"農業は楽しくやれればよいかと思います"

シリーズ 長野県農業のあり方を変える若き農業者群像

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長らく若者の頭にこびりついていた「農業を否定的に考える」思考法が、いま少なからず変わりつつあるようです。渋谷のいわゆるギャルたちが農業に汗を流し、農家の子息でつくるネットワーク組織が、「農業はカッコいい!」とアピールしはじめています。農業感がゆっくりと変化しはじめているようです。

農業の後継者不足が深刻な問題だということは、これまでに当ブログに登場いただいた先人たちからもたびたび口にされました。しかし、長野県内にも楽しくかつ真剣に頑張る若い農業者たちが出現しています。少なくともこの人たちは手を土まみれにすることを汚いとは考えない。

時代が大きく変わりつつあるいま、彼らがどのような考えで農業に取り組んでいるのか――。不定期ではありますが、若き農業者に登場してもらうインタビューシリーズをスタートさせます。

第1回目の今回は、上田市の果樹農家、小林潤一さん(34)です。

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小林潤一さんが本格的に農業に取り組みはじめたのは今から12年前の22歳のときでした。県の農業大学校を卒業後、地元のJA信州うえだで一年間のアルバイト期間を経てのこと。現在、ご両親とともにブドウ、桃、リンゴを栽培し、品種も多彩。ブドウは巨峰、ピオーネ、ナガノパープル、シャインマスカット、翠峰など。桃は長沢白鳳、白鳳、黄金桃、伊達白桃、ピンキッシュタマキジェーなど。リンゴはつがるに秋映にシナノゴールドとそれぞれ実に多くの品種に取り組んでいます。また、3人の子どものパパでもある小林さん。学校が休みの日には子供たちも、"邪魔をしながら?"お手伝いをしてくれるそうです。さっそく果樹農家として13回目の春を迎えた小林さんにお話を聞いてみましょう。

これしかないとおもってきた

そもそも農業をはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

小林:家が農家でしたから、もともと小さいころから手伝いはしていました。でも、本格的に始めるきっかけは実はスキーなんです。スキーが大好きで冬場はスキーがしたい。農業は冬場は暇になるだろうからスキーができる。「よし、農業をやろう」(笑)と。それだけではないですが要因のひとつであることは確かです。

スキーが動機というとやや不純なスタートのようにも聞こえますが、それでも10年以上農業が続いていますね。

小林:スキーはもちろんきっかけのひとつですが、この12年、農業を「これしかない」と思って続けてきたのも事実です。食べていけなくなったら、ほかの仕事をするしかありませんが、今は食べていられますからね。

どんなときに「農業って楽しい」と感じますか?

小林:やればやっただけの成果が出るということでしょうか。手間を惜しまなければ良いものができる。逆にその年の気候などによって、同じことをしても毎年、毎年現れる結果が違ってくるという点もやりがいになっています。

特に「この作業は楽しい!」というものはありますか?

小林:ブドウの房作りです。JAに出荷するには定められた規格があり、房作りは、その規格に合わせてブドウの重さや粒の数を揃え、形を整えていく作業です。これがうまく出来たときは嬉しいですね。「作っている」という感じがある作業だから楽しいのでしょうね。


苦労やつらいことはありません

逆に苦労やつらいことはありますか?

小林:苦労...う〜ん(と腕組みしたまま、しばし考え込む)。思いつきませんね(笑)。あまり苦労だと感じたことはありません。

苦労を感じないとは羨ましいですね。ところで、小林さんはご両親とともに農業をされていますが、ご両親はどのような存在でしょうか?

小林:仕事のうえでは先生ですね。教わることはとても多い。でも、いずれはその上をいかなければいけないと思っています。


あらたにはじめる人たちと話してみたい

最近、農業に注目が集まり、Iターン、Uターンほか若い人が農業をはじめるケースが増えていますが、この傾向についてはどのように感じていますか?

小林:とても良いことだと思います。ただ、この辺りでもIターンで農業をはじめた人が辞めてしまったという話も聞きます。本格的な農業をゼロからスタートさせるのは大変なことですから、どれだけの人が本当に続けられるのか、とは思います。それでも、そうして新たに農業に取り組む人たちとは機会があれば色々な話をしてみたいですね。

最後に、今後の目標。どんな農業を実現したいか教えてください。

小林:農産物の生産においてもロスというものが必ず発生します。規格に合わなかったり、商品として成り立たないものです。規格外のもののうち、商品価値のあるものは直売所に出すなどしてロスを減らしていますが、もっと根本的にそもそものロスを減らしていきたいというのが現時点の目標ですね。あとは楽しくやれればいいかと(笑)。

物静かな受け答えの中にも農業への情熱を感じさせてくれた小林さん。秋にはおいしい果物をみなさんの街に届けてくれることでしょう。

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