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りんごと音楽を愛する男前「親父以上のりんごをつくりたい」

男前百科

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ひたむきに頑張る人は、理屈抜きに男前!
信州の農業を担う次世代のリーダーとして歩み始めた若者たちのライフスタイルとは!?
志を持って農業に情熱を注ぐ、『若手男前農家』のオンとオフのありのままの姿をシリーズでご紹介します。

男前百科 vol.1
飯綱町 小林敬育さん

「おいしいりんごをつくり、届ける」ことで、お客さんがうちのりんごを「買ってよかった」「また来年も買いたい」と思ってもらえる。
そして「次もこの人から買いたい」と思ってもらえる。
それが「良いりんごを届ける幸せ」かなぁ・・・。
今までの良いところは学びつつ、外も見て新しいことにチャレンジしていきたい。
お客さんの期待以上に応えるために・・・。

 

「男前」一人目は、長野県北部、飯綱山の東麓の裾野に広がる飯綱町の小林敬育(こばやし・けいすけ)さん(22歳)。なんと11代も続く専業農家の長男です。今回は、燦々と降りそそぐ真夏の太陽のもと、秋映とふじの摘果作業に追われる畑にお邪魔しました。突きぬける青い空にぽっかり浮かぶ白い雲、小高い丘一面に広がるりんご畑。収穫はまだ先と分かっていても、なんだか心が弾みます♪

 

「自分があとを継ぎ、この土地を守る」

ふじ(左)と秋映え(右)の畑

「今の時期は、毎朝、毎日、摘果ですよ」と、慣れた手つきでどんどん秋映*1の果実を落としていく敬育さん。祖父や父親の孝英さんの作業をずっと間近で見てきたので、どの枝のどこの実をどれだけ落とすかは、自然と身に付いていたとのこと。幼い頃からりんご畑が大好きで、「畑は遊園地にも野球場にもなった。あぜ道を走り回ったり、ゴルフボール大になった実(摘果後のもの)で、弟と野球をしたことも」。
そんな敬育さんだからこそ、「自分があとを継ぎ、この土地を守る」ことは、ごくごく自然だったと言います。実は、ほんの少し別の道を考えたこともあったそうですが、それは後ほど......。

 

「僕も負けられないな。親父以上のりんごをつくりたい」

地元高校から長野県農業大学校へ進み、果樹実科研究科で栽培技術などを専門に学び、卒業。それ以来、孝英さんと共に毎日畑で汗を流しています。

父親の孝英さん(右)と

「本格的に取り組めば取り組むほど、自然相手の農業の面白さと、祖父や父のすごさを知る毎日だった」

 昨年の秋映(JAながの提供)

敬育さんが就農して1年目のある日、小林家に嬉しい知らせが飛び込んできました。「北信地域りんご秋映コンクール」において、孝英さんが「長野地域園芸振興推進協議会長賞」を受賞。この秋映は、敬育さんが後継を決意した農大入学時に「新わい化*2」を導入して栽培してきたものでした。
敬育さんも、「僕も負けられないな。これ以上のりんごをつくりたい」と熱が入ります。今はいろいろな経験がしたいと、地元管内のJAながの農協青年部にも、最年少ながら積極的に参加。先輩方に可愛がられ、新技術などを教えてもらうことも多いと言います。昨年は、静岡の直売所へ売り出しに行き、現地の青年部と交流したり、愛知県の消費者の皆さんと直接話す機会もあり、「お客様が欲しい・食べたいりんごとは......」と常に考えるようになったそうです。他にも、「ヨーロッパのアルプス地帯に広がるチロル(オーストリア)は、わい化栽培が盛んと聞いているので、日本との違いを見に行きたいです」と、夢は広がります。

その後、隣の畑に移動して、ふじの摘果。8月末頃までこの摘果作業は続きます。こちらの畑は代々大切に育ててきた、太くて大きな樹が並びます。
「たっぷり光合成した分厚い葉から養分を得るため、あえて葉摘みは行わないんですよ」と、見た目より味重視の「葉とらず完熟りんご」へのこだわりを熱く語る敬育さん。
来月8月からつがる、9月上旬から秋映、11月にはふじの収穫が始まります。「大勢の方々に食べてもらいたいです」と笑顔で話してくれました。

 

もうひとつの愛すべきもの

ところで、「ほんの少し別の道を考えたことがある」というのは、実は、中学から始めた吹奏楽の道のことで、楽器は「ユーフォニアム」。
「???」
「チューバの小さい版のような金管楽器ですよ」
「???」
という訳で、今回、特別に秋映の畑で演奏していただきました。

やわらかく多彩な音色が飯綱の自然と響きあう

現在、長野市民吹奏楽団に入団し(男性で最年少)、定期演奏会やコンサートに参加しているそうです。週1の練習も欠かさない真面目な一面も。取材中、ここ飯綱町で『きらめきコンサート』が行われるとの情報を得て、急遽、追加取材に飯綱中学校へ行ってきました!

飯綱中学校で行われた「きらめきコンサート」

 

会場の大講堂は、子どもから年配の方まで300名を超す町民でほぼ満席。ミュージカルやオペラ音楽もあれば、身近な映画・ドラマの主題歌やポップス、童謡まで幅広い楽曲で、そのレパートリーの豊富さと生演奏の迫力に会場は大いに盛り上がりました。音楽に詳しくなくても、聴いているだけで一体感と爽快感を共有できるようなすてきなひとときでした。

先輩・友人などみんなから「いっつもかまわれるんです(笑)」というほのぼの癒し系イケメンの敬育さん。「いい意味でのゆるさ」の中に秘めた熱い思いが魅力のひとつであることは間違いありません。「これからどんな人と出会い、どんな成長をするか楽しみ」という父親の孝英さんのかたわらで、「親父にはまだまだかなわない」と話しながらも、敬育さんは後継者のプレッシャーをもさらりとかわし、未来の農業を見つめています。

*1 秋映:長野県生まれの期待の品種「りんご三兄弟(秋映・シナノスイート・シナノゴールド)」の長男で10月に収穫を迎える。暗紅色の皮が目印。シャキッとした食感、程よい酸味と甘みのバランスが絶妙。

*2 新わい化:低コストで早期成園化、高品質・高収量が見込める栽培方法。樹高が低いため、はしご要らず。安全で省力的(効率的)な作業によって持続可能な農業をめざす。

PROFILE

「enjoy」
仕事も趣味も挑戦の毎日ですが、過程も含め全力で楽しんでます!!

男前百科

氏  名 小林敬育(こばやし・けいすけ)さん
年  齢 22歳
血液型 A型
生産内容 りんご2ha、 米(こしひかり)1.3ha
こだわりアイテム
ハサミ(写真は摘果バサミ)。
手にしっくり馴染むことが大切。父のようにオーダーメイドのハサミを持ちたい。
尊敬する人 親父

孝英さんの剪定ばさみはオーダーメイド
好きな食べ物 アイス
趣味・特技 吹奏楽(楽器:ユーフォニアム)
8月にはながの門前まち音楽祭、11月16日には県民文化会館で定期演奏会もあります。ぜひ聴きに来てください♪
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