片桐さんの農事録
[片桐さんの農事録]

みなみ信州発☆羊と暮らすゆきさんの農事録 第30回

ゆきさん農事録

 

こんにちは!^^
梅雨入り宣言の割には雨遠く、もうセミの鳴き声が聞こえた事に驚き、夏前倒しかと思えば朝晩はどことなくひんやりで。緑の中を吹き抜けてくる風はとても心地よいので、家庭菜園や庭の手入れをするには過ごしやすい天気の続く最近の飯田ですが、皆様いかがお過ごしですか?

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前途多難!?な家庭菜園

5月から張り切って始めた家庭菜園は、予想外の朝の寒さと雨の少なさでオクラの苗を買いなおす結果に・・・。いつも特に手入れしなくても勝手に育ってくれていたオクラを枯らしたのは初めてで、前途多難な予感もしていますが、今年はカボチャやヤーコン、里芋に初挑戦!(笑) 里芋は食べ損ねて芽が出てきてしまったものを植えたら驚きの発芽率で、毎日せっせせっせと水を運んでいます>v<;

ゆきさん農事録

 

 

小さなことに気をつけて

牛の体調管理が難しい夏を迎える前に、やる気の出る嬉しい結果が届いたので、今月はそれを記事にしますね^^* 久々に文字が多めですがお付き合い下さい♪

2016年6月、牛乳の出荷の記事の中で「追跡調査を可能とするため集乳のたびにサンプリングが行われ、その中から月に3回不定期で乳質検査を受ける」と書きましたが、皆さん覚えてくれていますか?(笑) あの時、詳細はまた次の機会にと書いた「次」が、まるっと1年経って漸くやってきました!

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写真は、ちょうどその去年の6月から、今年の6月にかけての1年分のデータです。評価は、ほぼほぼ◎。そして、病気など気になる所があれば直ぐに来てくれる獣医さんや、疑問に答えてくれる組合の職員さん、家人と同じように飼料給餌や乳房炎に気をつけてくれるヘルパーさん達の協力もあって、10年連続でこの成績を維持することができ、今年5月の総会で表彰をしていただきました♪
・・・・・・。
言葉にするとなんだかあっさりしていてピンッと来ませんね(笑) 要するに、「皆さん褒めて!」と言うヤツです^///^* ・・・と言うのは半分冗談ですが、我が家の乳質がいいのは本当です^^b

乳質検査でマイナスの経済「罰金」に直結するのは、「乳脂肪率」「総細菌数」「体細胞数」の3つです。 きれいなお乳を出荷している奨励金は微々たるものなのに(これに関しては、きれいな牛乳を出荷することが大前提なので仕方がないのかもしれませんが!笑)、規定範囲を超えたことへの罰金は、乳価に対して高い割合で取られてしまうので、経営に直撃なのです><;

■乳脂肪率は、皆さんもよく目にされていると思いますが、「3.5牛乳」とかのアレです。
牛もーの個体差もありますが、基本的に水分摂取量が多く、粗飼料(乾草など)の食い込みが悪い夏場は、薄いお乳になりやすいので、データを見ると我が家も昨年「0815」の検査では、規定ラインギリギリの数値になっています><; この検査結果を見て乾草の給餌量を増やし、なんとか凌いだ記憶があります。

■総細菌数は、牛乳中の生菌数を検査しています。度々ブログに登場する乳房炎由来のものや、牛もーの糞尿由来のもの、また搾乳機器の洗浄不足などが原因で牛乳中の生菌数が増加します。2015年2月の記事に搾乳手順を書きましたが、搾乳前に粗拭き・清拭きをして糞尿の汚れを落とし、先搾りで乳房炎の有無を確認、最後に塩素消毒をすることで、搾乳時の混入は大抵防ぐことが出来ます。また、牛乳を冷やすバルククーラーや搾乳のパイプラインの洗浄は、正しい手順を守り、定期的に二度洗いを行うことで、我が家では清潔な状態を維持しています^^

■体細胞とは、主に白血球と乳房内の上皮細胞があげられます。
乳房炎になると、血液中の白血球が乳房内に集まり細菌と闘うため、牛乳の中にそれらの白血球や脱落した上皮細胞が多く含まれてしまうのです。他にも産次数を重ねた高齢牛や飼料給餌の変化、環境的要因などの理由からも体細胞が多くなると言われています。

