おいしかった」のひと言に支えられてます

不定期連載 いつまでも若いあの人に聞いた

イントロダクション
大自然に抱かれながら、およそ210万人が暮らす信濃の国――長野県。季節が変わるごとにみせる色鮮やかな風土や独自の食習慣の一端をこれまでも、当ブログマガジンでは紹介してきました。伝統や食を大切にする心は今でも脈々と受け継がれています。当然食習慣と健康には、大きなつながりがあります。そこで、気持ちが明るく前向きで健康であり、地域で存在感にあふれ影響力のある方々に、健康や食についてうかがっています。不定期連載「いつまでも若い人シリーズ」の今回は第3回目です。

 

ms_miyashita.top

 

仲間が支え、感謝を忘れない

長野県の南部、伊那谷のほぼ中央に位置し、東に南アルプス、西に中央アルプスを望む位置にある「(株)ふるさとの味いいじま」(上伊那郡飯島町)の本店で、代表を務める宮下たみ子さん(72)に話をうかがいました。

かつて「ふるさと味の研究会」として16名の仲間たちで郷土食の研究が重ねられていたとき、信濃路「道の駅・本郷」が建てられることになったため、その好機を逃すまいと、みんなで奮起して動いたことがきっかけで、本店が開店。看板メニューの五平もち『天領五平』にはじまり、おやきやうどん、そばなどのメニューは「手作り」「地元産の食材」にこだわりぬいています。さらに衛生管理や経営にも力を入れて表彰も受けました。

わたしは強いからね
話しぶりからも、またその声の張りや口調からも、リーダーとしてお店を引っ張る宮下さんの姿が感じとれます。たみ子さんが割り振りをしている従業員の出勤予定表を見せてくれました。宮下さんはやさしく微笑みながら続けます。

ms_miyashita_a

 

「わたしは強いからね。言うときは言うのよ。みんなに上手く働いてもらうのは大変なの。みんな平等にしなきゃいけないから。得意不得意はあっても、それだけで判断しちゃ駄目。みんないいところがあるし、頑張ってくれるんだから。せっかくやるならトントンがいい。もうからなくてもいいから。お金の価値はみなちがうから、分かってもらうのが大変な時があるけど。でも、このお店が赤字を出さずにやっていけるのは、経験のある人も新人も、みな平等だからなの。本当にみなよく協力してくれるんですよ」

お仲間のみなさんに、たくさんの感謝の気持ちを、直接伝えられているのですか?

「伝えますよ。でもある程度はしっかりしなきゃ。『いいよ、いいよ』じゃ駄目。わたしはね、強いからここぞというときは言うし、頭も下げるのよ」

落ち込んでしまったり、元気が出ないときもあるのではないですか?

「ありますね。けれどやっぱり仲間が励ましてくれるから、それが支えになっているの」

日頃、健康に気をつけていることは?

「余りしつこいものは嫌いだし、食べないようにはしているけれど。本当に丈夫がとりえで、これといって(健康の秘訣は)何もないんです」

お若いのは、このお店にやりがいを感じていらっしゃるからでしょうか?

「そうですね。若くないけど(笑)でもこれから夏のイベントが続くから、お弁当を120個作ったりしなきゃいけなくて、注文をいただいて喜ぶ人もいるけど、衛生管理で病気を出しちゃいけないから、すべてが終わるまでは『何かあるんじゃないか』ってそれはそれは心配で。気が気じゃないですよ」

oyaki

 

看板メニューの『天領五平』。山椒が効いた甘味噌はとてもいい組み合わせ。ここで使われてる山椒もみんなで朝4時に起きて採りに行くのだそうだ。「たみちゃんたら朝起きるのも本当に早いんだもん(笑)」とは仲間の方の弁。

そこまで情熱をかけられるのは、郷土食や手作りの味を守りたいという強い気持ちを持たれているからですか?

「ほんとうに人間は言葉ひとつ。すべては『おいしかった』って喜んでくれる人の一言に支えられるものなの。みなさんのおかげでやれてます」

後記 地域の味の守り人の先頭に立つ宮下さん。強い意志と行動力を持つだけでなく、愛情にあふれる頼もしいリーダーでした。彼女は他にも、関東地方の大学と連携して学生たちに伝統料理を教えています。今年で約束の期間が終わるので、現在は次に活動できる学校を探している最中。地域の味を残すべく、若者たちにも熱心に関わりを持ち続けようと、熱心です。「まだまだご活躍されるんですね。すばらしいです」と話しかけると「なんもすばらしいことないよ〜。みんなが協力してくれるおかげ」との返事。どこまでも「感謝」の言葉を口にし続ける宮下さん。人の言葉に支えられて、元気に活躍できるのだと心から感じているからこそ、その感謝の気持ちが言葉と行動にあらわれるのでしょう。

アクセス:

ふるさとの味 いいじま(小さな道の駅「本郷」)
〒399−3704
長野県上伊那郡飯島町本郷2406番地192
(国道153号線沿本郷与田切地籍)
電話:0265−86−6415
ふるさとの味 いいじまウェブサイト

あわせて読みたい

第1回 わしの身体はこの山が育てたものでてきてる(長野市・臼井基規さん)

第2回 外食しておいしく感じないものはご飯ですね(小谷村・相澤つたゑさん)

1247583600000

関連記事

ブルーベリーとともに育っている夢農場の夢
お出かけスポット

ブルーベリーとともに育っている夢農場の夢

今週は「ラ・フランス」をプレゼント

今週は「ラ・フランス」をプレゼント

「ていねいに」を大切にするアルプスが見えるカフェ:箕輪町
グルメ・カフェ

「ていねいに」を大切にするアルプスが見えるカフェ:箕輪町

料理にもフルーツ!くだものの里のカフェ(松川町)

料理にもフルーツ!くだものの里のカフェ(松川町)

新着記事