

すでに秋の気配も漂う信州の森に集まった、出身も所属も経歴も違う若者たちの間には、いつしか「仲間意識」が芽生えていました。彼ら彼女ら同士の絆、彼らと地方の人々との絆。この森林を再生させることを目的としたボランティア活動で明るくなった信州の森は、きっといのちを吹き返すはずです。

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活動後は青空の下で信州の食材をたっぷりつかったバーベキュー! みんなお腹がぺこぺこの様子で、お肉や野菜が次から次へと口に運ばれていきました。ささやかながら、当編集部からもバーベキュー用の信州牛とソーセージ、JA中野市産のキノコを差し入れさせていただきました。地元産食材を「おいしい〜!」と満面の笑顔で食べてもらえた、嬉しい瞬間です

関連するサイト:

 ・NPO法人 森のライフスタイル研究所
 ・森と洋服のプロジェクト
 ・信州そまびとクラブ

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