書いてきて思うのは、顕微鏡のある研究室ではなく半分「外」みたいな環境で、見えない小さなものに気をつけて仕事をして居るんだなぁ、と(笑)
我が家では、牛もー一頭一頭の乳質や乳量、繁殖記録など様々なデータを月1で記録する牛群検定を行っていないので、このデータと個別にFAXで送られてくる乳質からみる飼料給餌のバランス評価で、日々の状態をおおまかに把握しています。
例えば「0714」「0313」「0424」の検査ではいつも5や6な体細胞数が9と10で高めです。乳房炎になりかかっている牛もーが居るんじゃないのか? という疑いのもと、先搾りを強化すると・・・発見出来る! と言う感じです。もちろん、乳房炎はそれ以外にもなり始めで発見できるポイントが幾つかあるのですが、常にきれいな状態で「いつもと同じ」を繰り返しているから「いつもと違う」ことが分かりやすいんですね。

 

「きれいで安心な牛乳」のために

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今回の事でひとつ思い出したことがあります。仕事を始めて直ぐの頃、やはり10年連続の表彰を受けたのですが、私自身はまだ右も左も分からないような状態だったので、ある勉強会に参加していました。
家業のPRポイントは? と聞かれ、両親がずっと心がけ守ってきた「きれいで安心な牛乳」というのをあげたのですが、講師の方に「ありきたりで当たり前」と言われました。私も気が強く若かったので、はぁ? と思ってもう二度とその先生の勉強会には参加しなかったのですが(笑)、自分が自覚を持って仕事をし始めて、この10年連続を経験してみてやっぱり、「きれいで安心な牛乳」と言うのは、酪農家が牛乳を出荷する上で当然のことかもしれませんが、決して「ありきたりで当たり前」なことではないのだと、言いたくなってしまいました。

農事録を担当させていただいて今月でちょうど2年半。
読者の皆さんも一緒になって追ってくださったこの2年半は、春夏秋冬と言葉にすれば毎年同じ4文字ですが、一日だって同じ毎年同じ365日はありません。色々とトラブルもありましたし、天気も、気温も、飼料も、同じ牛もーも毎日歳を刻み、妊娠出産の状態も50頭分が一日一日全部全部違って同じ条件ではないんです。
2015年6月の記事で、「酪農家に求められるのは、年間を通して一定の成分・品質を保つ牛乳を出荷すること」と書きました。365日違う毎日で同じものを出荷する、出荷できるという事は、当たり前な事ではなく、それは我が家が、私が、他の酪農家の皆さんが、そうあれるように日々努力しているからなんですよね。

これは酪農だけじゃなく、野菜や果樹農家さんにも、そして、他の産業でも言えることではないでしょうか。
「安心で安全」
確かに聞き慣れて見慣れたフレーズではありますが、その背景には、私たちが「慣れる」まで長い間、安心で安全な食の生産に、真摯に向き合ってきた人達が積み重ねた信頼があるんだ、と感じました。

ここ数ヶ月で酪農ヘルパーさんが減り休みを取りにくくなった事もあり、両親も廃業を視野に入れたような話をすることがあります。確かに、私が一人で続けていける仕事ではないので、近い将来そう言う日も来るのだろうとは思うのですが、でもその日までは私も、「きれいで安心な牛乳」を搾るため、丁寧に牛もーと向き合っていきたいなと思います。それと同時に、読者の皆さんには、それらのフレーズを見た時にこの農事録を思い出し、商品の向こうの農家さんを想像して貰えたらとても嬉しいです^^*

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梅雨もやんちゃに^^

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さて。最近おめめぱっちりで顔まで変わって美人になってきたと言われるハピちゃん。先日避妊手術をしてもらい、漸くエリザベスカラーが取れましたφwφ 毎日やんちゃに木登りをしています(笑)

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ブログが公開される頃には梅雨らしいお天気になっているでしょうか?
梅雨はあまり得意ではないのですが、今月後半~来月はあっちこっち動く予定なので、牛もーだけじゃなく、自分の体調管理もしっかりしたい所です^^ 天気も気温も不安定な季節、皆さんもご自愛下さいね。

では、また♪

ゆきさん農事録

 

 

この記事を書いた人

片桐由貴さん

伊那谷をまっすぐ南に向かって流れる天竜川流域の牛舎で、仕事と趣味、どちらも楽しむという片桐由貴さん。大学卒業後「やっぱり牛が好き!」と、家族の営む酪農に就農して12年。80頭ほどの牛たちと、ペットの羊2匹、猫5匹と過ごす日々を綴ります。

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